<両軍スタメン>
ナイターの試合が組まれると、夏本番という情緒に駆られるものであり。
しかしこと琉球の本拠地(タピック県総ひやごんスタジアム)では、5月をもっていち早くナイター開催を余儀なくされる沖縄という土地柄の事情が色濃い格好であり。
そんな気候条件にも拘らず、ビジネスマンらしきワイシャツ姿で指揮を執る金鍾成(キンジョンソン)監督の姿に、慣れによるホームアドバンテージを感じる一戦だったでしょうか。
その琉球と相対したのは福島で、勝てば(2位の沼津が既に敗れたため)自動昇格圏に肉薄できる判り易い一戦。
9-0大勝の岩手戦は別として、自分が観る試合はどれもスロースターターという印象の強い福島。
この日も例外では無く、気象コンディションのみならず、琉球の布陣を確かめるのに時間を取られた感があり。
フォーメーションは3-3-2-2(3-1-4-2)なのは明白ですが、アンカーの位置に居る選手が流れの中でコロコロ変わり捉え辛く。
パッと見(琉球の)攻撃時は富所が、守備時は岡澤がアンカーといったシステムと認識できました。
組み立て役をさせたい富所ですが、既にベテランの域(かつ故障の多い属性持ち)故に守備面での1アンカーは厳しい、という思惑でしょうか。
その琉球のビルドアップに対し、最終ラインに3トップがガッチリ噛み合わせてのプレッシングを行う福島。
4-3-3のまま守備を行うスタイル故に当然の姿勢であり、琉球のポゼッションに対抗の構えを見せます。
しかし上記のアンカーの流動性には対応できず、度々間でパスを受ける岡澤・岩本の存在もあり崩される事が多く。
前半9分には右ワイドで持った上原がディフェンスに遭った事でラフな繋ぎを余儀なくされる琉球ですが、野田と堂鼻が競り合ってこぼれた所に、山田の反応が遅れてボールを繋げられ。
そして岩本がミドルシュート(ブロックに当たりコーナーに)と、全体対応に気を取られて判断が迷いがちに見えました。
そんな押され気味の立ち上がりを凌ぐと、徐々に福島らしさが発揮され。
13分に攻め上がったのちの右奥でのスローイン、細かい繋ぎを経て上畑と針谷がマイナスのパス交換を繰り返す事で琉球のプレスを呼び込み。
そして上畑が持ち運びに切り替えて矢印を反転させると、さらに細かく繋いだ末に大関が中央から切り込む所、岡澤に倒されて反則。
これで絶好の位置で直接フリーキックの好機を得たものの、キッカー針谷の直接シュートは壁を直撃。
その後の上畑のミドルシュートもブロックに遭い、結局はモノに出来ず。
10分までは琉球が、10分以降は福島が攻勢というハッキリとした絵図を描く展開。
そして飲水タイムが挟まれる20分台に突入すると、交互に攻撃を繰り返す流れとなり。
23分、琉球は右サイドから縦に速く運び、縦パスを鈴がカットするもこぼれ球を拾って継続。
その後もスルーパスを遮断されるも拾い直しと分厚い攻めを見せるも、岩本のドリブルが堂鼻の反則気味のアタックで止められて終了。
しかし先程パスカットした鈴が、足を伸ばした際に痛めて倒れ込む事態となってしまった福島。
ブレイクには丁度良いという事情から、ここで採られる飲水タイム。
しかし再開の段階でも、その鈴はピッチ外で治療中とあり、いきなり数的不利でのスタートとなった福島。
止むを得ず上畑が左サイドバックを埋め、両ウイングが降りての4-4-1でブロックを固め、琉球のポゼッションを許しながら凌ぐ展開に。
27分にはマイボールとなるもゲーゲンプレスを掛けられ、左サイド深めで佐藤がボール奪取し、こぼれ球をエリア内で拾った富所。
ボールキープを経て中央へ叩き、岡澤のシュートが放たれますがGK吉丸がキャッチし何とか防ぎます。
そして鈴が復帰し、本来の姿へ戻った福島は直後の28分でした。
琉球は後方から左サイドへミドルパスを送るも、これを柴田がカットして矢印を反転させ。
柴田→上畑→塩浜と経由の末に、塩浜がドリブルで右奥を突いてのクロスがグラウンダーで入ると、走り込んだ大関が合わせシュート。
最終ライン~ボランチのスペースを突く形で放たれたフィニッシュがゴールネットを揺らし、難しい展開を乗り越えて先制点に辿り着きました。
勢いに乗る福島は、琉球のキックオフからの攻撃を遮断し、最終ラインからの攻撃を展開。(30分)
