※前回の秋田の記事はこちら(2節・熊本戦、1-0)
※前回の大宮の記事はこちら(8節・山形戦、2-1)
<秋田スタメン>
- 田中・藤田が今季初のベンチ入り。
- 駒沢大卒のウォー・モハメッドが加入。まさにギリギリの3/31に決定。
- 吉村の故障が発表され、2/17に手術を行い全治5か月との事。
- 齋藤の故障が発表され、発生日不明(5節・水戸戦以降か)で全治12週間との事。
- 中村の故障が発表され、発生日不明(恐らくHTで交代した6節・徳島戦)で全治16週間との事。
<大宮スタメン>
今季のJ2も節目の10節を迎え、そろそろ優劣がハッキリとしてくる時期。
そんな中で「青森山田」と揶揄される町田が首位争いを演じているのが象徴的ですが、その流れに乗っかった秋田も上位に着けている現状。
まさにパワーサッカー全盛といった感じでしょうか。
3年前ぐらいは下位カテゴリに当たるJ2の場でも、「ボール保持を重視して相手の守備ブロックを能動的に崩しにかかる」クラブが多数を占めていたものですが、今や形勢逆転の趣に。
そのパンドラの箱を開いた(と思われる)事象が秋田のJ2昇格で、2年間掛けてその地位を固めた影響が、リーグ全体にも波及した感があり。
まさに先駆者といった活躍で、3年目に当たる今季の飛躍もある意味当然っぽくありますが、まだまだシーズンの先は長く。
この日は、そのパワーサッカーの神髄を発揮するには十分な環境。
相手の大宮もパワーサッカーに針が振れている現状と、上記のリーグ全体の流れに従うかのようですが、低迷期を経ての事で苦し紛れの印象もあり。
そんな大宮をホーム(ソユースタジアム)に迎えた一戦は、強風吹き荒れるなか開催されました。
完全に(メインスタンド側から見て)左から右へ吹く強い風という条件が固定されていたこの日。
キックオフ前からどちらが風上を取るのかが嫌でも注目される中、前半は大宮がその条件を得ました。
しかし強い追い風という要素を味方につけるのに苦労する大宮。
前半2分の左からの茂木のロングスローは、誰にも合わずエリア内でバウンドする(高柳が拾いにいくもGK圍抑える)という具合に、ボールの伸び具合を把握するのに難儀します。
逆に秋田が普段通りのサッカーで攻勢。
縦に速い前進でサイドを突く攻撃で、風にナイーブとなっている大宮を押し込み。
12分にボールの蹴り合いで両チームベクトルが入れ替わる中、藤山のラフな裏へのロングパスが通り、左サイドで水谷が切り込んでクロス。
これがファーサイドでフリーの高田がトラップするも、収められずゴールラインを割り。
大宮にとっては、この場面のようなロングボール合戦によるトランジションの遅れも考慮しなければいけない展開を強いられ。
立ち上がりの時間を過ぎると、悩まされていた大宮は攻め方を一新し、グラウンダーでのパス重視の姿勢に切り替え。
21分には右サイドからの前進で、縦パスをカットされた栗本が自らボール奪取して継続。
そして逆サイドへと渡し、泉澤がドリブルでエリア内を突いてシュート(GK圍キャッチ)と一定の形を見せると好循環が巡って来ます。
23分には左右からクロスの応酬を見せたのち、こぼれ球を拾った茂木が梶谷に後ろから倒されて反則、直接フリーキックの好機に。
左ハーフレーン・エリアからすぐ手前という良い位置で、キッカー高柳の直接シュートがゴール左を襲いますが、GK圍の好セーブに阻まれ。
それでも秋田の中央が固いため、必然的にサイドからの突破が重視となる大宮。
ブロックをズラさんとするサイドチェンジも多用する攻撃で、そのため攻撃の接続役である小島にボールが渡る回数は少なく。
