※前回の甲府の記事はこちら(33節・山形戦、1-2)
※前回の水戸の記事はこちら(36節・いわき戦、2-1)
<甲府スタメン> ※()内は前節のスタメン
- 前節(秋田戦、1-2)出場停止だった林田・佐藤・マンシャの3名がスタメンに復帰。
- 関口が累積警告により出場停止。
- 負傷離脱していたGK河田が36節(山口戦、0-2)で復帰し、前節からスタメン出場。
- 35節(千葉戦、1-2)で負傷交代したヘナト・アウグストは以降ベンチ外。
<水戸スタメン>
- GK本間が前節(山形戦、1-3)スタメン、ならびに引退セレモニーが開かれる。そして今節もベンチ入りを続ける。
- 36節で負傷交代した久保、ならびに前節負傷交代した前田はともに以降ベンチ外。
前節のホーム最終戦で、偉大なる存在のGK本間の引退試合を敢行した水戸。
今季は森直樹氏が新監督の座に就いた14節(熊本戦、2-0)以降、精神的支柱(というよりは、監督の気心知れた存在としてか?)のように殆どの試合でベンチ入り。
外野からすればまだ出来る・必要だという思いが錯誤する状況に映るものの、本間本人が会見の場で話していた「シュートストップ能力の衰え」と、現場並びに本人にしか解らない要因とあれば納得する他無く。
かくしてセレモニーが行われたのちの今節も、アウェイである甲府の地に帯同しベンチ入りと、最後まで選手としての役目を全うする運びとなりました。
その甲府は、劇的な天皇杯優勝(2022年)・J2クラブとしてACLグループリーグ突破(2023年)と、華々しい戦績から一転した今シーズンの歩み。
背筋が凍るような低迷に今後が不安視されるものの、ホーム最終戦とあっては、それを吹き飛ばすような試合を演じるのは不可欠であり。
水戸に本間が居るように、甲府にも山本英臣が居る(この日はベンチ外ですが)……と無理矢理結び付けるのはナンセンスですが、苦しい時に精神面で頼りにしたい大ベテランの存在。
ロングボールの応酬というのが試合の入りの定番で、水戸がその手法により押し込みに成功する、この試合も例に漏れずとなり。
しかし前半3分に左から大崎のロングスロー、このセカンドボールを甲府が拾った事で展開されるカウンター。
三平がボールキープでゲーゲンプレスをいなして縦パスを送ると、上がっていた村上を中継役とし、スルーパスでさらに前線のアダイウトンに。
これにて一気にGKと一対一というビッグチャンスが訪れますが、エリア内へ切り込み放たれたアダイウトンのシュート、股抜きを狙ったもののGK松原が脚を閉めてこれをセーブ。
前節を経て、本間の精神と能力が乗り移ったかのようにいきなりビッグセーブを見せます。
しかしその松原のセーブも報われるとは限らないのがサッカーの常で、尚も右コーナーキックから攻める甲府。
キッカー佐藤のクロスをマンシャが合わせにいくという絵図で、手前でクリアに入った牛澤がボールを右腕に当ててしまい。
肘を振っていた事でハンド(ないしはその肘によるマンシャの頭部へのチャージ?)ならびにPKを取られ、フイにする格好となってしまいます。
このPK、キッカーを務めたのはアダイウトンで、緩急をつけた助走を経てゴール右へ強く蹴り込み。
これにもGK松原は反応して触れるも、勢いが勝りゴールネットを揺らすボール。
いきなりの決定機逸も何のその、という先制点を挙げました。
再度のキックオフとなった水戸、大崎のロングパスで右奥へと運んで好機に繋げ、CKへ持ち込んで気を取り直し。
早期の失点であり、引き摺らないのが何より重要となり。
そして追う者に相応しく、ボール保持による攻撃の色を強めていく立ち回り。
3バックの左右が大きく開き、ボランチの片割れ(主に山﨑)がその間に降りるという最終ラインの可変、即ち「ミシャ式」によるビルドアップ。
対する甲府の前線はリードした事もあり、三平がアンカー(主に櫻井)を切る立ち位置を取っての様子見。
無理なハイプレスにはいかず、櫻井を経由させない事でサイドでの前進を強要させるのが主たる姿勢となりました。
しかしそれを見た水戸は、ドイスボランチが横並びとなるオーソドックスな体勢での繋ぎを混ぜ合わせ、三平の監視を無効化させつつ中央経由で運び。
14分に大崎から左で前進する姿勢と見せかけ、櫻井へ通したのち逆の右へ展開しての前進、山本隼が持ち運んで右ハーフレーンからミドルシュート。(GK河田キャッチ)
一方甲府の攻撃も保持の姿勢を見せ、こちらはボランチが降りる事の無いほぼオーソドックスな形での繋ぎ。
一応、アダイウトンが左ワイドに張るという可変はあれど、追い掛けるためある程度ハイプレスに出る必要のある水戸にとっては対処し易く映ったでしょうか。
