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<今日のテーマ>: 月の膨張期の内部進化解明に向けて
~月線状重力異常の年代・構成物質の初めての制約~
「月はどんな膨張進化を太古に経験したのか?」
この問いは、月の進化を理解する上で最も欠かせない問いの一つであり、現在月科学において最も盛んに議論されているトピックの一つでもあります。この記事では私が博士課程を通して最も力を入れ、かつ最近出版された論文を解説しつつ、月進化の研究の最前線の一部をお伝えしたいと思います。
といっても、惑星科学者でない限り、「月の膨張」というフレーズは少し馴染みがないと思います。何ならSFチックにも聞こえるかもしれません。まずは月がどんな進化を辿ってきたのか、そこから始めたいと思います。
<右図の解説>: 月の内部進化のイメージ図。上段右図の右半分はGRAIL観測による重力偏差マップ。貫入岩体由来の線状重力異常がハイライトされています。
月の表面が形成当時にマグマに覆われた状態であったことはご存知でしょうか?太古に地球への原始惑星衝突で生じた破片が集積して月が形成されると、それに伴う熱により岩石は溶け、形成直後の月はマグマの海(マグマオーシャン)に覆われた状態となります。
このマグマオーシャンの冷却とその後の内部進化が月の膨張を語る上で非常に重要です。マグマオーシャンが冷却する過程で、現在のカンラン石や輝石、斜長石といった鉱物が晶出し、月の地殻とマントルができます。地殻とマントルの間にはマグマオーシャンの残液が存在し、液相濃集元素であるチタンを豊富に含むようになり、最終的に固化するとチタンを含む鉱物であるイルメナイトに富む層が地殻・マントル間に形成されます。このイルメナイト層で特徴的なのは、その下のマントル物質より重いことです。この上が重くて下が軽いという不安定な状態により、イルメナイト層とマントルがひっくり返る「オーバーターン」と呼ばれる現象が起きます。沈み込んだイルメナイト層にはトリウム等の放射性元素も含まれるため、オーバーターン後にはこの放射壊変熱によりマントルの深部が温められる現象が起きます。この昇温による熱膨張により、月は40億年ほど前に膨張期を経験したと考えられてきました。
では、このような大規模貫入岩体はいつ形成されたのでしょうか?そして、どのような組成をしているのでしょうか?前者は月の膨張時期を制約する情報です。また後者は当時のマグマ源の組成を反映する重要な情報です。しかし、このような貫入岩体は地表まで噴出していないので、リモートセンシングで得られる月の表面のデータだけでは解明できず、これまで理解が進んでいませんでした。
--- 以下略。
<ひとこと>: これは国立天文台の記事として発表されたものです。大判イメージを含め詳細は下記リンクからご覧ください。
<出典>: 学術振興会海外特別研究員 西山学(著者名です)
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