※前回の栃木の記事はこちら(29節・長崎戦、1-1)
※前回の水戸の記事はこちら(25節・長崎戦、2-1)
<栃木スタメン> ※()内は前節のスタメン
<水戸スタメン>
- GK富居が加入後初のスタメン出場。
- 24節(横浜FC戦、2-2)で負傷交代した山本隼が復帰、ベンチ入り。
残留争いで重要な局面となる一戦は、「北関東ダービー」においても同様であり。
前半戦は群馬含め、3試合とも引き分けで終わったダービーマッチ。
そのため後半戦に雌雄を決する事となりましたが、水戸は群馬に対し勝利。(28節、2-1)
一歩前に出たのみながら、その一歩がとてつもなく大きい。
この日水戸は勝利すれば文句無しに戴冠が決まり。
逆に栃木は2戦残っているとはいえ、最低でも1勝が求められる状況に。
そんな悪く言えば「場外での戦い」を抜きにしても、降格圏脱出を狙う栃木に対し、水戸はその魔の手から逃れるというコンセプト溢れる一戦となりました。
しかしその天候は芳しくなく、試合前から弱く降り注いでいた雨が、キックオフ後徐々に強まりを見せ。
そんな中で前半1分、いきなりスローインを受けようとした久保が倒された事でフリーキックと、水戸のセットプレーという入りになり。
お天道様もピッチ上のサッカーも、波乱を予感させるものだったでしょうか。
栃木は前回観た際と同様、地上での繋ぎ+宮崎へのロングボールを組み合わせた、ハイブリッドと表現したくなる攻撃面。
それに加えこの日は果敢なハイプレスも冴え渡り、5分には水戸最終ラインのパスミスを誘発し、ショートカウンターの姿勢も森俊貴→宮崎のパスが遮断されてスピードダウン。
しかし左サイドで組み立て、神戸の手前からのクロスが上がると、ファー奥まで走り込んだ福島が折り返し(繋がらず)とピッチを広く使っての好機を生み出し。
すると直後の6分、今度は最終ラインでのパスワークから、ラファエルのロングパスで裏を突くという疑似カウンター的な好機。
受けた宮崎が左ポケット奥へ切り込み、その勢いのままマイナスのクロスを送るも中央に走り込む南野には合わず。
流れた所をまたも福島が合わせ、シュートのために足を振りましたがミートせずさらに逆サイドへ流れ。
しかしこれが丁度宮崎の足下へ戻るボールとなり、放たれたシュートがGK富居の股を抜いて右サイドネットを揺らします。
ゴール前で右往左往するボール・クロッサーがフィニッシャーを兼ねるという、何とも珍妙な絵図でしたが先制点に辿り着いた栃木。
早々に追う立場と化した水戸ですが、ダービー故に依然テンションは高く。
8分右サイドで長澤がカットしてこぼれた所、長井が1タッチで裏へロングパスを送り好機。
受けた久保が右ポケット奥を突いてマイナスのクロスと、先程の宮崎をトレースするようなチャンスメイクをしましたがシュートには繋がらず。
しかしクリアして栃木が拾った所、ゲーゲンプレスで長澤が奪い返しさらに攻める(長井が右ポケットを突いてクロス)、という具合。
それでも組織的には、栃木のハイプレスに悩まされてビルドアップがままならない状態に。
1トップ・2シャドーの栃木の前線に対し、長井が最終ラインに降りる「ミシャ式」の布陣での繋ぎで対抗せんとする水戸。
しかしそのシステムは、サイドに出した所にウイングバックが強烈に詰めに来る栃木と噛み合ってしまう形となり、前進が困難となります。
そんな閉塞感を打破したのが縦突破で、15分左ワイド後方から大崎がドリブルし、草野とのワンツーも混ぜて前進に成功したのちスルーパス。
受けた新井が奥へ切り込んでマイナスのクロス、今度は中央の久保の脚に合うという所で、プレスバックした神戸と絡み合う格好に。
すかさず笛が鳴ると、神戸の反則という判定でPKが齎されます。
これはとても微妙な判定で、一瞬久保の反則にも見えるようなプレーでしたが、栃木サイドの懸命な異議も当然実らず。
ゴール裏の栃木サポーターのブーイングを浴びながらのキックとなったキッカー久保、それを打ち破る様にゴール左へ強く蹴り込むと、GK丹野のセービングも届かずネットを揺らし。
結果同点となり、振り出しに戻した水戸。
しかしその後も同様の展開で、水戸はプレッシャーによるパスミスを頻発。
