<両軍スタメン>
春の雰囲気が高まると、桜カラーであるセレッソのサッカーが観たくなる……という事はあるのかどうか。
そのセレッソは何時の間にか、3トップへと基本フォーメーションをシフト。(ルヴァン杯1節からとの事)
奇しくも、同じ大阪のクラブであるガンバと同一のものとなりました。
しかし機能不全のようになっているガンバに対し、こちらはチェンジ後は1勝1分(リーグ戦)と悪くない成績を残しています。
真の大阪のクラブはどちらかという難題も、近年は成績的な優劣はすっかりついてしまったかのような格好に。
この日ホームに迎えたのはマリノスで、レオ・セアラの加入で軽い因縁がついたような相手。
しかしマリノス側にとってみれば、セレッソのホームゲームでは長らく勝利が無いという状況で、決して軽くないものだったでしょう。
その布陣の通り、以前に比べて前線を厚くしたセレッソ。
マリノスのビルドアップに対して果敢にハイプレスを掛ける入りで、早々の前半1分に毎熊が敵陣でパスカットに成功してショートカウンター。(シュートまでは行けず)
この日のマリノスは、右サイドバックに特別指定選手の吉田を起用。
センターバックもエドゥアルドが今季初出場と、最終ラインにいささか不安があり。
永戸が出場停止となった4節(札幌戦・0-2)然り、中心軸1人が欠ければ脆さが露呈する程、後方の安定感がチームに与える安心感に欠けるといった状況でしょうか。
一方セレッソも、正GKキムジンヒョンが故障をおしての出場。
その所為かフィードが乱れがちで、こちらもチームに齎す安心感に多少不安があるような状況に。
そんな不安を抱えながらも、マリノスは9分にミドルパスを交える前進を経て水沼がGKと一対一を迎える(オフサイド)等、攻撃力を発揮しつつあり。
セレッソの攻撃は前述のショートカウンターのように、プレスが嵌った際やマリノスのパスミスが契機であり、主体的な組み立てがもう一つの立ち上がり。
しかし14分、GKキムジンヒョンからの組み立てで、不安視されたフィードが為田に渡ったのを切欠にアタッキングサードへ進入。
そしてセアラが右サイド奥でエドゥアルドに倒され、反則・フリーキックを得ます。
キッカー鈴木のクロスをセアラが合わせヘディングシュート、ループの軌道でゴールを襲うもGK一森がセーブ、しかしさらに左コーナーキックへ。
そしてそのCK、またもキッカー山中のクロスをセアラが合わせ、落ちたボールがエドゥアルドの足に当たってコースが変わりゴール内へ。
シュートとは言い辛いボールの軌道でしたが、ともあれ得点が認められたセアラ。
先制点を挙げたセレッソ、直接的にはセットプレーながら、ビルドアップを一つ通した事が見事に繋がりました。
反撃したいマリノス、18分にエリア手前という位置で西村が鈴木に倒されて反則。
FKとなるも、西村は素早いリスタートを選択、その結果永戸へのスルーパスがカットされてセレッソのカウンターを招いてしまいます。
これがセアラに右ポケット奥まで運ばれてCKまで繋げられるなど、思わぬ被弾からか焦りが垣間見えたマリノス。
落ち着きを取り戻し、自慢のパスワークを駆使して押し込み始めるマリノス。
不安視された初出場の吉田も、「偽SB」システムの色を出し、水沼とのコンビネーションで右サイドで攻め上がりを見せ。
25分には敵陣でサイドチェンジ攻勢の末に、水沼の低いクロスをニアサイドで合わせにいった吉田。(惜しくも撃てず)
自在にボールを回され続けたのを受け、セレッソサイドも次第にプレッシングの勢いは無くなり。
そうなるとCBの組み立てがキーとなるマリノス、畠中が後方から勝負のパスを打ち込み始めます。
33分には喜田拓とのパス交換からいきなり裏へロングパスを送る畠中、エリア内で永戸が受けた事でGKと一対一が出来上がり。
しかし間合いを詰めたGKキムジンヒョンが至近距離でシュートを防ぎ、後一歩のところで決められず。
持ち味を発揮して攻め込み続けるも、得点出来ないとあれば流れを失った時が怖い。
それを象徴するかのように、セレッソが攻撃権を得ると結果が出されるのも早かった。
36分、クリアボールをセアラが拾うと中央をドリブルの後にエリア内右へスルーパス、奥埜がダイレクトでクロス。
そして走るのを止めなかったセアラがまたもヘッドで合わせ、この日2得点目となるゴール。
セアラの強烈な「恩返し」が炸裂し、リードを広げたセレッソ。
その後セレッソが、立役者であるセアラが足を痛めてしまい(41分)ヒヤリとするシーンを描くなか、何とか反撃体制を作るマリノス。
乾坤一擲の好機は44分で、再び吉田・水沼で右サイドを推進したのち、水沼のラストパスをエリア内中央で受けたロペス。
反転しながら放ったシュートがゴールネットを揺らしたものの、水沼のパスがオフサイドを取られ、またも惜しい逃し方となってしまいます。
結局その後はセレッソがボールポゼッションで時間を潰し、3分あったアディショナルタイムもあっけなく消費。
2-0のまま前半を終える事となりました。
共に交代無く後半開始を迎え。
セレッソのキックオフ、いきなりヨニッチのロングパスから、セカンドボールを拾って好機を作りCKに持ち込み。
