※前回の山形の記事はこちら(38節・千葉戦、4-0)
※前回の岡山の記事はこちら(38節・鹿児島戦、0-0)
<山形スタメン> ※()内は前試合のスタメン
- ベンチメンバーを後藤優介→氣田へと変更。
<岡山スタメン>
- ベンチメンバーは高木・輪笠・太田を外し、鈴木をスタメン起用し田中・柳貴を入れる。
- 負傷離脱により母国で治療中のグレイソンが来日、チームに合流。(ただし復帰はまだ先)
長崎vs仙台の方でも3週間のブレイクが齎す影響について軽く触れたものの、それが深刻となりそうなのが4位の山形。
怒涛の9連勝でリーグ戦を終え、初戦をホームで開催and引き分けでも勝ち抜ける権利を勝ち取ったものの、それが勝利を約束されるものでは無いのがプレーオフの辛い所であり。
リーグ戦の勢いはあくまで副次的なもので、このPOで仕切り直しを強いられる点。
そして長いブレイク期間により、勢いを持ち込む事が至難の業となってしまう点で、難しいマネジメントを要求される試合となりました。
対する岡山は、このPOの舞台で2年ぶりの山形との対戦。
その時は岡山3位・山形6位という逆の立場で、かつ敗退(0-3)という屈辱を味わい。
2年前と同様に木山隆之監督が率いるため、雪辱に向けて執念を表すべき一戦となり。
定番である、ラフなロングボールの蹴り合いで幕を開けた前半。
しかし前半3分、岡山は末吉を走らせる裏へのボールがカットされるも、すかさずゲーゲンプレスを掛けて岩渕が奪い返し。
そしてコーナーキックに持ち込む、山形に対する圧力という形で早速その思いを表します。
このCKでの攻めが形にならず、山形のゴールキックから再開した事で、普段通り地上での繋ぎへと入る山形。
しかし左サイドへ誘導して山田拓にロングボールを蹴らせる(収めたディサロが戻りオフサイド)という具合にプレスを機能させる岡山。
直後の6分も、同じく山田拓が詰まらされて本山がボール奪取するなど、この山形左サイドを獲り所としていたかのように立ち回ります。
それを受けるや山形は、8分には小西を左へ降ろした上で、山田拓に思いきり高い位置を取らせてそこにロングボールを送るビルドアップへ変節。
しかしそれを防いだ岡山、逆に山田拓の上がった隙を突いて木村がドリブルに持ち込む所、高江が反則で止めるという具合に上回りを見せ。
思い通りの前進が出来ない状況に陥る山形。
1トップ・2シャドーによる岡山のボランチへの限定(一美がボランチの片側に付き、後の2人が背中を消しながら最終ラインにプレス)により、小西・高江を経由しての繋ぎが果たせないのが主たる要因であり。
一方、まず主導権を握った岡山ですが、11分に自陣での繋ぎで田上の蹴り出しが藤田息に当たって跳ね返るというミス。
これを拾われて山形の好機になり、細かな繋ぎを経て高江の下に渡り、右サイドのイサカへロングパス。(イサカが収められず終了)
相手のミスという形ながら、ボランチを使ったチャンスメイクを果たして一息ついた山形。
ここから攻撃権を握るも、依然として激しい岡山のプレスに対し、縦に速い運びに活路を見出し。
16分最終ラインから安部が低いロングパスをディサロに通すと、素早く体勢を整えてのアーリークロスを選択するディサロ。(ブロックされCKに)
裏を突かんとする姿勢を見せますが、ストライカーのディサロがチャンスボールを送る役を務めるその光景に、あまりリズムが良くないと実感するにも至ります。
20分を過ぎると、その予感通りに岡山へと傾く試合展開。
岡山が主体的な攻撃に入るも、前線の守備同様に山田拓の居る右サイドを狙い撃ちしての前進を続け。
最終ラインから右サイドへ展開→阿部が高い位置を取って本山との2人で崩しを図るという姿勢を徹底。
23分にはそこから上げられた本山のクロスから、木村がヘディングシュートを放ちましたがGK後藤雅がファインセーブ。
守勢に陥る事となった山形は、依然としてボランチのマークが厳しい状況で、土居がその後ろまで降りてパスを受ける体勢を取り始め。
あくまで攻撃を循環させる事で流れを変えんとしますが、徒労に終わる事となり。
結局ロングボールでのプレス回避を強いられ、それを回収する岡山の攻撃機会が続くという展開を変えられません。
30分、その山形のラフなロビングを藤田息の落としから速攻に入り、左ポケットへのスルーパスに走り込んだ末吉のマイナスのクロス。
これをニアで受けた田部井がシュート(城和がブロック)と、次々にゴールに近い位置で放たれるフィニッシュ。
