<熊本スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 従来の3-3-1-3からマイナーチェンジ。イメージ的には、前年最終節の途中から見られた3-3-2-2(3-1-4-2)が判り易い。前節(長崎戦、2-3)から小長谷⇔渡邉のポジションチェンジで、トップ下システムを絡めた3-1-4-1-1と見る。
- 負傷者と体調不良者の影響らしく、開幕から一貫してベンチメンバーは7名のみの登録。
- 大西の負傷が発表され、2/8に発生して全治約4週間との事。
- 開幕前の故障の発表は、松岡(1/8、全治約4週間)・袴田(1/12、全治約4週間)・黒木(1/24、全治約4週間)の3人。↓の通り、袴田と黒木は復帰済み。
<札幌スタメン>
- 深井の負傷が発表され、2/15に発生したとの事で全治は未発表。
J2に復帰して4年目となる熊本、率いる大木武監督も今季で6年目。
主力の大幅な引き抜きに遭っても、依然として一定の地位を保っているのは見事の一言ですが、さらに上を目指すには新機軸が欲しい状況にも見え。
そんな訳で手を付けたのがフォーメーションで、前シーズンの最終盤でも取り入れられた形を本格導入。
つまりは、従来のウイングバックがインサイドハーフと化し、アンカー上村とのトライアングルを作り。
そしてウイングが下がり目となってワイドを埋め、トップ下の小長谷が上がり目となる事で、他クラブでも使われている3-3-2-2(3-1-4-2)の布陣がイメージされやすいものとなりました。
しかし今節は小長谷が左ウイングに回り、中央の渡邉によりトップ下の色が強くなるという具合にまたもマイナーチェンジ。
ちなみに前節は、長崎の個の力に対抗するためか、アンカー上村は殆どセンターバックの位置でプレイ。
守備時は4-4-2に近い布陣となり、5バック化する時はWGの片割れが降りるという具合に可変も極まれり。
この独特の「大木スタイル」がどう炸裂するのか、傍らから観ていても高揚感しかない今季の熊本ですが、まずは今節の札幌戦。
札幌のキックオフで始まるも、すぐに攻守交替したのち大﨑玲のクリアミスも絡んでいきなり好機。
渡邉・半代のポストプレイを立て続けに受けた小長谷がエリア内へ突撃してシュート(パクミンギュがブロック)と、開始30秒足らずでフィニッシュに辿り着き。
未だ視界不良な相手を他所に、早速鋭い槍で突き刺しに掛かります。
早くも後手に回り、相手のペースを断ち切りたい状況となった札幌。
6分に熊本のパスミスを拾った近藤から、敵陣で半円でのパスワークに入ったものの、中央から馬場→近藤へのパスを岩下にカットされて熊本のカウンターに。
渡邉とのワンツーを交えて左サイドを突き進んだ岩下、グラウンダーのクロスがGKとDFの間に送られ、半代が跳び込むも僅かに合わずとここでも鋭くゴール前を脅かし。
冷や汗を掻いた札幌、落ち着くためにもボール保持に勤しむのは必然となり。
前節(大分戦、0-2)では、前監督のミハイロ・ペトロヴィッチ氏のスタイルを継承したような形でのビルドアップの体勢を取っていた札幌最終ライン。
つまりは左右のCBがともに開いた所に、ドイスボランチの片割れ(ないしは両者とも)が降りてくるという、「ミシャ式」と呼ばれる形をそのまま採る絵図が目立ちました。
しかし同じ4バックへの可変としては、前回取り上げた大宮vs甲府のような、右肩上がりないしは左肩上がりの方策を採るクラブが多くなり。
即ち既に時代遅れとなりつつあり、かつCBがともに上がるというリスクの方が大きくなる「ミシャ式」とは、監督交代とともに決別すべきものと感じられ。
それが出来なかった以上敗戦は必然だった……という事で、流石に今節変えられる事となった基本形。
そしてスタメンを6人入れ替えたのは、既存の選手では対応できない(あるいはその転換に不満が噴出したか)という判断の下と邪推します。
こうして、武器である右WBの近藤を活かすような右肩上がりのシステムが採用されたこの試合の札幌。
しかしそれに伴い、サイドバック化するのは右CBで起用された西野。
彼は単なるSBに留まらず、ワイドを張る近藤の内側を駆け上がり時には最前線にまで行ってしまうというのが、「攻撃サッカー」の継承が色濃く出たものとなっていたでしょうか。
おかげで近藤も得意の切り込みを続けるというよりは、右奥を伺いながらのパスワークで、全体としてポケットを突く立ち回りに徹していた感があり。
そんな、ボールは握るものの今一つ流れに乗れない相手を尻目に、独自の攻撃を続ける熊本。
12分には再び岩下が持ち上がる事で左サイドを前進、小長谷→渡邉と経由しポケットを突いた末に渡邉から入れられるグラウンダーのクロス。