佐藤に対して同じボランチがプレッシャーを掛ける事で、容易なボランチ経由での前進を許さず。
こうして水戸優勢の流れが出来上がると、23分に再び横並びとなるドイスボランチを根底としての攻めで、しかし今度は新井を活かした左ワイドでの前進。
カットインから山本隼への縦パスは遮断されるも、こぼれ球を拾った甲府に対しゲーゲンプレスを掛け、三平から奪取した櫻井がその勢いのまま倒されて反則。
これで左ワイドからのフリーキックを得た水戸は、キッカー櫻井はエリア内中央へインスイングのクロス。
クリアするにしても後ろを向いてのそれは難度が高く、GKに任せればその前で触られる可能性が出てしまい、誰も触れなければそのままゴールという絶妙なキックになり。
そして甲府ディフェンスは最初の選択肢を選んだ結果、井上のクリアがゴールに向かうものとなり、これをGK河田が弾くも尚もゴール方向へ転がるボール。
そこに選手が殺到し、いち早く詰めた山田が押し込みに成功してゴールに突き刺さります。
自身のペースをしっかり得点に繋げた水戸により、試合は振り出しに。
一方の甲府、この乱戦で井上が足を痛めてしまう事態が発生するも、何とか継続の運びに。
ここから前線は微調整したようで、水戸のドイスボランチの横並びに対しては、鳥海が付く事で三平との2人で対応する姿勢へと移行します。
しかし得点により勢いづく水戸の攻勢を止めるのは難しく、さらに対策への対策として、純粋なサイドでの運びの色を強めて好機を作り続ける水戸。
結局浅い位置での遮断は諦める甲府、リトリートからアダイウトンを活かしたカウンターの姿勢を取る事でプレッシャーを与えに掛かり。
29分には草野のミドルシュートをキャッチしたGK河田、そのまま素早くスローし、中山を経由してアダイウトンに繋げ。
そのアダイウトンは期待通りにドリブル突破で水戸の最終ラインを壊しに掛かるも、ここは牛澤が何とかボール奪取して防がれます。
その後も水戸がボール保持による攻めでひたすら押し込み、敵陣ではロングスローを駆使しつつボックス内を突き。
しかしカウンターの恐怖を植え付けた事で、42分に甲府がロングボールで左スローインに持ち込むと、ラインアウトしたボールを山﨑がさらに外へ蹴り出した事で遅延行為で警告を受け。
ボールサイドに居たアダイウトンを気にしての蛮行となり、一見守勢に映る甲府の姿勢の効果は出ていたようでした。
結局1-1のまま前半終了。
ボールを握り、好機の面でも大きく上回っていた水戸。
その一方で、リアルストライカーの色が強い中島はパスワークの輪に加わらず、中央に張る事を貫いていたため殆どボールに触れられず。
相手にプレッシャーを与えるのに不可欠なその姿勢も、ボールに関与しない事によるフラストレーションとの戦いを強いられるという具合に、ストライカーは孤独である……なんて事を考えてしまい。
一方の甲府、足を痛めていた井上を大事を取って退かせ、宮崎を投入。
彼を右ウイングバックに入れ、村上を最終ラインに下げるという弥縫策を採り後半に臨みました。
しかしその村上も元はFWの選手であり、どれだけやれるかは未知数。
確実に弱点を隠すには攻める他無いという、判り易い姿勢を取ったでしょうか。
そしてそれが功を奏し、後半2分に最終ラインから組み立てを図り、マンシャがアダイウトンへ縦パスを通して前進開始。
アダイウトンの脅威で水戸の意識を左ワイドへ偏らせると、一転して中央へ展開しての崩しを図り、鳥海が持ち運んでエリア内へラストパス。
すると既に中央ボックス内へ先回りしていたアダイウトンがポストプレイ、水戸ディフェンスを引き付けた末に鳥海がダイレクトでシュート。
流れるように放たれたこのフィニッシュがゴール左へと突き刺さり、前半の劣勢を振り払うような勝ち越し点が齎されました。
これで前半と同じく、後半もビハインドからのスタートとなってしまった水戸。
これも前半同様に直ぐさま気を取り直し、ボール保持による攻勢に入り。
5分、純粋な左サイドでの前進で、縦パスに入れ替わった新井が奥へ切り込んでのカットイン。
ポケットでディフェンスを引き付けて入れられたクロスが、ファーで完全フリーの長澤へと送られましたが、若干マイナス方向へ流れたため長澤は(ボレーで)合わせるのが精一杯となってしまい枠外に。
非常に痛い逃し方をした水戸、やはりその後に待ち受けていたのは被決定機。
水戸の攻勢を切った甲府は、8分に左スローインから左奥~ポケットでの繋ぎで、一度はカットされるも荒木が奪い返し。
そしてラインを上げたディフェンスの裏を取った鳥海が、中山のミドルパスをボックス内で1トラップからボレーシュート。