中央を大関・針谷の中盤2人が繋ぎ、受けた塩浜が左へスルーパスを通し、澤上が左ポケットへ持ち運んで右スペースへクロス気味に横パス。
そこにはフリーの塩浜と、鮮やかな流れでフィニッシュが放たれましたがこれは枠を大きく外して実りません。
琉球は先制されて以降、攻撃時は富所を一列上げ、岡澤・佐藤をドイスボランチとする3-4-1-2のような布陣に変え。
その富所に高い位置で受けさせ、サイド奥で溜めを作ったりドリブルで勝負したりで目線を変えんとしますが、目に見えた成果は上げられず。
逆に35分、福島はGK吉丸ロングフィード→塩浜胸で落としを経て森晃がドリブルに入り、そのままペナルティアークまで運んでシュート(GK東セーブ)とカウンター気味にゴールを脅かします。
福島が相手の攻めっ気を突く予感が高まるも、ここから流れは停滞。
39分には琉球・佐藤が、42分は福島・塩浜がそれぞれカウンター阻止気味の反則で警告を受けるという具合に、濁流を描き始め。
すると直後の43分、右ワイドで受けた上原から攻撃開始し、岩本へのパスを経て追い越してリターンを受けにいく上原。
そのまま右奥から入れたマイナスのクロスを、ニアで野田が合わせシュートを放ちましたが、これが右ゴールポストを直撃。
その跳ね返りが再度野田の下に渡り、中央からシュートが放たれますが今度はゴール左へ外れ。
直後の44分にも、右ポケットから再度上原マイナスのクロス→野田シュートという同様の流れを作るも枠外と、ストライカーの連撃もゴールに繋がりません。
結局0-1のまま前半が終了。
ハーフタイムで琉球ベンチが動き、幸喜・岩本→高安・岩渕へと2枚替えして後半に臨みました。
そして始まった後半、投入された高安を軸に左サイドから攻め込む琉球。
前半の上原を軸とした右サイドアタックから、丁度逆となったその姿勢に福島は押し込まれ。
後半2分左ワイドでの細かい繋ぎから、佐藤のパスをスルーした高安、そのまま走り込んでポケットで岩渕のスルーパスを足下で受ける好機に。
そしてシュートを放ち、綺麗に右サイドネットを揺らしたものの、オフサイドを取られて惜しくもノーゴール。
一転して劣勢となった福島は、5分に琉球のCKからカウンターに持ち込むものの(大関のドリブルを経て森晃が左ポケットに切り込み、クリアされるも自らミドルシュート・枠外)、矢はそれだけに終わり。
4-3-3の守備隊形による、サイドの薄さ(実質SB一枚)を次々と突かれての守勢を強いられます。
上記の攻めの直後の琉球、高安はワイドから中央へ向かって持ち運び、その流れから中央での前進に切り替え。
そして岩渕がディフェンスと縺れながらもラストパスをエリア内へ送り、走り込んだ野田がシュートを放ちましたがGK吉丸がこれをセーブ。
事態を重く見た寺田周平監督、気候条件による消耗度合も考慮してか、10分と普段より早めに動き。
針谷・森晃→城定・清水へと2枚替えを敢行します。
そのサッカーに欠かせない2人を早期に退かせた事で、守備面で微調整が図られ。
左ウイングに入った清水が引き気味となり、澤上・塩浜の2トップ状態として4-4-2気味に守り。
そしてサイドハーフ状態となった城定・清水が、琉球の最終ラインのボール回しに対して前に出るという姿勢へと移り変わります。
弱点であるサイドを埋めるのは明らかなその効果は直ぐに表れ、琉球の攻撃機会は目に見えて減り始め。
攻めあぐねる琉球に対し、逆にゴールを狙いにいく状況へ持ち込み。
15分、一旦攻撃が途切れるも敵陣で上畑がカットして再度の攻め、パスワークを経てペナルティアークで持った塩浜がシュート。
ブロックされて浮いたボールを清水が右ポケットへ落とし、柴田がダイレクトで放ったシュートはGK東のセーブに阻まれ。
しかしさらに繋がり右奥からの戻しを経て再度ボールはペナルティアークへ、今度は塩浜が撃つと見せかけての横パスを経て、鈴のミドルシュート。
ゴール右へ際どく外れて終了しますが、この3連撃でムードを変える事に成功すると、続く17分でした。
今度は琉球の攻撃を右サイドで遮断と、交代効果を示したのちの反転攻勢で、塩浜の中央の持ち運びを経て右ポケットへのパスが城定へ。
そしてカットインから放たれた城定のシュートがゴール左へと突き刺さり、またも苦しかった時間帯を乗り越えて得点に辿り着きました。
一方2点差を追い掛ける事となった琉球、キックオフの前に富所・野田→高木・庵原へと2枚替え。
