<両軍スタメン>
- 高知ホームだが、↓とは逆のコートで前半スタート。
入れ替え戦、それは下位カテゴリにとっては希望の一筋。
反対に上位カテゴリにとってはまさに崖っぷちであり、それが「Jリーグからの退会」を余儀なくされる場では尚更の事。
今季のJ3は岩手がぶっちぎりの最下位と、強烈なイメージを残してJFLへの降格が既に決定。
しかしそれはあくまで自動降格、それもJクラブとしてのアイデンティティを失いかけた者の末路的な転落劇。
もう一つの降格、即ち入れ替え戦への出場枠を巡っては激しい戦いが行われ、魔の手から逃れんという尻に火が付いた状態での争い。
一時的に19位以下を経験した宮崎・奈良が、その状態から這い上がり死線から回避に成功。
彼らの押し上げを受けた格好で、徐々に転落を強いられた長野も18位で踏み止まり。
長野を除いては集客力もリーグ下位に留まっており、もしJFL降格とあれば岩手のように成績のみでは浮上出来ない、別の戦いを強いられる事になったので残留決定の意味合いは大きく。
そんな中、その危機を回避できず19位が決定したのがYS横浜。
平均の観客動員数も下から3番目と、意地でも落ちたくない瀬戸際であり。
やっているサッカーとしては、ボール保持の追求というブレない理想があるものの、メンバーによってその精度は日によってまちまちといったのが今季の印象。(自分が観たのは2試合のみですが)
特に後半戦は2勝のみと、総合力で劣る保持型のクラブに対する、シーズンが進むにつれて襲い掛かる逆風を浴びる(J1では新潟か)典型例になってしまったでしょうか。
大量失点も多く、相手の強度が高ければ全く成り立たなくなる状態ですが、当然ながらこの試合の相手は下位カテゴリのクラブ。
立場的優位を意識しながら、冷静に試合を進める事が残留へのカギとなりそうです。
その下位カテゴリから出場するのは、JFL2位の高知。
前年の天皇杯(川崎戦、0-1)で拝見する機会があり、その頃に内部的に一悶着あった事で、逆に地元の熱が盛り上がりを見せたでしょうか。
今季ようやくJ3ライセンスの取得に成功、厳しい集客条件もクリアし、後は昇格へ向けたレールを走るのみとなり。
しかし終盤成績面で落ち込んでしまい、2位でシーズンを終えた事で入れ替え戦に回り。
そしてこの試合が文字通り最後の関門となりましたが、ホームスタジアム(春野総合運動公園陸上競技場)は予定で埋まっていて使用不可能との事で、急遽讃岐のホーム・Pikaraスタジアムを借用して臨みました。
ともに全力でのぶつかり合い、と見せかけYS横浜の方はスタメン選択で搦め手を混ぜ。
ウイングバックの立ち位置を左右逆にして、右に橋本・左に冨士田という逆脚での配置を敢行しました。
お互い慎重な入り、つまり浮き球の蹴り合いで時間が進んでいき。
中々やりたい事が発揮されないという立ち上がりななか、前半5分に中里のロングパスが東家にブロックされるも、こぼれ球を拾った事で前に運ぶ余地が生まれたYS横浜。
左→中央→右へとサイドを変えての前進を経て、奥を取った菊谷の戻しを受ける形から橋本陸がクロス。
これにより利き足で上げられたそのボールは、大外から入り込んだ冨士田の頭にドンピシャとなり、放たれたヘディングシュートがゴールを揺らします。
早速配置を弄った成果が、ものの見事に表れる格好で先制点に辿り着きました。
後が無い試合故に、オニエ・オゴチュクウやルクマン・ハキムといった「謎の助っ人」的な選手は揃ってメンバー外に。
確実に自分達のサッカーを体現できるメンバーを選択したという印象のYS横浜。
その通りに、リードを奪ってからは本来のボール保持の色を高め。
左WBの冨士田を前に押し出し、その間に選手が降りるというビルドアップの基本形を取り始めます。
一方高知はその体制に面食らったか、攻撃時でもポジションを上げられず。
