※前回の山形の記事はこちら(16節・鹿児島戦)
※前回の京都の記事はこちら(17節・大宮戦)
折り返し直後の試合がいきなり首位攻防戦という、偶然の産物ながらも注目される一戦となったこのカード。
先日(7月3日)に行われた天皇杯2回戦ではともに敗退し(山形は栃木に1-2・京都は水戸に0-1)、不本意な形ながらこれからは昇格に向けての戦いに専念する事となるでしょう。
その天皇杯で去年はJ1のクラブを次々と破りベスト4まで勝ち上がった山形、今季のリーグ戦ではここまで首位をキープ。
3-4-2-1のシステムを維持しつつ、戦略はカウンター重視という非常に堅実な戦いぶりで、21戦で僅か3敗(11勝7分)と中々隙を見せません。
それは起用するメンバーからも伺え、前回言及したFWジェフェルソン・バイアーノだけでなく、DFホドルフォ、MFアルヴァロ・ロドリゲスと助っ人勢は中々出番を貰えず。
良く言えば堅実、悪く言えば夢を見ないメンバー選択といえるでしょう。
しかしいくら助っ人といえどJ2クラブ所属な以上レベルそのものに疑問符が付く場合も多々ありますが
例外としては20節・柏戦で、バイアーノ・ロドリゲスの2人が揃ってスタメン。
特にロドリゲスは1節以来となるスタメン出場だったものの、この試合は0-1で敗戦。
柏の個の力に対抗しようとしたための助っ人勢の起用と推測されますが、結果は出なかった。
そんな近況でこの試合を迎えた山形ですが、システムを若干弄り、FWにバイアーノ・阪野を並べた3-5-2(3-3-2-2か3-4-1-2?)というフォーメーションで挑みました。
相手はポゼッションに長けた京都、その対策のため前線の枚数を増やしてプレスに厚みを加えるという狙いだったでしょうか。
メンバー表を見た段階では、ホドルフォ・三鬼・山田・柳とこれまでウイングバックで起用されてきた選手が揃い踏みでどんなフォーメーションなのか描けませんでしたが、ホドルフォが3バックの左・柳が中央のMF(ボランチか井出との2CMFかは判らず)に落ち着いた模様。
最近は本田と組むドイスボランチの相方に難儀していた様相だっただけに、不思議と自然に受け入れられました。
試合が始まると山形の狙いは明白となり、京都DFのボール保持に対し、前線から圧力をかけてパスサッカーを封じにかかります。
京都は中々ゲームを作れず、ロングボール主体の攻撃にシフトしますがチャンスまで持っていく場面は微少。
前半9分の仙頭のミドルシュートぐらいのもので、山形の作戦はとりあえず成功という風に見えた立ち上がり。
しかし山形の攻撃も不発で推移。
序盤はロングボール→バイアーノの収めと、右WB三鬼を軸にした攻め。
中盤以降は左サイドからの攻撃も見せるなど多彩でしたが、クロスが山ほど上がっても決定機に結びつく場面は殆ど無く。
22分に柳の右への展開から、三鬼→阪野と渡ってのクロスに柳が頭で合わせたシュートがあったものの(枠外)、双方我慢の展開というある意味首位攻防戦らしい堅い試合に。
すると次第に京都へと流れは傾き、前半の終盤は決定機の連続。
38分、自陣での金久保のポストプレイで小屋松に渡ると、ドリブルで右サイドを突破。
クロスと見せかけて横パスを送ると、上がってきた金久保が絶妙なコントロールシュートを放ちますがGK・櫛引がファインセーブ。
44分にも金久保の収めから仙頭にボールが渡り、こぼれ球をエリア内から石櫃が地を這うシュート。直前のプレイで山形・本田が倒れた事もありファールだと思ったか、山形側はこのシュートに反応出来ず。
しかしポストを直撃し、跳ね返りを一美が詰めてシュートもあろう事かGK櫛引の正面に飛んでしまい決定機を逃した京都。
0-0のまま前半を終了します。
ハーフタイムで気を引き締め直したか、後半も立ち上がりは山形が攻める展開に。