以降投入されたこの2人の2トップへと固定化されます。
福島の後方からのロングパスを跳ね返し、マイボールとする事で分厚い攻撃を見せ始め。
しかしその流れの中で、右CKからの攻撃が途切れた(キッカー岩渕のアウトスイングのクロスが手前でゴールライン割る)事で後半の飲水タイムが挟まれ小休止。
しかしブレイク明けもその流れは継続。
福島は、バックパスからのGK吉丸のフィードがミスとなりCKにしてしまったり(25分)、パスワークからの高安のボールキープに対し清水が反則・警告を貰ったり(26分)と守備面で焦りが目立ち始め。
これによるFKの前にベンチも2枚替え(大関・澤上→吉永・矢島)、あえてセットプレー守備の際に代えた事で、気を引き締め直すのを狙ったでしょうか。
それが奏功したか、このFKを凌ぐとカウンターに持ち込むのに成功し、敵陣深め左サイドへ運び。
スピードダウンの末に戻して作り直したものの、落ち着きを取り戻し。
続く30分にも琉球の攻撃を遮断してのカウンターを展開、今度もスピードダウンしたものの、ボールキープする塩浜が岡澤に反則を受けた事でFKと時間を進め。
逆に琉球はここでのFK守備の際、上原が味方の岩渕との交錯により足を痛めた事で、交代を余儀なくされてしまいます。
投入されたのは平松で、以降彼を使う事で左右広く使う攻撃を展開する琉球。
最終ラインから一度平松に預け、カットインからのパスやサイドチェンジを駆使する事で、左の高安にスペースを齎します。
これにより再度専守の姿勢を強いられる福島、36分には細かなパスワークによる中央での前進を経て、左ハーフレーンから上がった高安のクロスが中央の庵原へ。
そのヘッドは合わせられずも、ディフェンスに当たり足下に落ちた所をすかさずシュートした庵原、これが左ゴールポストを直撃して跳ね返り。
福島サイドはそのこぼれ球の行方に意表を突かれた感があり、動けなかっただけに完全に助かったという場面でした。
その後も40分に、高木の左→右へのサイドチェンジを経てチャンスボールがエリア内の庵原に。
そして庵原シュート→ブロックされるも平松拾う→※岡澤ミドルシュート(ブロック)と連撃。
一方的に攻め立てる琉球、そして42分にとうとうそれが実り。
例によって左から高安がクロス、福島はクリアするも小さく左ポケットで岩渕が拾い、そのままシュート。
これが前に居た藤春に当たって跳ね返るも、逆に絶妙のアシストとなりダイレクトで放たれた岡澤のミドルシュートがゴール左へと突き刺さります。
終盤に1点差に詰め寄り、まだ判らないというムードを高める琉球。
しかしこれにより福島は再度動き、塩浜→大森へと交代。
最終ライン(右センターバック)に入った大森により5バックへシフト(3-3-2-2)と、スペースを埋めに掛かります。
それでもパターンは大きく変わらず、高安を軸としたクロス中心の怒涛の攻撃を見せる琉球。
福島は最早、ロングボールを矢島に収めさせて一息つく事のみとなる攻撃。
それも、その矢島がハンドを犯してしまうなどで満足いくものでは無く。
しかしアディショナルタイムに突入、その後も着実に進んでいく時計に琉球は焦りも隠せない状態に。
左から高木がロングスローを投げ入れ、何とかもう1点奪いにいきましたが、その跳ね返りが惨事を招きます。
クリアされた所を繋がんとした佐藤ですが、前に出て先にボールに触れた吉永を蹴ってしまう形となって反則の笛が鳴り響き。
そしてこの日2度目の警告を受けてしまい、退場処分を余儀なくされます。
それでも残り時間が殆ど無い状況故に、異議もそこそこにチームのために直ぐさまピッチを去る佐藤。
これにより目安時間が1分伸びたものの、その影響は殆ど無く、文字通り退場劇が終了の合図となる事に。
福島は、以降無事に矢島のポストワークを利用して左サイド奥へ持ち込み、反則も受けた事で悠々時間稼ぎモードに突入。
そしてそこから脱出を果たせない琉球、再度左奥へボールが持ち込まれた所で試合終了の笛が鳴り響きました。
本来の攻撃サッカーとは言い難い、難しい試合を制した福島。
奥深さを発揮し2位に勝ち点2差と迫った事で、昇格争いに名乗りといくでしょうか。
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