※前回の岡山の記事はこちら(3節・水戸戦、1-1)
※前回のいわきの記事はこちら(1節・藤枝戦、2-3)
<岡山スタメン>
- フォーメーションを4-3-1-2から3-4-2-1へと変更。
- 故障していた永井龍の経過が発表され、手術敢行して全治4~6か月との事。
- GK堀田・河井・高橋が今季初のメンバー入り、GK堀田は即スタメン。
<いわきスタメン>
- 有馬が前年の故障離脱から復帰してベンチ入り。
- 山口が5節・徳島戦(1-0)で負傷交代し、以降ベンチ外が続く。
- 江川が前節負傷したとの事でベンチ外に。
全体の7分の1(6試合)を消化した今季のJ2。
その中で新規参入のいわきはというと、前回観た際のその危なっかしいディフェンスは、やはり同じ昇格組(藤枝)との対戦での例外だったらしく。
徐々にそのフィジカルを活かしてのサッカーを発揮し、勝ち点を伸ばしに掛かっています。
主力選手が引き抜かれたとはいえ、熊本とは異なり軸となるセンターラインが無事なのは何よりも大きく。
宮本・山下が中盤の底を固め、ディフェンスの中心である家泉も健在ならば、持ち味を消す事無く「自分達のサッカー」をJ2でも貫く事は容易というものでしょうか。
さて、この日の相手は岡山。
そんないわきの特異なスタイルを考慮してか、基本フォーメーションを弄って戦いに挑んできた木山隆之監督。
入りのアバウトな蹴り合いを経ても、尚もいわき最終ラインの裏を突きに掛かり
インセンシティの勝負となる事を覚悟で、これまでの繋ぎのスタイルをかなぐり捨てたかのような攻撃を見せていきます。
ただしターゲットとなるべき櫻川が、屈強ないわきセンターバックの徹底マークに遭う事は明白なので、中心となったのはサイドから。
ハンイヴォンや佐野のスピードを活かすものでありましたが、前節から大幅にメンバーも弄ったとあってコンビネーションは今一つ。
敵陣で勝負のスルーパスが繋がらないシーンを量産するだけに終わった立ち上がり。
いわきはそんな岡山に対し、布陣を圧縮する事、つまりは「ワンサイドアタック」の気質を高めて対抗。
そして自身のペースに引き込むと、前半10分に左サイドから前進。
距離感が近いという効果もあり、山下の縦パスが遮断されても尚繋がっていき、カットインでチャンスエリアに進入した永井颯がエリア内へパス。
これを本来ストライカーの有田がポストプレイでやや前方へ叩くと、後方から進入してきた宮本がバイスの裏を取ってシュート。
見事に奏功してゴールネットを揺らし、早くも先制点に辿り着きます。
この得点で主導権を握るいわき。
主にディフェンスで、ハイプレスかリトリートかの選択を突き付ける事で岡山の勢いを削がんとします。
そして攻撃では、持ち味の縦に速い攻めでエリア内へとボールを送り込むスタイルでプレッシャーを掛け。
追い付くためには主体的な攻撃が必要な状況に追い込まれた岡山は、それにより意識の切り替えに難儀する事となります。
それでも22分、岡山はGK堀田の短いフィードから左サイドで前進の姿勢を見せたのち、佐野の逆サイドへの展開で右から敵陣へ。
そして再び左へとサイドを変え、そこに櫻川のポストワークも加えた事で佐野がクロスに辿り着き、これをファーサイドでハンイヴォンが足で合わせ。(GK高木和キャッチ)
いわきの圧縮守備に対し、サイドを揺さぶる姿勢でフィニッシュに繋げた事でようやく目覚めた格好となります。
27分にはハンイヴォンが敵陣でボール奪取、そのままドリブルに入った所を遠藤に倒されて反則(遠藤に警告)、直接フリーキックを獲得。
右ハーフレーンからの位置で、キッカー佐野はクロスを選択すると、櫻川がヘディングシュートを放ちましたがこれはゴール上へと外れ。
早めに追い付きたい岡山ですが、いわきのようなパワーサッカーのチームを相手にする事で、必然的に発生するフィジカルコンタクトが悩ましくもなり。