好機は23分、右ワイドで長澤がドリブルを仕掛けたものとやはり縦突破でしたが、ここは森俊に止められて実らず。
そして悪天候と、かつてのグリーンスタジアムを彷彿とさせる芝の状態の悪さによる影響も見られるようになり。
23分、栃木の裏へのロングパスをGK富居がヘッドでクリアするも、切り返さんとした大崎が転倒して拾えず栃木の攻撃が継続。
拾った南野のスルーパスに走り込んだ宮崎が右奥からクロスを入れるも、中に合わせる選手は居らず助かる格好に。
表面上はタイスコアも、栃木優勢の流れで飲水タイムが挟まれ。(25分)
ブレイク後もそれは継続され、27分にはまたもパスミスを拾った栃木の好機となり、右サイドからクロス攻勢。
神戸の2度目のクロスをセーフティにクリアする破目となり、左コーナーキックで継続すると、キッカー青島はニアサイドへクロス。
そして藤谷フリック→中央で福島ヘディングシュートと、ゾーン守備の水戸の間を縫った末にピンボールのようにゴールに吸い込まれ。
好循環をしっかり結果に繋げ、再度リードを奪いました。
反撃したい水戸ですが、相変わらずサイドからの推進力に頼る以上の事が出来ず。
新井や草野がドリブルでサイド奥を突かんとし、成功したときのみ好機が訪れるという流れ。
36分には栃木の攻撃も、森俊のクロスをカットした櫻井からカウンターに持ち込み。
草野が中央をドリブルと、毛色の違う好機になりそうな所で南野に反則で止められ、南野に警告が出たものの形にはならずに終わりました。
そして終盤は、無理にロングボールを送っては栃木に跳ね返され、逆襲を受けるの連続という目も当てられない展開に。
45分にはその反転を(新井が)反則で止めてのFKから、ラファエルがヘディングシュートを放ちましたがGK富居がキャッチ。
何とか追加点だけは防ぐ格好で、前半を終わらせました。
1点差ながら、巻き返しは必須と言える流れの水戸はハーフタイムで動き。
山田・牛澤→楠本・山本隼へ2枚替えと、センターバック2人を退かせる選択します。
根底の部分を変えて挑まんとしましたが、それに待ったを掛ける事態が発生。
それはひっきりなしに雨が降り注ぐという天候で、後半のキックオフ直前にとうとう雷鳴が轟く状況にまで発展し。
ピッチ上も水が浮き始める深刻な状態で、始めるか否かという選択を迫られ、結果中断する事となります。
その時間は実に1時間半にも及び、その間に形成された水たまりを、手作業で取り除く事に追われるスタッフ。(放送席の談では、栃木のメンバー外の選手も参加したとの事)
何とか再開の段取りになりましたが、ここで大きく動いて来たのが水戸・森直樹監督。
先程の2枚替えに追加する形で、甲田・草野→前田・中島への交代を敢行と合計4枚替え。
これで4-4-2の布陣となり、最終ラインは右から長澤・長井・楠本・大崎、ドイスボランチは櫻井・前田と、大きく変えて後半に臨みました。
水たまりは大部分が除去されたとはいえ、地上での繋ぎは期待出来ないピッチ上。
そのため水戸の戦術は、久保・中島の2トップ目掛けたロングボールがメインとなりました。
これが実に良く機能し、栃木ディフェンスがセーフティなクリアを強いられると、すかさず送られる大崎のロングスロー。
秋田を彷彿とさせるその割りきったスタイルで、前半の閉塞感は見事に打ち破られます。
これを見た栃木も、押し込まれるのを受けて宮崎狙いのロングボールへと傾倒。
しかしここは、投入された楠本が彼との空中戦にほぼ全勝と機能させず。
大胆な采配が見事に全方面で当りとなれば、流れが反転するのは道理であり。
開始10分で、実に水戸(大崎)が放ったロングスローは4本と量産体制に。
ひたすら押し込む流れを得て、12分に得た左CKから、キッカー櫻井のクロスを久保が合わせヘディングシュート。
ゴール左を襲ったものの、森俊のブロックで跳ね返されて惜しくも同点ならず。
しかし右スローインからも大崎のロングスローで継続し、混戦が生まれた所を長澤がシュート。
これをブロックして防いだ福島が痛んで倒れ込む(その前にも、大崎のクロスを鳩尾で防いで痛む場面があり)という具合に、フィニッシュの嵐に対する必死の守備の絵図は拭えなくなってきた栃木。