ニアに走り込んだ半代が合わせるも枠を捉えられず。
対する札幌も保持を軸としながら、18分にようやく近藤が右奥をドリブルで突く攻撃。
そして熊本よろしく入れられたグラウンダーのクロスを、ニアで田中克がスルーしたその奥で、1トップに選ばれた中島が合わせシュート。
しかしゴール右へと外れ、暗雲を吹き飛ばすべくの先制点は生まれません。
それでも時には中島狙いのアーリークロスを交えながら、何とかリードを奪わんとする札幌。
しかし確固たるスタイルが完成しつつある熊本、相手の攻めに晒されてもその進軍にブレは無く。
24分にGKからの保持で、右サイドで豊田がプレッシングを受け、札幌の3人に囲まれる状況になるもかわしきって前進する豊田。
そして例によって左サイドに渡ると、小長谷がカットインでポケットに切り込んでシュート、馬場のブロックで防がれたのちも苛烈な二次攻撃。
三島の戻しを経て、上村が放った強烈なミドルシュートがゴールバーを直撃と、絵図的にも決壊は間近という好機に。
そして28分、今度は上村がロングパスで一気にエリア内を突くという手法で前掛かりな札幌の裏を突き、渡邉が右ポケットからまたもグラウンダーでクロス。
跳ね返りを拾った阿部が奥へ切り込んでここもグラウンダーでクロスと、徹底して貫いた末に待っていたのは、ダイアゴナルに走り込んだ小長谷のスルーを経て合わせた半代のプロ初ゴールでした。
新たな布陣と、そのために組み込まれた新人(半代・渡邉)の力が交わった末に、リードを奪う事に成功します。
またも追い掛ける展開となった札幌。
キックオフからの攻めで右奥へと送った(西野の)ロングボールにより、得た右コーナーキック。
ここからキッカー田中克の、強烈なカーブを掛けたゴールに向かうクロスが脅威と成り得。
このCKでは、誰も合わせられずにバウンドしたボールが混戦を招き、両軍入り乱れるなかGK佐藤優が何とか抑え。
以降前半終了までに得た4本のCKで、ひたすら上がる田中克のクロスに対し、GK佐藤優が何とかパンチングで掻き出すなどあわやの場面を頻発させます。
リードされて以降、近藤の切り込みを使う頻度も増えました(そのため防がれてCKへと繋がり)が、開幕前から警戒されている武器な以上相手ディフェンスを上回らなければ結果を出すのは難しく。
そして彼をサポートするべくの西野が勝手気ままに(そう見える)動く以上、後押しを得れない状況では彼一人に期待するのは酷であり。
一度、44分に近藤の反則気味のボール奪取(この試合も例によって中々鳴らない反則の笛……)から、西野ポケットへのスルーパス→走り込んだ近藤がクロスという連携を見せましたがクリアされて実らず。
そんな右サイドに比べて左が弱いため、最終ラインからの展開も右一辺倒、ないしはボランチ経由で中央から無理矢理崩しを図るものが多くなり。
また西野の事例から組織立った右肩上がりの感が無いためか、パクミンギュと田中宏が分断されたかのように映るのも流れが悪く。
2人の間にボランチを位置させなければ左から前進出来ない(ないしはロングパスを通す)、といった状況で、一週間での変節の影響がそこかしこに見られました。
結局1-0のまま前半終了となり。
このままではいけない、という事でハーフタイムに動く札幌ベンチ。
上記のような事を岩政大樹監督も感じていたのか、パクミンギュを退かせて中村を同ポジション(前節は左WBでスタメン)で投入します。
迎えた後半、キックオフの利点を生かして押し込む熊本。
後半2分に得たCK、その二次攻撃で(半代の)シュートにまで繋げる(枠外)と、守備のターンでも積極性を増し。
GK菅野から地上でのビルドアップを図る札幌ですが、3分に半代が札幌最終ラインに対してパスカットに成功。
こぼれ球がゴールラインを割ってしまい途切れるも、直後のゴールキックで菅野がロングフィードに切り替えるなど、札幌サイドの頭を悩ませ続けます。
そして4分、今度は熊本の最終ラインに対し札幌がプレッシング。
しかし豊田がロングパスを裏へ送ると、跳ね返りを拾った中村に対し半代が奪い、こぼれ球を拾った渡邉がドリブルで右ポケットを突き一気に好機を迎え。
下がりながらの対峙を強いられた大﨑玲に対し、カットインを意識させながらの右足のシュートでその逆を破りゴールを奪います。
半代に続き渡邉のプロ初ゴールと、目出度さ最高潮といった追加点に。
ここから札幌は、ビハインド時の例に漏れない「敵陣で保持を続けるも、フィニッシュに繋がらない」時間が膨らむ事に。
苦境なのは明らかですが、逆に主審の判定に対し、度々倒されても笛が鳴らないという「被害」が多くなったのは熊本の方。