前に出る相手の冨士田を見た影響か、対面である吉田の位置が非常に低く、とてもWBを前に押し出したうえでの前進が出来る雰囲気が生まれないといった立ち上がりの印象。
しかし次第にその吉田をサイドバックと見立てた、「上月を前に上げ、攻撃時は4バックでの繋ぎ」での形がスムーズにとれるようになると攻撃は良化。
前年の川崎戦でのカウンター一辺倒での戦いとは打って変わって、追い掛ける立場故にボール保持に活路を見出しながら反撃に掛かります。
序盤は、吉田に代わって右ワイドの位置を取る東家を中心とした運び。
ロングボールによる攻撃も、内田をターゲットとしつつシャドーが前に出るというのが基本線で、必然的にボールを触れる機会が多くなる東家。
それでも、クロスの跳ね返りを拾ってのミドルシュートというパターンに限定されるフィニッシュで、クオリティで劣るためさして有効打とは成り得ずに時間が経過。
流れを変える要因はYS横浜に対するハイプレスで、これにより立場的上位を発揮すべき局面での、ボール保持に乱れが生じるYS横浜。
26分にパスミスを誘発させ東家がボール回収、しかし宇田がコントロールを誤り好機とはいかず。
28分には、中里がコントロールミスした結果あろう事かエリア内で奪われる事態となり、奪った東家がグラウンダーでクロスを送るもフィニッシュは生まれず。
ペースを奪いに掛かった高知も、決定的なショートカウンターに結び付けられずとやきもきする流れに。
しかしここで襲い掛かったのが、前目に位置取る上月の突破力。
31分に最終ラインからロングパスを受けるとワイドからカットイン、ハーフレーンからゴールに向かうクロスを送った(跳ね返りを宇田がエリア内へ送り返すも撃てず)のが号砲となり。
続く33分には最終ラインでの保持の中、佐々木と入れ替わる形で前に上がる上月、そしてそこに小林大から送られる対角線のロングパス。
受けた上月は例によってのカットインを経て中央から仕掛け、ドリブルでは無く内田とのワンツーでエリア内へ切込むと、そのままディフェンスを受けながらシュートに持ち込み。
これが大嶋のブロックを掠めてゴールへと転がり、見事な主体的な崩しによる得点で同点に追い付きました。
これで試合としては面白くなりましたが、危機が膨らむYS横浜にとってはそうはいかず。
ひたすら可変する左サイド中心での保持を続け、隙を伺うと同時に、相手に攻撃権を渡さないといった思惑が浮かぶような立ち回りに。
奥村と萱沼がそれぞれ降りる事で安定性を高めるものの、ゴールへの意識は薄れるといった客観的印象にも映り。
結局前半はこれ以上のシュートシーンは生まれず、1-1で折り返し。
まだ2戦目が控えているという、緊迫感に包まれた戦いは後半も続く事となりました。
その後半、YS横浜は両WBを入れ替え、本来の冨士田=右・橋本陸=左という位置に。
その姿は、奇策を手仕舞うといった表現が相応しく映ったでしょうか。
前半よりも前線の積極性は高まりましたが、YS横浜の方は、それにより脇坂の反則が繰り返されるという具合にやや空回り。
一方の高知は後半3分、上月が降りて受けたのち裏へロングパスという役割変更的な攻撃。
意表を突かれた?YS横浜のクリアが小さくなった所を、すかさず内田がダイレクトでミドルシュートを放ちましたが枠を捉えられず。
今度は高知の方が、奇策とは言わないまでも意識を変えるような立ち回りを繰り広げた感があり。
それに伴い、下がり目だった吉田も徐々に基本位置が上がり攻めに加わるようになります。
YS横浜は両ワイドの選手を変えたものの、システム的には左WBが前に出るというのは変わらず。
その役が左利きの橋本陸となった影響もあり、前進がスムーズに行われ。
10分には中里ミドルパス→萱沼フリックという前進法から、人数を掛けて繋ぐ姿勢から奥村がカットインからポケットへパス。
脇坂のポストプレイを経てそのまま角度の小さい所からシュートを狙いましたが、GK大杉にセーブされ実りません。
しかしその中で、アンカーの小島が足を痛めてしまう事案が発生。