そんな要素からか再び停滞し始める大宮を尻目に、ゴールを目指す秋田。
向かい風でも、ロングボールを取り入れる攻撃に躊躇いは無く、この辺が百戦錬磨のパワーサッカークラブといった感じでしょうか。
28分にはボールカットした小暮がすかさず左サイド裏へロングパスを通し、クロスまで辿り着いて左コーナーキックを獲得。
キッカー水谷はニアへ低いクロスで(才藤の)フリックを狙い、クリアされた所を高田がミドルシュート。
ブロックされるもさらに諸岡が追撃のシュート(枠外)と、得意手で得たセットプレーで全力で仕留めんとします。
難儀な試合を強いられる大宮ですが、やはり地上での攻めが好結果を齎します。
36分に最終ラインで秋田のチャージを受け、試合が止まったためドロップボールでの再開。
FKではなかったのが影響したか、浦上が右サイドへグラウンダーで長いパス、受けた岡庭のアーリークロスと大宮の素早い運びを通す秋田ディフェンス。
これをニアサイドやや手前で合わせた富山、放たれたヘディングシュートはループの軌道となり、GK圍の上を越えてゴールに吸い込まれ。
心理的な隙を突いた形での先制点を挙げました。
一方ホームで相手を自分のペースに巻き込みながらも、リードを奪われた秋田。
再び同じ土俵に放り込まんと、42分に得た中盤からのFKで放り込み。
ここからCKへと繋がって、そのCKも2本続くという具合に繋がるセットプレー攻勢。
いかにも秋田らしい好機の作り方で、1本目の左CKからは再びニアサイドでフリックを経て丹羽がヘディングシュートにいくも、栗本のブロックに阻まれ同点ならず。
結局0-1のまま、前半を終える事となりました。
追い掛ける立場の秋田ですが、後半はそれを後押しする追い風を得る環境。
攻め方を変える事無く、その威力を必然的に増す事となります。
流石にパワーサッカーに慣れているだけあり、その強風を味方につけるのに時間は掛からず。
早速の後半1分に才藤が左からロングスローを投げ入れると、その後も裏へのロングパス攻勢を続けた結果、大宮ディフェンスのセーフティなクリアが膨れ上がり。
その結果ロングスローの機会も大幅増となる、いたれりつくせりの状況に持ち込みます。
大宮の攻撃は、6分に高柳が苦し紛れに遠目からシュートを放った(枠外)1度のみに終わり。
その後はほぼ秋田が攻め続けるという、チーム全体が強風と化したかのような展開が繰り広げられます。
自分達のペースに移行したというタイミングで、交代カードを切る秋田・吉田謙監督。
10分に小暮・丹羽→畑・青木へと2枚替えを敢行。
これで2トップは青木・梶谷のダブルポストという状況になり、ターゲット役を絞らせず。
12分諸岡のラフなロングパスからセカンドボールを拾っての好機、右サイドからの攻めは遮断されるも、エリア内へこぼれたボールを青木がダイレクトでシュート。
ブロックされても尚繋ぎ、今度は左サイド奥を取って才藤のクロスが上がり、ファーサイドで畑が合わせたものの茂木を倒してしまった事で反則。
ゴールにはならなかったものの、そのパワーで押し潰すという、ワンサイドゲームにも似た状況となりつつあるのは明白であり。
直後に大宮ベンチも動き泉澤・高柳→大澤・大山へと2枚替え、流れを切らんとしたもののそれは実りませんでした。
ロングスロー→CK→CKとセットプレーを続ける秋田。
そして迎えた16分の左CKで、キッカー水谷のクロスがニアに上がる、ボールはDFと競り合いながら跳んだ阿部を越えて中央へ。
これが浦上の足に当たってゴールに入る、オウンゴールを誘発するボールとなり。
意外な結果での同点劇でしたが、攻め続けた秋田へのご褒美と言うべきでしょうか。