GK松原が身体でこれをセーブと、またも守護神に救われた格好となりましたが、この後の左CKでやられてしまうのも前半の再現になってしまい。
クロスの跳ね返りを繋ぐ甲府、再度キッカー佐藤の下に戻ってくると、上げられたクロスは中央のマンシャへピンポイントに合うボールに。
完璧なヘディングシュートでゴールネットを揺らしたマンシャにより、リードを広げた甲府。
ホーム最終戦で高まる勝利の機運に、すっかり劣勢ぶりは消え失せる事となりました。
こうなると、尚も続く水戸のポゼッションに対しても、余裕が生まれたかのように振舞い。
12分には最終ラインでの長いパスに対し、出足良く前に出てカットした荒木がそのまま持ち運んでミドルシュート(GK松原キャッチ)とショートカウンターも出来るようになり。
それでも2点差を得た事で基本はリトリートという意識を貫き、水戸にボールを持たせて自陣を固めます。
これにより苦しくなった水戸、前半のようなボランチ経由のために頭を使う必要は無くなりましたが、フィニッシュに繋げる難度は爆上がりとなり。
17分にベンチも動き、山﨑・草野→長尾・落合へ2枚替えを敢行するも流れは変えられず。
逆に18分、甲府のGKへのバックパスに対しラインを上げた所、GK河田のその裏を取るロングフィードで一気に危機を招き。
抜け出した鳥海がGKと一対一を迎える、これも前半にあったワンシーンの再現となり。
エリア内へ切り込み、満を持して放たれた鳥海のシュートを、GK松原が左足を伸ばしてセーブとまたも防ぎます。
冷や汗を掻いた水戸、20分に甲府のハイプレスを呼び込み、GK松原の小さいフィードを落合がレイオフで繋ぎ脱出。
長尾の1タッチでのロングパスを左ワイドで受けた新井、そのままドリブルで左ポケットへ切り込んでカットイン、中央からシュートを放つもマンシャがブロック。
このシーンのように相手が出てきてくれるのならまだしも、それ以降はやはりボールを持たされる状況が長く続く事に。
一応、投入された落合が降りる事で、「1アンカー+2インサイドハーフ」の色を強めて繋ぐ体勢へと変節を見せるも効果は薄く。
中央に張る中島も、依然としてボールに拘われない状態が続きます。
25分攻撃が途切れて甲府ボールになった所を大崎が奪うという形で、ショートカウンターに入った所に山本隼が(マンシャに)反則を受け。
これにより中央からの直接FKを得ましたが、まずはベンチが動き山本隼→齋藤へと交代。
そしてその齋藤が(大崎のフェイクを交えて)直接シュートを放ち、ゴール右を襲ったこのフィニッシュをGK河田がセーブ。
しかしその後、最終ラインから作り直しを迎えた所で、バックパスに誰も反応出来ないというミスを起こしてしまい。
アダイウトンに掻っ攫われるという泣きっ面に蜂の状況が生まれ、そのまま左ポケットまで持ち運びシュートが放たれるも、枠を大きく外して何とか命拾い。
直後にそのアダイウトンが交代の運びとなり、木村を投入した甲府ベンチ。
有り得ないようなミスの絵面も招き、必然的に反撃の機運が高まらない水戸。
38分に最後の交代を敢行、牛澤→野瀬へと交代したうえで、4-4-2へ布陣も変更。
最終ラインは右から野瀬・長尾・山田・大崎となり、ドイスボランチが櫻井・落合、サイドハーフは右に齋藤・左に新井。
そして長澤がFWに回り、中島と2トップを組む体制に。
一方の甲府も40分に三平→内藤へ交代、これが最後の采配となった結果カードを残したままとなります。
41分にその内藤が長尾のロングパスをブロックし、ショートカウンターを迎えるかという所で、中山が奪われてしまい逆に水戸のカウンター。
すかさず斎藤から送られた裏へのロングパスに中島が走り込むという、滅多に来なかったフィニッシュのチャンスが訪れる事となった中島。
マンシャと縺れ合いながらもボール確保し、そのまま右奥へと切り込みましたが林田の反則気味のアタックでロストしてしまい終了に。
たまらず、納得いかないという態度で(長澤とともに)主審に抗議した中島でしたが、悪態をついた事で意義による警告を得るのみとなり。
その姿に、やはり貯め込んでいたフラストレーションは相当なものだという事は伺えました。
その後43分に野瀬のクロスを合わせてヘディングシュートを放った(GK河田キャッチ)中島でしたが、結局これが最後の見せ場となり。
突入したアディショナルタイムも、冷静に水戸の攻勢を凌ぎ続ける甲府。
そして2点差を保ったまま、試合終了の時を迎えます。
これにより得た勝ち点3で、対戦相手の水戸を上回ったもののそれでも14位。
年を重ねる毎にJ1昇格がどんどん遠のくという感覚は避けられませんが、天皇杯・ACLというフィーバーも終わったとあれば、捲土重来をじっくり待つのが最善な気がしますが果たして。