奇跡の人

最近の子供は１年生になる前にひらがなを読める子が多いみたい。

社会に溢れている「文字、数字」に興味を持って、

あれは何と読むのか知りたがり、

周りから「あれは〈あ〉と読むんだよ」とか、

伝えてもらうんだろう。

伝えるという現象は、知りたい、知りたがってる子供（ひと）がいなければ成立しない。

ヘレン・ケラーを描いた「奇跡の人」という映画を観たことがあるけど、

井戸から溢れ出る冷たい液体そのものにまつわる、

自分の経験・感触・質感・クオリアを「水」と表わすのだと、

知った時の歓喜を表現した有名な井戸のシーンがある。

勿論その時のヘレン・ケラーには、

〈井戸、から、溢れ出る、冷たい、液体、そのもの、自分、質感 〉

というその言葉のひとつひとつがあることも知らない。

生まれてからずっと、文字を見る、現象を見る、聞く、

という経験が全く無いひとには、

あの歓喜をあれほどの歓喜と捉えられない人も多いんじゃないかな。

あれは「物には名前がある」

・・なんていう言葉なんかでは表現できない驚きだったと思う。


世界は自分の認識なのだ　という発見だったのかと思う。

この自分というものに意識、認識が元々在ったことに驚き、

その認識、感触、意識が言葉というもので表わせるという歓喜。


言葉、意識で世界と繋がることが出来る、

という歓喜だったのではないかと思う。