後半5分にはこぼれ球をラフに前線に送り、拾われるも奥埜がボール奪取して攻撃開始。
そして山中の左サイド奥からのクロスをセアラがヘディングシュート(枠外)と、アバウトな運びから結果を出していくセレッソ。
対するマリノスは前半同様緻密にボールを繋がんとするも、肝心なところでミスが目立ってしまい、最初の好機は7分までずれ込む事に。
「巧さより強さ」に針が振れていたようなこの試合の絵図。
この日のスタジアム(ヨドコウ桜スタジアム)のイベントは、カプコンサポーティングマッチと釘打たれたもので、某有名格闘ゲームとコラボした限定ユニフォームを着用しての入場となったセレッソ選手。
それ故に、プロゲームの世界のように「強いのが正義」という精神が注入されていたのでしょうか。
そんな劣勢(?)を跳ね返したいマリノスは、10分にエウベルが左サイドを持ち運び、エリア内へスルーパス。
これは誰にも合わずも、自身が香川にアフターチャージを受けた事で反則となり、中央からのFK。
正確さよりもとにかく前に運ぶ姿勢を求めた事で好機を得ると、やや距離があったこのFKを水沼が直接シュート。
壁の下を巧く通したものの、その後ろで山中にブロックされて防がれ、こぼれ球をロペスがボレーシュートに持っていくも枠外に。
14分にも直接FKを得たマリノス、先程からは近い距離で今度も水沼が直接狙ったもののこれはゴール上へと外れ。
この日のセレッソのような力強さを見せたいマリノス。(16分に西村と水沼に代え、マルコス・ジュニオールと井上を投入)
20分に永戸の左サイド裏へのミドルパスに走り込むエウベル、奥で受けたのちにマイナスのカットインで一気に中央へ。
迫力ある運びを展開し、そのエウベルの落としを経て喜田拓が後方からシュート。
GKキムジンヒョンにセーブされ、こぼれをロペスが詰めにいくも松田のカバーリングで撃てずと、どうしても後一歩が届きません。
逆にセレッソは直後の21分、こぼれ球を香川がダイレクトでスルーパスして一気にセアラへ通し、そのままエリア内へ持ち運び。
しかし何とか戻ったエドゥアルドがスライディングでシュートを防ぎ。
攻め込むも得点出来ず、相手の少ないタッチによる攻撃で危機を招くという厳しい展開を強いられるマリノス。
25分に再度ベンチが動き、渡辺とエウベルに代えて藤田譲瑠チマとヤン・マテウスを投入。
一方のセレッソは29分に最初のカードを切り、セアラ→加藤。
主役級の活躍を見せたセアラが退いても、試合絵図は変わらず。
31分に左→右へ対角線の長いスルーパスを通した事でCKを得る等、そのセレッソの少ない手数による攻撃の中枢を担う香川。
この右CKをその香川がキッカーを務め、放たれたファーへのクロスはGK一森が跳び出すも触れないボールとなり、流れた所を毎熊がボレーシュート。
GK不在のゴールへ決まったと思われましたが、右ゴールポストに当たって跳ね返り。
止めを刺される事は免れたマリノス、33分に早くも最後のカードを切る事となり。(吉田→山根)
一方のセレッソも34分に鈴木・為田→喜田陽・カピシャーバへと2枚替え。
絵図が変わる事となったのが37分。
ここでもセレッソは敵陣深めで奥埜がボールカットに成功と、好循環を保っていたものの、その奥埜がこの直後に足を攣らせてしまい。
ベンチは交代の準備を行うも、これで一貫していた「強さ」が薄れてしまったでしょうか。
直後の38分マリノスは敵陣へ押し込んでの最終ラインからの攻撃で、左サイドからのパスワークでの前進にチェックが遅れがちとなるセレッソ。
ワンツー・フリックを交えながら奥まで運び、マテウスの左ポケット奥からのマイナスのクロス。
ロペスの前で喜田陽がスライディングでクリアに入るも、これも遅れた影響か蹴られたボールはゴールの中へ。
オウンゴールという形で1点差となります。
奥埜・松田→クルークス・進藤へと2枚替えしたセレッソ。(40分)
これで3-4-2-1へ布陣変更(ボランチは喜田陽・香川、ウイングバックは右が毎熊・左が山中)と、判り易い5バックシステムへとシフトします。
専守の姿勢のセレッソに対し、残り時間敵陣での押し込みに全てを賭けるといったマリノス。
しかしそこでもパスミスから危機を招いたのが44分で、カットしたカピシャーバがエリア内へスルーパスを送り、受けた加藤がGKと一対一に。
しかしシュートをGK一森がセーブした、という所でオフサイドを告げる笛が鳴り、何とか命拾いします。
気を取り直し攻めるマリノス、45分に今度はセレッソのパスミスを突いての絶好機という形で、永戸が左ポケットからグラウンダーでクロス。
これを中央でマルコスが走り込むも合わせきれず。
それでも繋いで左CKを得ると、キッカー永戸は低いクロスを選択し、エドゥアルドのフリックを経て中央で井上がシュート。
しかしこれも鳥海の頭部でのブロックに阻まれ同点ならず。
やはりこの日はセレッソから勝ち点を奪うには今一歩届かない、といった象徴的なシーンとなりました。
結局2-1のままセレッソの勝利に終わったこの試合。
攻撃力が自慢のマリノスも、今年はここまで3得点以上挙げた試合はまだ皆無とやや陰りが見えている状態。
王者に相応しい力強さを取り戻し、連覇に辿り着けるかどうか。