腫瘍内科医・高野利実(たかの としみ)さんの記事をヨミドクターで読みました。
◆腫瘍マーカーが使われる目的
(1)がん検診(がんの早期発見)
(2)早期がん手術後の経過観察(再発の早期発見)
(3)進行がんの「病気の勢い」の評価(治療効果判定)
「偽陰性」や「偽陽性」は多い
本当は、がんがあるのに、検査では陰性(腫瘍マーカー正常)の結果が出ることを、
「偽陰性」と呼び、
本当はがんではないのに、検査では陽性(腫瘍マーカー高値)の結果が出ることを、
「偽陽性」と言うそうです。
=腫瘍マーカー検査を受けるにあたり注意すること=
• 検査を受ける目的は何か
• 検査の精度はどうか(偽陰性や偽陽性の可能性がどれくらいあるのか)
• 検査結果をどう解釈し、どう行動するか
• 検査を受けることによって得られる利益は何か
• 検査を受けることによって生じる不利益は何か
なんでもかんでも検査は受けた方がよいとは考えず、検査による不利益の存在も知っておく必要があるということですね。
前立腺がんのPSAや、卵巣がんのCA125や、肝臓がんのAFPなど、
一部の腫瘍マーカーは、「早期がん」でも数値が上昇するため、がんの早期発見に活用できる可能性があるが、
その意義がないことを示した臨床試験もあり、また、PSA検診によって救われる命があるとしても、それよりもはるかに多い人々に、偽陽性や過剰検査や過剰治療などの不利益が生じることがわかっており、世界的にも意見が分かれているとのこと。
高野利実医師は、健診では腫瘍マーカーは、受けない方がよい、という意見ですね。
健康診断を扱う業者の中には、腫瘍マーカー検査を「オプション」として提案し、追加料金を取っているところもあるようだが、「オプション」と聞くと、なんだか、やっておいた方がよさそうな気になりがちだが、腫瘍マーカー検査の目的や、それに伴う不利益をよく理解した上で、適切な判断をする必要がある、と。
不安にかられながら、いろんな検査を受け、
「がんでなくてよかったです。これですっきりしました」と満足する方もいますが、
「肉体的にも精神的にも疲れたし、今も、もやもやが残っています」
という人の方が多いのでは、と。
「再発の早期発見」に意義は
(2)の「再発の早期発見」の目的で腫瘍マーカーを使うことについても、いろいろと議論がある。
(1)と同様、「偽陰性」や「偽陽性」の問題は、ここでも生じる。
真の「陽性」であった場合、がんの再発を早期に発見できたということになるが、再発を早く見つけて、症状が出現するより前から治療を開始する意義があるのか、というポイントも考える必要がある、と。
大腸がんであれば、再発を早期に見つけて、手術などで根治を目指すことがあり、その意義は、臨床試験でも証明されている。国内外の、大腸がんのガイドラインでは、CEA等の腫瘍マーカーを、(2)の目的で測定することが推奨されているとのこと。
一方、肺がんや乳がんの場合は、
(2)の目的で、CEA等の腫瘍マーカーを測定する意義は示されておらず、国内外のガイドラインでは、
「手術後の経過観察中に、腫瘍マーカーを漫然と測定すべきではない」とされている。
乳がんについては、手術後の経過観察中に、腫瘍マーカーを含む検査を頻繁に行うグループと、行わないグループを比較するランダム化比較試験が、日本でも行われており、その結果が待たれているとのこと。
◎腫瘍マーカー(しゅようマーカー):
がんの進行とともに増加する生体因子のことで、主に血液中に遊離してくる因子を抗体を使用して検出する臨床検査のひとつである。
◆高野利実(たかの としみ)腫瘍内科医
東京生まれの神奈川育ち。
1998年東京大学医学部卒。
2010年より虎の門病院臨床腫瘍科部長。
国立がん研究センター中央病院、東京共済病院などで、抗がん剤治療を専門に手がける。
がん薬物療法専門医会代表も務める。
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