酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

「大津中2自殺」急展開を考える

2012-07-12 10:00:25 | Weblog
 大津市立中2年の男子生徒が昨年10月、自宅マンションから飛び降りて自殺した事件が、この1週間で大ニュースに膨れ上がった。4日付で各紙が報じた「生徒は自殺の練習をさせられていたというアンケート結果があったのに、市教委が握りつぶしていた」―がきっかけである。

 ≪大津市で昨年10月、同級生からいじめを受けていた市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が自宅マンションから飛び降り自殺した問題で、学校が全校生徒に実施したアンケートに対し、15人の生徒が「自殺の練習をさせられていた」と回答していたことが3日、関係者への取材で分かった。市教委は昨年11月の記者会見でこの事実を明らかにしていなかった。

 男子生徒の両親が今年2月、大津市や加害生徒3人と保護者を相手取り、約7720万円の損害賠償を求めて大津地裁に提訴。5月の第1回口頭弁論で市はいじめがあったと認めたが、「いじめを苦にしての自殺と断じることはできない」と主張していた。両親の代理人はアンケートの回答について、17日に開かれる第2回口頭弁論に提出する準備書面で主張する≫=毎日jp。

 この中学に対して爆破予告はあるは、市長を脅迫した容疑で愛知の69歳に逮捕状は出るは…。ネット上では実名入りの虚実入り乱れた情報が飛び交っている。そして、極めつけは滋賀県警による学校と市教委への強制捜査開始である。

 ≪大津市立○○中二年の男子生徒=当時(13)=が昨年十月、マンションから飛び降り自殺した問題で、滋賀県警は十一日夜、暴行容疑で大津市教育委員会事務局と中学校を家宅捜索した。早ければ八月中に捜査の結果を出す。

 県警によると、家宅捜索容疑は、昨年九月二十九日に大津市の陸上競技場での体育大会で、同級生の少年三人が男子生徒の両手を鉢巻きで縛り、口に粘着テープを張るなど暴行したとされる。

 男子生徒は十月十一日朝、自宅マンション十四階から飛び降り、死亡した。

 中学校が全生徒を対象にしたアンケートで男子生徒が「殴られたり蹴られたりしていた」と直接見た生徒がいることや「ハチの死骸を食べさせられそうになっていたと聞いた」などの記述が複数あり県警はこれらについて強要や暴行容疑などでの立件の可否を調べる。県警は十一日、少年課内の特別捜査隊の捜査員ら二十人と大津署の五人で専従捜査チームを設置。学校と市教委の幹部らから事情聴取を始めた。今後生徒にも話を聞く≫=東京新聞web=。

 市教委の初期対応のまずさは覆うべくもない。教育委員会がすっかり行政機関と化してしまい、学校現場で何が起きているかの想像力を欠いているのが大きな要因だろう。市町村教委が学校を指導することなどどだい無理なのだ。(逆に都道府県や政令市では教員上りが幅を利かせ、事件のもみ消しを図ったりしているのだが…)。大過なく任期を過ごす。これは公務員の鉄則である。

 滋賀県警の唐突な強制捜査もこの文脈で理解できる。自殺した生徒の父親が再三にわたって被害届を提出しようとしていたのを、警察はその都度拒んでいたのだ。

 ≪大津市で昨年10月、いじめを受けた市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が飛び降り自殺した問題で、生徒の父親(47)が滋賀県警に被害届を再び提出する意向を固めたことが7日、関係者への取材で分かった。父親はこれまで「同級生から暴行を受けていた」とする被害届を県警大津署に3回提出しようとしたが、いずれも受理を拒否されている≫=毎日jp=。

 警察の失態を取り繕う意味でも、やる気を見せる必要があったのだ。いじめによる自殺となれば、当然刑事事件だ。だが、この種の事件は下手人を挙げて終わりではない。むしろ、なぜこんな事件=いじめ=が起き、自殺するまで放任されたのかが問われなければならない。前のめりの強制捜査は、事件に対して学校(教師、生徒、父母ら)が内省する機会を奪うことになりはしないか。
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