その直後左スローインで再開すると、投げ入れられたボールを岩渕が直接エリア内へ浮き球を送り、中央で収めた一美から右ポケットへ展開。
受けた本山が奥から放ったシュートが、GK後藤雅の左(本人から見て右)を破って左サイドネットに突き刺さります。
優勢な中しっかりと挙げた先制点で、試合の流れを改めて実感出来たでしょうか。
尚も33分、ロングパスの跳ね返りを繋いでの攻めで一美が中央からミドルシュート、安部がブロックするもエリア内にこぼれた所を末吉が拾い。
そして左ポケット奥でのクロスがブロックされて左CKと、押し込みを継続。
キッカー田部井のファーへのクロスを一美が落とすと、さらに阿部がレイオフで繋いだ末に木村のシュートが放たれ。
これがブロックの間を縫ってゴール右へと突き刺さり……と見せかけ、実際は岩渕に当たってコースが変わる形となっており、GK後藤雅も動けずというゴールに。
短時間で2点を奪い、一気に勝利へのムードを高める事に成功した岡山。
反対に苦しくなった山形。
点差は元より、依然としてビルドアップが機能しないため追い掛けるムードは一向に高まらず。
37分には再び左サイドで詰まり、奪った木村がそのままドリブルからミドルシュート(GK後藤雅キャッチ)とゴールを脅かされるなど、流れは変わりません。
悪循環を抱えつつも、後方からのミドルパスを交えながら何とか好機を作らんとし。
しかしそれが拙かったでしょうか、今度はアクシデントという災難が降りかかります。
40分、こぼれ球を拾ったディサロが阿部のチャージを受けて倒れ込んでしまうと、反撃したい焦りからか痛んだまま足を引きずりながら続行。
これで得たフリーキックでの攻撃で、再三行われる放り込みを他所に、中央でヨロヨロとした動きを余儀なくされるディサロ。
そして結局、攻撃が途切れたのち再度倒れ込み続行不能の運びとなってしまいました。
ジョーカーの高橋潤を、この早い段階で投入せざるを得なくなり。
尚も不運は続く山形、44分には田上のロングパスを頭部に当ててしまったイサカが倒れ込み。
ここも起き上がり暫くは無事にプレーを続けたものの、結局は脳震盪の断が下され、ハーフタイムで交代する事に。
前線の主軸2人を失うなかで、2点取らなければいけない状況に。
サッカーに話を戻すと、アディショナルタイムの最終盤にCKからの二次攻撃で、クロスのこぼれ球を拾った小西がエリア内からシュート。(ブロック)
前半の数少ないシュート(2本)を最後に放ったものの、当然それだけでは暗雲を振り払えず。
0-2のまま前半終了、HTへと入りました。
イサカが交代の運びとなり、終盤出番の無かった氣田を投入と、普段と異なるサッカーを余儀なくされる事となった後半戦。
同時に山田→岡本へ交代と、2枚替えを敢行する形で巻き直しを図る渡邉晋監督。
迎えた後半。
久々にチームに加わった氣田にボールを集め突破を図らせる事で、彼を文字通りチームに組み込む作業から始める山形。
後方からの組み立ても、依然としてボランチへのチェックが厳しい中、安部の縦パス・ロングパスでそこを省略する場面を目立たせ。
苦境のなか何とかしようという腹積もりが見え隠れする入りに。
しかし岡山の前線の勢いは衰えず。
後半4分に山形最終ラインからボール奪取した木村、そのまま城和に引っかかる形で倒れ反則。
これで得たFK、(田部井の)蹴り出しから(田上が)シュートを放つという変化を付ける(山形ディフェンスが素早く前に出て撃たせず)など、山形の後方に苛立ちを与えながらノーリスクで追加点を狙いにいかんとする立ち回り。
山形サイドは、主に木村のチェイシングに手を焼くとともに、フラストレーションを溜める事を余儀なくされていたでしょうか。
それが爆発する格好で、8分に右サイドから運ばんとした所、川井のドリブルがプレスバックした木村に倒されて反則。
そしてその際倒れながら、川井は脚で木村の背面を蹴る蛮行に出てしまった事で岡山サイドがヒートアップし騒然となります。
第4の審判に近い位置なのもあり見逃される事は無く、落ち着いたのちあえなく赤いカードが突き出されて退場処分となった川井。(木村の方には警告)
ピッチサイドでは渡邉監督が執拗に意義を飛ばすものの、当然判定は覆りません。
これで盤石となったかに見えた岡山ですが、こちらも6分に岩渕が足を痛めて交代の運びとなっており(神谷を投入)、一発勝負である以上いくら数的優位といえど油断は許されず。
さらに15分には一美が城和のチャージを受けて負傷交代(ルカオを投入)と、アクシデントが降り注ぐ流れは岡山サイドにも容赦無く襲い。