そしてさらに継続した右CK。
キッカー大崎のクロスを、今度は楠本が合わせてのヘディングシュート。
外から中央に入り込む形でマークを外し、ゴールネットに突き刺して同点弾を齎します。
狙い通りの展開に持ち込み、再度振り出しに戻した水戸。
一気に劣勢を強いられた栃木。
15分に右スローインからの繋ぎで、アタッキングサードでパスワークに入る好機。
左から神戸のクロスが流れ、右奥で拾って継続させるという所で、福島が新井の反則気味のアタックで奪われ。
すると低い位置から新井がドリブル突破を見せた事でカウンターとなり、スルーパスを受けた久保はカットインから中央に託し、走り込んだ中島がシュート。
ラファエルのブロックで防ぐも、依然として水戸の流れという事を示す攻防に終わり。
何とかしたい栃木は、宮崎を囮としつつの裏抜けという形で組み立て始め。
しかしここも、ロングパスに走り込んだ南野に対し蓋をして防ぐ楠本。(19分)
結果的に、その守備面での貢献は大きな要素となりました。
そして21分、栃木はイスマイラの投入に踏み切り。(奥田と交代)
宮崎と並べる事で打開を図る、という意図なのは一目瞭然でした。
しかし、反撃しなければという焦りの方が強まった感があり。
22分、後方から藤谷が放り込まんとした所を久保が詰めてブロック、こぼれ球に対し新井が拾いにいくという危機が生まれ。
これをラファエルが彼を倒す形で止め、笛は鳴らずと際どい凌ぎを強いられるのは変わらずであり。
その後も、中島・久保の2ターゲットを狙う水戸の攻撃に難儀する栃木ディフェンス、幾度もエリア内を脅かされるなどその展開は変えられません。
そして28分、ここもゴールキックでのロングフィードと、一気に前に運ばんとするも楠本の跳ね返しが待ち受け。
このクリアを収めた久保、浮き球のまますかさず裏へと送り、中島が走り込む事で決定機を迎えた水戸。
栃木が前に出た所を綺麗に突く格好となり、エリア手前という位置で果敢にシュートを放った中島。
ゴール右へと突き刺さり、とうとう逆転に辿り着きます。
流れを変えられなかった代償は、痛すぎるものとなった栃木。
その後も水戸の押し込みを受け、一向に反撃の気運が巡って来ず。
それにしては交代カードを切らなかったのは不可解ですが、ピッチコンディション故に活きる駒が無いと踏んだのか、ないしは中断により体力消耗は浅いと判断しての事か。
転機は37分で、最終ラインからラファエルがドリブルで仕掛けた末にスルーパス。
ここは繋がらずも、以降前掛かりとなり攻めに加わるラファエル、時には流れの中でエリア内でターゲットとなるシーンも見られ。
再びペースを掴み、4-4-2へと変更した水戸ディフェンスの隙を窺うように、サイドチェンジも使いながら敵陣でサッカーを展開する栃木。
イスマイラがロングボールを落とすという絵図も増えましたが、それでもその道筋は盤石では無く。
フィニッシュは38分のイスマイラのヘディングシュート(GK富居キャッチ)ぐらいのものに終わります。
水戸は42分に最後の交代、久保→村田。
村田は当初FWに入るも、時間が進みアディショナルタイムの半ばで、右WBに回る事で再度5-4-1で逃げきり体制を形成する役目となり。
そのATで栃木ベンチはようやく動き、福島・南野→大森・山本桜。
守備を固める水戸に対し、最後の反撃を試み。
後方から神戸のロングパスが、エリア内のイスマイラに渡るというロングボールでの好機が訪れ。
ワントラップからボレーシュートを狙ったイスマイラですが、距離を詰めたGK富居のプレッシャーもありふかしてしまう結果に終わり。
繰り広げる攻勢ですが当然隙もあり、それを突いて新井が持ち運ぶ絵図を作る水戸。
平松が反則で止める事を余儀なくされる(警告)など、流れの悪さは最後まで拭えずとなりました。
結局2-3のままスコアは動かず。
試合終了の笛が鳴り、北関東ダービー制覇が決定付けられた事で歓喜に沸く水戸サイド。
不測の事態も絡んだ試合を、対応力と力強さで制したその姿は、文字通り優勝カップを手にするのに相応しいといえるでしょう。