足を気にする仕草をしながら、気丈にプレーを続けたものの、17分に高知が左サイドでのパスワークからポケットを突く攻撃(佐々木がクロス)ののちとうとう限界に。
倒れ込むと交代措置が取られ、自力でピッチを後にしたのち土館が同ポジションで投入されました。
その後も左サイドで押し込むYS横浜ですが、瀬戸際の状況では中々流動性が生まれず。
フィニッシュも21分の脇坂のシュート(ゴール右へ外れる)のみに推移すると、今度は高知のターンに。
24分に中盤右サイドで吉田がボール奪取してから、速攻を仕掛けてスルーパスに走り込んだ東家がクロス。
これを内田がヘディングで合わせるも、同じく跳んだ冨士田のブロックに阻まれ、こちらも少ないフィニッシュをモノに出来ません。
いつの間にか、ボール保持を駆使して攻め上がるのは高知の方へと移り変わり、両WBも高い位置で攻撃に絡む状態に。
それ故に怖いのはカウンター……という所で、27分に田辺がトラップミスで奪われ、そのまま萱沼が中央を持ち運ぶ危機に。
ここは戻った田辺が反則気味に萱沼を止め(笛は鳴らず)、何とか自作自演的に防ぎます。
1ミスが致命傷になりかねない重大な一戦らしい……と書けば良い試合に映りますが、それにしては火力不足やパスのズレ、コントロールミスも時間が経つにつれて目立ち。
30分が過ぎた所で、両ベンチが同時に動き。(31分)
YS横浜は3枚替えと大きく動き、橋本陸・菊谷・脇坂→松村・藤島・ピーダーセン世隠へと交代。
一方最初の交代である高知は、東家→小林心へ交代の1人のみ。
この使い方からしても、YS横浜の方が上手くいっていない試合内容なのが頷けるものに。
冨士田がスタートの位置である左へと再度回り、相変わらずその左中心の攻めは止めないYS横浜。
藤島の推進力も加え、何とか勝ち越し点を狙いにいくも成果は上がらず。
一方の高知、34分に左→右へと対角線のパスが小林心に渡り、ポケット奥へ切り込んだ事で持ち込んだ右コーナーキック。
キッカー高野の中央に上げたクロスから、中田が放ったヘディングシュートは大嶋にブロックされるも、跳ね返りを宇田がボレーで合わせ追撃。
しかしGK後東のセーブに阻まれ、折角持ち込んだ連撃でも勝ち越し点を掴めず終わり。
38分に高知は内田→樋口へと交代。(小林心の1トップに)
高知サイドも疲労が隠せなくなってくる時間帯ですが、依然として優勢を保っている事で、YS横浜の方が深刻に。
可変しながらのパスワークでの攻撃、そこからのトランジションや被決定機を強いられた事で、目に見えてキツくなってくる終盤戦。
40分に自陣深めからのスローインという所で、スロワーを務めた中里が倒れ込む(原因は不明)など、何気無い場面でもダメージを隠せない状況となります。
その後、止む無く右サイドへの攻め、それもフレッシュな松村の推進に賭けるという体制へと切り替え。
44分に痛んだ中里も交代させる(藤原)など手を打ち。
しかし流れを変えるには至らず、もう一人フレッシュな攻め手のピーダーセンも機能したとはいえず。
ポジショニングが拙くオフサイドを取られる(アディショナルタイム、左スローイン→萱沼フリックで最初からオフサイドの位置に)など、途中出場の役割を果たせずに終わりました。
勢いを失った相手から、何とか1点取りたい高知。
43分にYS横浜のCKからカウンターに持ち込まんとした所で、吉田がドリブルを止めて保持へと切り替え。
そこからパスワークを経て、小林心が中央からミドルシュートと形にしたものの、GK後東がキャッチ。
YS横浜よりは効果的な攻めは貫けましたが、それでも相手の装甲を破るまでには至らず終わり。
そして試合終了の時を迎え、1-1で引き分けに。
第2戦はどちらとも1点が欲しい状況となりましたが、それでもこの日のような緊迫感が充満した雰囲気の中での試合になるのは疑いようは無く。
その中で、どう相手の守備を上回る事が出来るか。