33分にボールの奪い合いを制したいわき、そのまま距離感の近さを活かして細かく繋いで前進。
永井颯のドリブルが阻まれ、倒れた永井颯が後方から戻ってきた櫻川に引っ掛かってしまった事で、その後プレーが止まった際に両者ヒートアップ。
いわきの屈強な選手達に対しても、櫻川の迫力ある体格はそれを凌駕する事が示されたシーンでしたが、プレー外で目立ってしまっては珍妙という感は拭えません。
前半も終盤、そんな気まずさを振り払い攻め込む岡山。
最終ラインから柳が縦パスを通した事で、その後輪笠の裏への浮き球を櫻川が収めてエリア内へ進入。
そのままマーカーの家泉を振り切ってシュートを放ちましたが、GK高木和の右を抜くもゴールポストを直撃してしまい惜しくもモノに出来ず。
それでも意気上がる岡山、その後流れの中からの攻めでバイスがターゲットとして前線に上がるなど、ここが好機と見て仕掛けにいきます。
コーナーキックも2本得るなど押し込みますが、結局得点に繋げる事は出来ず。
結局0-1のまま折り返し後半へ。
追い付きたい岡山ですが、終了間際の押し込みを考慮したか、好循環を保つために交代無しで挑みました。
入りは再び慌ただしくボールが動く時間となる中、後半3分には岡山・輪笠といわき・加瀬が頭部同士激突して倒れ込むというシーンも発生してしまい。
幸い両者とも無事でしたが、このバチバチにやり合う意識が白熱する事は避けられず、その後もう一度類似するシーンが生まれる事となりますがそれは後述。
次第に、岡山のビルドアップvsいわきのプレッシングという典型的な試合絵図に落ち着いていきます。
放送席では「強固な4-4-2ブロック」と紹介されるいわきですが、リードを保った状態でもハイプレスは幾度も敢行され。
8分にGK堀田にまでプレッシャーを掛けるいわき、それを右へかわして前進を図る岡山。
一旦遮断されるも拾って逆サイドへ展開、高木がドリブルする絵図へと繋げます。
そして高木から低いクロスが入るも、足から跳び込んだ櫻川には惜しくも合わず。
こうして最終ラインでの繋ぎから、いわきディフェンスを呼び込んだ末に逆サイドへ送り前進という流れを作る岡山。
しかし押し込まれるいわきも、一層ディフェンスの寄せを激しくして対抗。
その結果、岡山選手が倒されるも笛は鳴らずというシーンが膨れ上がり、ホーム(シティライトスタジアム)の雰囲気も悪くなり始めます。
15分にいわきは宮本が反則気味のボール奪取、そこからショートカウンターを仕掛けエリア内へミドルパスを通さんとしましたが、走り込む谷村には繋がらず。
16分に両サイドともベンチが動き。
いわきが永井颯・石田→有馬・辻岡へと2枚替え(嵯峨が逆の右サイドバックへ回る)した直後に、岡山も本山・輪笠→田中雄・河井へと2枚替え。(佐野が右ウイングバックへ回る)
ともに故障明けの選手投入・ポジションチェンジと、采配が交錯。
その結果か、直後の17分にいわきが決定機、それも投入された有馬のボール奪取から。
ミドルパスを受けた谷村がそのままドリブルで切り込み、ワイドからレーンチェンジののちにエリア内へ進入。
そしてGKの右を抜くシュートを放ちますが、ゴール右へと外れて追加点はなりませんでした。
その後も次第にいわきの優勢が描かれる試合絵図。
しかしその中で、23分に前述した最悪のシーンが招かれてしまいます。
こぼれ球をヘッド繋ぎにいった岡山・柳に対し、いわき・有馬が激しく寄せていった結果、両者頭部激突して倒れ込む事態となり。
ダメージが深いのは有馬でしたが、有馬の反則となった末に警告まで貰ってしまう事に。
柳は1分程で起き上がり、有馬は2分以上掛けて起き上がりピッチ外で治療の末に復帰。
幸いともにプレーを続けましたが、これで岡山の不利なジャッジに悩まされるという流れは消失したでしょうか。
