のあ いちい ワールド

ここは、物書き「のあ いちい」の、人間世界とそれ以外の宇宙人について多くふれるブログです。

★アジアの歌姫

2008-08-27 23:01:48 | エッセイ
☆『時が滲む朝』の著者・楊逸(ヤン・イー)さんは、どう捉えているのでしょう。作中でも少しだけれどその名が現われる
テレサ・テン。

その誕生から死まで、光の中に影が見え隠れする。

2003年4月 上海墓地に墓と像が建立、とあるが。
その誕生の地も42歳という若さで突如報道された謎の死も。

楊逸さんが作中で触れた民主化デモ。
1989年6月4日に発生した中国共産党政権による反政府活動弾圧虐殺事件である天安門事件の時、香港で行われた民主化デモ弾圧に対する抗議集会にテレサ・テン自らが参加、民衆の前で歌を歌い、中華人民共和国の民主化実現を訴えた、という記事も。
その後、中国共産党政府の一党独裁を否定したテレサ・テンは、1997年7月にイギリスから中華人民共和国に返還されることが決まっていた香港から、活動の拠点をフランス・パリへ移した。

美声と美貌で人を惹きつけていた42歳の溌剌としていたテレサ・テンが、突如、喘息で死亡?
暗殺説もあり、謎はなぞのままで・・


        




◆直木賞『切羽へ』井上荒野著から

2008-08-10 23:08:36 | 文学賞
讀賣新聞で、直木賞作家の江國香織と井上荒野の記念対談が載っていた。

江國、という名を初めて聞いたとき、男性かと思った。その後も男の作家に違いない、と長いこと思っていた。
今回、井上荒野、というひとが直木賞を受賞した、と聞き、これまた男性作家に違いない、と思った。

対談を読んでいて、男の観念に近いものを持っている二人だと。二人とも父親が作家で、幼少時から影響を受けていることを知り、頷けた。

今回の受賞作、井上荒野の『切羽へ』は、パソコンで「きりは」と入力しても出現しない。「せっぱ」と入れるとヒットする。作中では、
「トンネルを掘っていくいちばん先を、切羽というとよ。トンネルが繫がってしまえば、切羽はなくなってしまうとばってん、掘り続けている間は、いつも、いちばん先が、切羽」
で、「きりは」と読むのだという。

舞台は、長崎県西海市の島・崎戸だということだ。読んでいて方言が直感的に何となく分かり、読みづらさは少ない。

主人公のセイは、小学校の養護教諭。夫は同じ島育ちの絵描き。
この作品に登場する「月江」という女性教諭と「本土さん」と呼ばれ妻がいるが「月江」に会いに来る男の存在がストーリーを盛り上げる。

帯を先に読んでしまったからだろうか。この島へふらりとやってきた独身男性の音楽教師・石和聡。出自をぼかしているが、料理が上手で純粋さも感じられる男。現実世界ではこのようなひとはいそうな存在。
しかし、セイが夫以外のこの登場人物に、そんなにも惹かれているという感じはしなかった。帯を読まないで読みにかかったら、また違ったかもしれないが。

それにしても、作中での「セイ」や「月島」、それに赤いコートの本土さんの妻には、女としてのそれぞれの味が見事に描かれている。
これは、女性作家の手によるものだな、と読んでいて思う。
細かな言葉の継ぎ穂で読者を引っ張っていく表現力が、この著者の持ち味だと。


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