後半2分、ホドルフォ→井出→山田と渡り左サイドへ、山田がグラウンダーでスルーパスを中に入れた所に阪野がスライディングシュートを放ちますがオフサイド。
6分、柳のヘディングでバイアーノが左サイドへ抜け出し、再び山田のクロスから阪野がヘディングシュートという流れが生まれますがシュートは枠外。
良い流れを作りつつもそれを得点に繋げられないといった立ち上がりの山形、すると京都の後半最初のチャンス。
後半8分、左サイドの小屋松がカットインからミドルシュート、これはGK櫛引がまたもナイスセーブで防ぎましたがコーナーキックに。
するとキッカー・石櫃のクロスを本多がヘディングシュート。櫛引は4度目のセーブを見せたものの、直後の一美のボレーシュートにはどうする事も出来ず、ついに均衡が破れました。
その後も京都の方に流れは傾き(13分には一美がシュートも枠外)、前からの守備も嵌らなくなり自由にボールを回される場面が目立った山形、後半20分溜まらず選手交代。
坂元をバイアーノと変え、システムも従来の3-4-2-1にシフトし反撃を試みます。
これで流れを再び戻し、京都エリア内までボールを運ぶ場面も目立つようになります。
しかしシュートまでは中々持ち込めずにいると、京都のカウンターが猛威を振るうように。
25分、山形は相手クリアからの二次攻撃を本田のミドルシュートに繋げますがこれがブロックされると、跳ね返りを一美が収めた後小屋松→一美と渡り中央からシュート。
このシュートもGK櫛引がセーブして難を逃れます。
後半32分にも山田のクロスが跳ね返された後、一美にまで繋げられてエリア内まで進入されます。
その後パスを受けた仙頭がシュートしますがGK櫛引がキャッチ。
攻め上がるものの決定機には結びつかず、逆に櫛引が居なければ何点決められたか判らないというチグハグな展開になってきた山形。
最後まで出場したホドルフォ、ドリブルで左サイドを駆け上がりエリア内まで進入した場面(後半30分)は迫力がありましたし、41分にはフリーキックのクロスからのこぼれ球をシュートする(DFがブロック)などそれなりに目立ちましたがやはり得点には結びつかず。
アディショナルタイムに突入し、逃げ切りを図る京都に対し熊本や柳がシュートを放つものの、京都GK・加藤に阻まれノーゴール。(特に熊本のは惜しかった)
最後は自陣コーナーフラッグ付近から抜け出せず、試合終了の笛を迎える事となりました。
山形から首位の座を奪う事に成功した京都。
リーグ序盤の持ち味であった「ショートパスをひたすら繋ぐポゼッションサッカー」は、この日はリードするまで殆ど見られず。
前半のサッカーは、山形の激しいプレスをかわすためのロングボールを多用していましたが、効果的な攻撃とはいえませんでした。
しかしこれはカウンター主体の山形にとって、ボールキープさせられている状態を生み出す事となり、結局山形側の攻撃は決まる事無く。
逆に先制した後は、いつものパス回しも見られるようになりました。
無理にクロスを上げる無く、徹底したボールキープで山形の守備を上下に動かす事で時間を使う。
そして山形が攻勢に出た後、相手のお株を奪うカウンター攻撃も見せプレッシャーを与えるという綺麗な試合運びでした。
欲を言えばこのカウンターで追加点が入っていれば完璧だったのでしょうが……
22節を終え、首位から5位までが勝ち点40~39の1点差という大混戦の状況なだけに、首位浮上という結果だけでは全く安堵は出来ないのも事実。
しかし前年の惨状からは想像もつかない域にまで浮上し、サポーターが毎試合掲げている弾幕の「2019年シーズンJ2優勝そしてJ1へ」という言葉が現実味を帯びてきたのは、後半戦を戦ううえで大きな力となるでしょう。