1986年頃だっただろうか、当時京橋にあったつるや釣具店で、ショーケースに置かれていたこのマーキス#5を眺めていると、山城さんが背後で「今後マーキスはすべてガンメタになるそうですよ。」と囁いた。
当時、カーボングラファイト製ロッドブランクのほとんどは、透明のレジンで仕上げられていたため、黒い炭素繊維の色がそのままロッドの色になっていた。もちろんセージは茶色で、ウィンストンはグリーン、スコットに至っては未だに黒のままだが、これら三社がまだフライロッドメーカーとしてそれほどシェアを持っていなかった頃の話である。確かハーディ社のグラファイトロッドも、当時は黒いブランクが使われていたのだ。その黒いロッドには、ガンメタの方が似合うと判断したのだろうが、私はそうは思わなかった。アルミニウム特有の鈍い光沢を放つリム部分が、艶の無い部分との微妙なコントラストを作り、そこにライトウェイトとはまた違う魅力を感じていたからだ。
こうして手に入れたマーキス#5だが、結局私にとって最も出番が多く、そして最も思い出深いタックルになっていた。
ちなみにマーキスは、#4から#10までの6サイズと、サーモンシリーズの3サイズ、合計9サイズのラインナップを誇り、世界中で最も長く、そして最も多く愛用されたフライリールである。
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