<両軍スタメン>
Jリーグに参入してから歴史が浅いクラブ同士の対決。
参入してすぐに瞬間的にJ3の頂点付近を経験した宮崎(2021年)ですが、以降失速を余儀なくされ。
そして今季は、JFLへの逆戻りが現実問題として襲い掛かるという状態に陥っています。
幸い前節に「裏天王山」こと岩手との直接対決を制し(3-0)、最下位による自動降格は免れそうな状況ですが、早いところ安全圏を確保したいのは変わらず。
そのためのレンタル選手も夏の補強期間で膨らませ、その総数は実に15人もの大集団と、異様な編成と化しているものの気にしている余裕は既に無く。
そんな急転直下的な宮崎を尻目に、八戸は2019年の参入以降の5年間で堅実なステップアップ傾向にあり。
前年の初の一桁順位を盾に、今季は上位ならびにJ2昇格を目指す戦いを繰り広げ。
稀に見る2位以下の混戦によりそのライバルも多種多様で、自身はクラブのポテンシャルで見劣りする中、存在感を示す事が出来るかどうか。
昇格云々の結果よりも、この緩やかな上昇ペースを保つかがカギとなりそうです。無理に今季昇格しても岩手の二の舞になりそうなので……
ホーム(いちご宮崎新富サッカー場)の声援を背に受け、文字通り後には退けないという戦いのような宮崎。
それは早速の前半1分に、センターライン付近からのフリーキックでも放り込みを選択する攻撃にも色濃く表れ。(キッカー井上のロビングをエリア手前で安田がフリックも繋がらず)
直後の2分には阿野が(稲積に)アフターチャージを受けての反則で、今度は右ワイドながら近めの位置でのFK。
キッカーは阿野で当然クロスを選択し、中央に上がったボールを武が合わせヘディングシュート。(ゴール右へ外れる)
5分にもゴールキックからターゲットの橋本目掛けたロングフィードから、こぼれ球を拾った井上がミドルシュート(枠外)と、手数を掛けずにかつハイテンションでゴールを狙います。
まさしく背水の陣のようなその戦いぶりに、立ち上がりは後手に回った八戸も徐々に反撃。
こちらは最終ラインからグラウンダーで繋ぐ事がメインとなり、3バックが広く距離を取ってのパスワーク。
これにより、守備時もテンション高くハイプレスを敢行する宮崎は、前線が長いチェイスを余儀なくされる状態に。
如何にも百戦錬磨の石崎信弘監督が率いるチームらしい、相手の出方に合わせるサッカーという立ち回り。
最終ライン中央の近石から1つ飛ばしでウイングバックに長いパスを送る、左右のセンターバック同士でサイドチェンジを行うというパスワークも駆使し、宮崎ディフェンスを走らせる事を徹底します。
そうして徐々に勢いが失われつつあった宮崎。
しかし17分再びゴールキックで橋本目掛けたロングフィードから、こぼれ球の八戸のクリアが逆方向へ流れてしまい、左サイド奥で井上が拾って宮崎の好機に。
マイナスのクロス気味に中央へ戻したボールを、橋本がダイレクトでシュートを放ちましたが、エリア内の阿野に当たってしまい先制ならず。
それでも勢いを得た宮崎は続く18分、(上記の好機ののちボール確保して最終ラインに戻してから)右サイド後方から安田がスルーパスを送ると、蓋をする蓑田を猛スピードで追い越した松本が奥で受け。
その後阿野のクロスに繋げる(GK大西キャッチ)という具合に、個々の頑張り特に走力を駆使し、老練な相手を押し込みに掛かります。
再びその意気に押される格好となった八戸は、以降最終ラインの距離感が狭くなって繋ぎの姿勢を取り(23分)落ち着けに掛かり。
その直後、蓑田が前に出ての反則気味のボール奪取で、待望のショートカウンターのシーンが訪れ。
中央を最短距離で進んだ末に、エリア内から佐々木のシュートが放たれましたがGK青木がこれをナイスセーブ。
結局ゴールは生まれないまま飲水タイムが挟まれ(24分)、第2クォーターに突入します。
そのハイテンションぶりで、後半の失速が懸念されるといったここまでの宮崎の立ち回り。
しかしブレイクを挟むと、右肩上がりでの布陣から地上でのビルドアップを重視するようになり。
また松本の推進力を駆使した右サイドからに偏っていたサイドアタックも、パスワークにより左も使うようになるなど若干の修正が施されたようでした。
一方八戸も、ブレイクが挟まれた事で再び距離感を長くしたパスワークの体勢を取り戻し。
宮崎が橋本をターゲットにするのと同様に、こちらもGK大西のロングフィードからのセカンドボールを確保する攻撃も使いながら、ペースを維持せんとします。