一方10人でビハインドを跳ね返さなければいけなくなった山形。
最終ラインは、岡本が川井の抜けた右サイドバックに回り、左には左利きの小西が入り。
しかしあくまでボランチが本職であるその意識は、攻撃時にその位置へと可変し、SBが誰も居なくなるという絵面に表れました。
あくまで高江・小西・土居の3人が中央を務める姿勢で、かつ基本布陣からの可変という要素を交える事で変化が付けられ。
これには数的優位となっても尚ハイプレスで挑む岡山も予想外だったらしく、巧みなポジションチェンジと間を通すパスで前進を許す場面が増え始め。
19分、中盤3人を経由してアタッキングサードへ運ぶと、右から氣田がカットインで中央まで流れ。
そしてミドルシュートを放ち、本山がブロックした跳ね返りをさらに岡本がミドルシュート(田上がブロック)と連撃に持ち込み。
しかし岡山サイドも、エリア内以上の侵入を許さないという守備姿勢の下、リーグ屈指の守備力を発揮するため完全な崩しには至りません。
それでも21分、安部の縦パスが遮断された事で、岡山サイドが高目のラインを保つ隙を突いてこぼれ球を繋いだのち裏へ送られる(高江の)ミドルパス。
これを高橋潤がエリア内で受ける絶好機が生まれましたが、撃つ前に鈴木のディフェンスに阻まれ、ゴール方向へこぼれたボールをGKブローダーセンが何とか掻き出し。
貫かれる前へ向かう意識故に、こうした隙が出来る局面はあったものの、そこでも守護神が最後の壁として立ちはだかります。
24分に山形は國分→坂本亘へと交代。
すると岡山も25分に田部井→竹内へ交代と、両軍のベンチワークが交わり。
イサカの脳震盪での交代のため、この時点で3回交代した岡山も、追加の交代枠を得て後1度を残し。
ハイプレスのみならず、攻撃時も依然として左右のセンターバックが前線に絡むという具合に積極性は健在の岡山。
それ故に山形の攻撃を浴びながら、自身もアタッキングサードを突いてサイドからクロス、という通常時の攻めの姿勢は崩しません。
お互い好機を作るも、フィニッシュは生まれないという流れを描いたのち、山形サイドが最後の交代を敢行したのが34分。
高江・土居→南秀・加藤へ2枚替えと、走り回っていた中盤センターの2人を代えるに至り。
これを機に、岡山も戦術を切り替え、神谷を中心としたボール保持の姿勢に入り。
何度もパスを上下動させて時間を使う、試合終盤かつ数的優位の戦いの定型へと突入する運びとなりました。
これで一転し、自身がハイプレスで攻撃権を奪わなければならなくなった山形。
その隙を突くように、38分に裏へのミドルパスを受けたルカオが右ポケットへ切り込み、カットインを経てシュート(安部がブロック)と再度フィニッシュの余地が生まれ始めます。
そして39分、最終ラインでのパス交換で山形のハイプレスを誘ったのち、神谷のレイオフを経て藤田息ドリブルに持ち込みスルーパス。
エリア内で受けた木村がGKと一対一という、前掛かりな相手の裏を取る典型例による決定機が齎され。
木村は後藤雅を左にかわし、抜ききった末に左ポケット奥からシュート。
ゴール前で小西がブロックするも、弾かれたボールは無情にもゴールに入る事となります。
これで3点差と、2年前と同じスコアに持ち込む事にも成功した岡山。
この直後に、岡山は補充された交代枠を使いベンチワークも終了。
鈴木→柳貴へと交代し、本山が左CBに入るという変更を交え、最終布陣となりました。
そして時間も進み、ATへ突入。
山形も、放り込みに賭けるという手段は取らず、リトリートに徹するようになった岡山に対しあくまで地上での繋ぎをメインに。
右から氣田がカットインも逆サイドへ→左から坂本亘がカットインと、両翼が何とかシュートコースを探すという絵図の末に、坂本亘がミドルシュート。(GKブローダーセンキャッチ)
岡山は既にエリア内を崩さなければ良い守備姿勢で、只でさえ1点の重みが重要な一発勝負で、3点差という重量感を痛感するような場面に映りました。
結局そのまま試合終了。
岡山が見事に2年前のリベンジを果たし、決勝進出。
これで岡山vs仙台というカードに決まった決勝戦。
一応仙台のJ1復帰といった要素はあれど、前年(ヴェルディvs清水)に比べ遥かに「何としても昇格しなければ……」という悲壮感は薄れたような印象に。
それでもこの試合の岡山のような徹底した相手対策が貫かれる事で、その色に染め上げられるなんて事が起こらないとも限らず。
長かった今季も、どういった結末で彩られるでしょうか。