有馬がピッチ外に居る中、さらに動いてくる岡山ベンチ。
26分にハンイヴォン・田部井→ルカオ・木村へと2枚替え、これによりWBに回っていた佐野がシャドーへ戻る事となり。
ルカオの存在感は言うに及ばず、前回観た試合でも良いサイドアタックをしていた木村の活躍は、この日も試合を動かす事となりました。
強まった圧力を受け、いわきサイドもプレッシングを掛ける余裕が無くなりリトリート主体へと移行。
それに伴い敵陣でサッカーを展開する岡山、投入された木村のロングスローもチラつかせながら(フェイントで後方に投げ入れるという場面が2度)揺さぶっていきます。
それでも好機の中心となったのはセットプレーで、それもクロスが跳ね返された後のミドルシュートが主体となり。
豊富なターゲットが直接的に生きないのがもどかしかったでしょうか。(33分に岡山は高木→高橋へと交代)
35分に左サイドからのクロスを、ブロックに入った宮本がハンドの反則を取られた事で左奥からのFKに。
これをキッカー河井はトリックプレーを選び、グラウンダーで遠目にクロスを入れた所をバイスがダイレクトでシュート。
しかし遠藤が素早くブロックに入って防ぎ、集中力の途切れを見せないいわきディフェンス。
反面攻勢に出るシーンは殆どなくなったいわき、38分に2枚替えを敢行(谷村・加瀬→近藤・杉山)してもそれは変わる事は無く。
岡山が交代で投入した木村や高橋にサイドを抉られ、そこからクロスを防ぐアクションでCKを与える等、押し込まれる流れは最早変えられず。
そして43分に最後の交代を敢行し、谷村→速水。
FWに代えてDFを投入と、明確な守備固めの合図を出しました。(恐らくは杉山・有田の2トップによる3-5-2・5-3-2システムか)
流れの中でバイスがエリア内へ入り込む、というシーンも頻繁に作るなど、後は執念でゴールにねじ込むだけという岡山。
しかしその一手があまりにも遠く。
それでも最後の手段となったのが木村の推進力で、44分に右サイドをドリブルで切り込むも、辻岡に倒されて好機に繋げられず。(反則無し)
またも判定に対する苛立ちを溜めかねないワンシーンでしたが、これが伏線となった感があり。
アディショナルタイムに突入し、またも右サイドで切り込む木村、今度は奥へと切り込むなかエリア内を窺う軌道でのドリブル。
これを辻岡が振り切られ、後追いの形で倒してしまい反則を告げる笛が鳴り。
際どい位置ながらも主審が指示したのはペナルティスポットと、PK獲得の運びとなります。
映像で見る限り最初に身体が掛かったのはエリア外でしたが、そこで踏ん張りを見せた末にエリア内で倒れた事で、「辻岡がうつぶせになったその腕に木村が引っ掛かった」ように見えたのが勝負の分かれ目だったでしょうか。
これにいわきサイドは猛抗議するも、宮本が異議により警告を受けるのみに終わって当然覆らず。
決められなければ地獄、というこのPKを、櫻川は見事にGKの逆を突いて左へ蹴り込んでゴール。
土壇場で追い付いた岡山、尚も逆転を狙わんといわき陣内に襲い掛かります。
得た左CKから、キッカー河井のクロスを中央で木村が合わせヘディングシュートに持っていきますが、枠を捉えられず。
木村が悔しがるという具合に、あくまで目指すのは勝ち点3、何も達成していないとばかりに振る舞う岡山。
その意識からか、いわきがカウンターを仕掛けようとした所を有馬のドリブルを倒してしまったルカオが警告を貰った事も責められないでしょう。
結局この自陣からのいわきのFK、GK高木和のロングフィードが流れた所で試合終了を告げる笛が鳴り。
1-1で引き分けに終わったこの試合。
いわきのパワーに対し、岡山もパワーで対抗したのが最後に実を結んだ、という内容となりました。
目下J2の首位が町田という今季の順位表からも、やはり「最後に解決するのはパワー」という事を示した、とは言い過ぎでしょうか。