32分にはそのロングフィードから左サイドでボール保持に入り、安藤がカットインから逆サイドへ戻した末に、柳下のアーリークロス。
このゴールに向かうボールに佐々木が跳び込むという、際どいシーンになりましたがGK青木は惑わされずキャッチ。
一進一退という流れの中、38分に宮崎は再び中盤付近でのFKで、遠目から放り込み。
クリアボールを確保したのち、安田がエリア内へ強引に切り込んだ末にシュート(ブロック)とフィニッシュに繋げ。
すると直後に八戸も、佐藤のパスカットから素早く右ポケットを突いた事でコーナーキックと、セットプレーに持ち込んでの好機。
キッカー安藤のクロスをクリアしきれず、大外に流れた所を佐藤が足で折り返し、これがファーサイド奥に上がり。
そこに佐々木が脚から跳び込むも惜しくも合わせられず。
お互いセットプレーでの好機が交わった事で、終盤の流れは読めないものとなり。
すると宮崎は42分、そのセットプレーの空気感を引き継ぐかのように、右サイドから前進と見せかけてかなり手前の位置から(武が)アーリークロスを選択します。
すると中央で橋本が、柳下との競り合いを制してこのボールを収めきり、すかさずシュートを放ってゴールに突き刺し。
放り込みの意識が文字通り一刺しとなり、宮崎に先制点を齎しました。
その後宮崎がCKを獲得したのみという好機と、セットプレーの流れが継続された残り時間。
八戸が思うように攻め込めないまま、前半終了の運びとなりました。
そしてハーフタイムでの交代も無く、始められた後半。
前半終盤の空気感をまともに引き継いでしまった事が、運命の分かれ道となったでしょうか。
その後半1分に、右サイド中盤でFKを得た宮崎が放り込みの体勢と、前半同様の入りを演じ。
阿野の放り込みはエリアまで届かずも、江川のフリックからヘッドの連続でゴール前に迫り、クリアされるも右CKで継続となり。
そしてショートコーナーで戻しという変化から、松本が奥へ切り込んでのクロスで揺さぶり。
しかもこのクロスが直接ゴールへ向かい、GK大西は弾くのが精一杯という絵図になると、エリア内中央へこぼれたボールを黒木が追撃しシュート。
これも蓑田のブロックに跳ね返されますが、更に阿野が反応して横パスの末に、武がダイレクトシュート。
前澤のブロックも及ばずゴールに突き刺さり、フィニッシュの嵐で堅守を崩壊させた末の追加点に。
加入後初ゴールを挙げてゴール裏スタンドで祝福を受けた武により、勝利への気運を高めに高めます。
尚も、反撃の道筋即ち攻撃機会を作れない八戸を尻目に押し込み続ける宮崎。
7分に松本のクリア気味のロングパスを橋本がポストプレイ、受けた阿野がスペースを持ち運んだ末にカットインシュート。
GK大西のセーブに遭うも、依然としてペースを維持する宮崎は続く8分、相手のロングパスを黒木がヘッドで跳ね返し。
これが直接エリア目前まで届くボールとなり、橋本のフリックを受けた武がエリア内へ持ち込み、柳下のスライディングを冷静にいなした末にシュート。
ゴール左に突き刺さり、息もつかせぬ連続ゴールを挙げる形となった武。
これで3点差と、安全圏を確保するに至りました。
一方まさかの開始からの連続失点となった八戸、こうなると主体的な攻めで何とか打開するしか無く。
ベンチも早々に手を打ち、10分に稲積・佐々木→妹尾・雪江へと2枚替え。
妹尾がシャドーに入る事により安藤が左WBにシフトと、ポジションチェンジも絡めた采配を敢行します。
それでも、11分に宮崎のカウンターを受けてしまう(右から橋本がクロスもGK大西が抑える)など、相変わらず劣勢に映る試合絵図。
しかし余裕が出来た宮崎から、後が無いという空気を引き継いだ事で展開は変わり。
15分、アンカー前澤から左へ展開すると、ポジションを移した安藤が一気にアーリークロス。
それは宮崎の先制点を彷彿とさせる一手で、一瞬無謀に思えたものの、これがエリア内へ走り込んだ佐藤の脚にピタリと合い。
放たれたシュートがゴールネットを揺らし、1点を返した八戸。
これによりようやく反撃の機運を高めるに至りました。
しかし宮崎も、残留へ向けての勝ち点3が見えている状況とあり弱気な姿勢は見せられず。
19分に敵陣右サイド・ライン際で音泉が突破を図らんとした所、対峙する田中誠が制してボール奪取に成功。
そこからスルーパスが橋本に渡り、一気に左ポケットまで推進した橋本でしたが蓑田のスライディングに遭いシュートは撃てず。
異彩を放つ特別指定の田中誠の存在感もあり、八戸に攻勢に持ち込ませません。
23分に右スローインからボール確保ののち、阿野がカットインを経てミドルシュート。