ベンチの異議・スタンドのブーイングが重なる事で、盤石とはいかなくなる熊本のホーム・えがお健康スタジアム。
不本意ながらも、利用できるものは利用したい状況な札幌。
13分に田中克→中島へのスルーパスがカットされるも、すかさずゲーゲンプレスで近藤が奪い返して好機継続。
右奥からのカットインは阻まれるも、敵陣で長らくパスワークを続け、エリア内への(馬場の)ミドルパスの跳ね返りを拾った中村がシュート。(阿部がブロック)
15分には右ワイドで近藤が持つと、入れられたクロスがアウトスイングでゴール左を襲うボールに。
GK佐藤優を越えるも惜しくも左へ外れ、「フィニッシュに繋がらない」状況を必死で塗り替えに掛かります。
投入された中村も、逆サイドの西野のように激しく前に出て好機に絡むものの、結局「ミシャ式」のような両CBが前掛かりになるリスクと付き合う格好となるのが何とももどかしく。
(15分に田中宏・田中克→青木・スパチョークへと2枚替え、長谷川が左WBに回る)
判定面の不満もあり、流れを変えたい熊本。
ようやく取られた敵陣での反則(17分)で、素早いリスタートを選択する事でそれを果たさんとします。(左から小長谷がクロスもブロック)
落ち着きを取り戻すと、19分には敵陣右サイドでのポゼッションの最中、阿部が戻りながらボールキープ。
これで札幌ディフェンスを喰い付かせたのち、素早く豊田→小長谷と繋いでその裏を取ると、三島→藤井とさらに細かく繋いだ末に藤井が右ポケットからシュート。(大﨑がブロック)
リードならびに相手のベクトルの向きも利用した立ち回りを見せる、一体どちらが前年までJ1クラブだったのかと言いたくなる試合展開に。
窮地の札幌、24分に中島→サンチェスへと交代。
相手が4人交代したのを見届けると(当然ながら準備していただろうが)、熊本サイドも25分に動き渡邉・小長谷→竹本・塩浜へと2枚替え。
当初は竹本が左ワイドでしたが、のちに塩浜と入れ替わってトップ下へ。
札幌は、ポジションチェンジした長谷川を軸に左サイドからパスワークで攻める色を強め。
29分に巧く左ポケットを取り、スルーパスを受けて切り返しからシュートを放った長谷川。
しかし袴田のブロックに阻まれ、閉塞感の解消には至りません。
31分に早くも最後の交代を敢行。
西野→出間へと代え、馬場が右CBへ・青木がボランチへと五月雨的に移動が絡みます。
手は尽くした札幌ですが、以降それを嘲笑うかのように熊本がサイド奥を突くシーンが膨らみ。
そして前半と同じく際どいクロスで脅かされる事で、精神面でも擦り減らされてしまったでしょうか。
37分には最終ラインからの繋ぎのミスで竹本がボールカット、拾った半代が抜け出さんとするも中村に倒され、反則の笛は鳴らず。
しかし続く38分にも三島のパスカットから攻め立てる熊本、左ワイドからパスワークで、逆の右ポケットを突いた末に藤井がシュート。(中村がブロック)
最終ラインからの保持がままならない状況に陥り、試合も終盤へ。
(熊本は41分に藤井→ベジョンミンに交代)
それを打開すべく、42分にはパスカットしたスパチョークがそのまま自ら左ポケットまで切り込み。
そして入れられたグラウンダーのクロスを中央で出間がポストプレイ、放たれた近藤のシュート。
満を持してというフィニッシュでしたが、これも袴田のブロックで防がれ。
アディショナルタイムに突入後、今度は出間のスルーパスで近藤が右ポケットを取ってのグラウンダーのクロス。
ブロックを掠めるも中央のサンチェスに渡り、キープからの横パスを経てシュートを放ったのはまたも近藤。
先程よりも増しての決定的なフィニッシュでしたが、ゴールバーを直撃(跳ね返りを中村がヘディングシュートもGK佐藤優がキャッチ)と無情にも実りません。
すると頽れるかのように、直後の熊本の好機。
ロングボールを右サイドで収めたベジョンミンから、浮き球パスで中村の裏を取って生まれた好機。
ドリブルで右ポケットへ進入した半代の横パスに、走り込んだ塩浜が放ったシュートが、左ポスト内側を叩いてゴールネットを揺らします。
札幌にとって無慈悲なダメ押し点という他無いですが、ホームチームならびにそのスタンドの熱狂を最高潮とさせるものでもあり。
そして3-0のまま、試合終了を告げる笛が鳴り響き。
今季初勝利を挙げたのは熊本の方で、それも戦術が定まらない相手を翻弄し続けたという絵図でのもの。
今後に向けて大きな物語性を得た形となりましたが、悲願の昇格にまで辿り着けるかどうか。
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