追い付いたのちも、尚も同様の攻めを継続して圧し続ける秋田。
21分には左から(才藤が)ロングスロー、藤山のフリックを経て中央で乱戦に。
シュートにいくも撃てなかった梶谷が尚もこぼれ球を拾い、右ポケット奥から畑のクロスが上がったものの合わずに流れ。
大宮はこの流れを切る手段は無いといった感じで、ひたすら耐え凌ぐ事を余儀なくされます。
27分にさらに交代カードを切る秋田、水谷→井上へと交代。
攻勢を維持せんとしますが、29分にその前掛かりな姿勢が空回りを見せ。
青木のフリックが繋がらずに、石川が拾った所を諸岡が勢い余ってチャージしてしまい反則・警告を受けてしまいます。
それとほぼ同時に大宮が交代カードを切り、栗本→室井へと交代。
栗本が退いたボランチに大山を充てるのかと思われましたが、小島がその役を務め、富山・室井の2トップに。
上記の秋田の失態もあり、文字通り一息つく事となった大宮。
直後のサッカーもそれに従うかのように、ゴールキックを短く繋いでポゼッションに徹する事で、時間を作りにいきます。
それでも流れは変わらず、以降も5分間で3度ロングスローの機会を得る秋田。
37分の右からの(高田の)ロングスローによる攻撃、これが試合を動かす契機となったでしょうか。
高田が投げ入れたボールは誰にも合わず、中央へとこぼれるも有効打が撃てずにクリアされ。
尚も継続しようとした所を、大山のパスカットで切った大宮がカウンターに持ち込みます。(その後スピードダウンして作り直し)
続く39分、敵陣でパスカットを果たした大宮、そのままパスを繋いで右サイドから岡庭がクロス。
これをファーサイド奥で室井がヘッドで合わせたもののゴールには向かわず。
なまじ攻撃機会を得れるようになってきた大宮でしたが、この際に岡庭が靴紐を結び直す体勢を取り、これが落とし穴となります。
それを見た秋田サイド、ゴールキックを岡庭の居ない左サイドに蹴り込み、スペースに転がったボールを青木が拾って敵陣で攻撃開始。
そして奥を突いてのカットインで左ポケットへ切り込む青木、中央への横パスを受けた諸岡がシュートという完璧な流れで、ゴールネットを揺らします。
大宮サイドの心理的な緩みは(攻められっぱなし故に)ある程度仕方ないにせよ、それを絵図に表すという最もやってはいけない事象を行ってしまい高く付きました。
攻めなければいけなくなった大宮、以降もゴールキックを短いキックで繋ぐ姿勢を見せ、ポゼッションに活路を見出す事に。
42分には繋ぐ最中に、センターバックの袴田が流れの中で最前線まで上がる変則的なパワープレイ体制に。
その袴田への石川のロングパスはクリアされるも、セカンドボールを繋いで大山がエリア内からシュート(ブロック)と好機を生み出します。
それでもゴールという結果でなければ意味の無い大宮、45分に最後の交代を敢行し石川→柴山。(今度こそ大山がボランチへ回る)
一方の秋田も同時に、諸岡→田中へと交代します。
アディショナルタイムに突入し、大宮サイドも(岡庭の)ロングスローを活用してとにかく追い付かんとする姿勢に。
それでも秋田の守備を破るには至らず。
逆に梶谷のボールキープを活かして敵陣で時間を作る姿勢に持ち込まれます。
その最中に、左ポケット奥まで切り込んだ梶谷に対し、袴田が強引に倒して奪った事で「PKじゃないか」という秋田サイドの異議が飛ぶ一幕も生まれ。
そんな大宮の形振り構わない姿勢も実らず、試合終了の時を迎えます。
2-1で勝利した秋田、順位もさらに一つ上げて4位となり。
今季のスローガンである、「シン・秋田一体」に誠に相応しい立ち位置を維持出来たでしょうか。