ゴール左を襲い、GK大西の際どいセーブに阻まれますが、ここからCK攻勢と依然としてペースを掴んだままとなり。
この2本目のCKからの二次攻撃が途切れた所で、挟まれる後半の飲水タイム。
どうしても流れを変えたい八戸、明ける際に再度2枚替え。
山内・佐藤→鏑木・藤㟢へと交代し、最終ライン(左CB)に入った藤㟢により、柳下が押し出されるように最前線へ。(蓑田は右CB)
攻撃的な柳下をそれに相応しい位置にシフトするという絡め手で、反撃体制に入ります。
一方宮崎もその後の28分に、江川→辻岡へと交代。
これ以降、ボール保持の色を高める八戸は、攻撃時鏑木がアンカー的に中盤の底に回り。
そして本来アンカーである前澤が積極的に動き回り、時にはエリア内でフィニッシャーとも化する変節を見せます。
30分に左サイドをドリブルした前澤から横パスの連続でエリア手前中央へ、柳下→妹尾のパスは遮断されるも拾い直した柳下がエリア内へ進入。
狭い局面での攻防に入ると、左ポケット奥から安藤がマイナスのクロス、ジャストミートせずもニアで前澤が拾ってバックパスもカットされて終了となり。
どうにかして相手の堅守を上回りたいというその姿勢で、ポジションチェンジ・システム変更も絡んだ事で対応に追われる宮崎を守勢に押し込みます。
試合開始時から飛ばしてきた事とも相成り、運動量を確保したい宮崎。
36分に2度目の交代を行うと、故障明け(放送席の談)である青山を投入。(松本と交代、同時に阿野→魚里へと交代)
八戸の策により右サイドを脅かされる局面も増えたためか、2人を揃って入れ替えました。
一方八戸も、37分に最後の交代を敢行し音泉→國分。
その直後に、宮崎は殊勲者である武が足を痛めてしまい(攣らせたのかどうかは不明)倒れ込み。
最後の交代を余儀なくされるも、準備が間に合わず数的不利になると、その間に八戸が好機に持ち込み。(39分)
ここも前澤が左サイド最前線まで上がり、スルーパスを受けての戻しを経て鏑木のクロスが上がると、ファーで柳下がヘディングシュートを放つも枠外に。
何とか凌いだ宮崎、武・力安→吉澤・坂井へと2枚替えを果たして交代枠を使いきります。
八戸攻勢の一瞬の隙を突き、41分に宮崎は坂井の左→右への対角線のロングパスが魚里に通って好機。
右ポケットに侵入した魚里のグラウンダーのクロスを、最後はストライカーの橋本が合わせましたが枠を捉えられずに終わり。
決定的な追加点は挙げられずになると、以降その前向きな姿勢が混迷を齎し。
直後に空中戦で青山と安藤が交錯して両者倒れ込む事態が発生する(共に無事に継続)と、以降反則絡みで何かあるのでは……という雰囲気も生まれてしまったでしょうか。
そして44分、八戸陣内で宮崎の反則となると、FKの位置に立っていた橋本をどかせるように蓑田が押し倒し。
これにより井上がヒートアップし蓑田に迫った事で、乱闘寸前の絵図を誘発させてしまいます。
何とか落ち着かせた末に、蓑田・井上の両名に警告が付き出されて試合再開となり。
そんな不穏混じりの空気故に、八戸サイドも最早放り込むしかないという終盤戦。
しかしアディショナルタイムに入るかどうかという所で、GK大西のロングフィードを雪江が落とした事でアタッキングサードへ持ち込み、右サイド手前から鏑木がクロス。
これを前澤が合わせにいき、GK青木が跳び出して撃てずも両者接触した事でこぼれ球となり、そこにすかさず雪江が詰めてシュート。
ゴールに突き刺さり、反則も取られずに土壇場で1点差に迫った八戸。
なおゴールしたボールを抑えた田中誠により、直ぐにボールを戻したい八戸サイドがヒートアップの絵図を見せるも、更なる混沌は生まれず何とか収まり。
尚も向かってくる八戸のベクトルを逸らしたい宮崎、橋本が足を攣らせてしまうものの前線でサッカーを展開。
巧くコーナー付近で時間稼ぎの体勢に入る事2度、時計を進めて逃げきりを図ります。
しかしそのATの目安は8分と長く、盤石に見えたその体勢もずっと続ける事は出来ず。
次々とエリア内にボールを放り込む八戸、どうにかして同点に追いつかんと押し上がり。
雪江がロングスローを入れるという場面で、GK大西も上がってくるなど総動員体制に。
その形相を受け、宮崎サイドもGK青木が遅延行為で警告を受けるものの、何とか凌ぎ続けます。
そして試合終了の時を迎え、3-2で勝利を挙げた宮崎。
這う這うの体という印象は拭えない終盤戦ながら、第一である勝ち点の積み上げを果たせた事が何よりの良薬でしょう。