出会いは昨年九月。
飼っていた犬が十六歳で死に、悲しみも癒えぬ頃。
庭で猫の声がすると母が言う。
父も小さな猫を見たという。
二人とも猫が嫌い。
なのになぜ猫好きなわたしだけ声も聞かなきゃ姿も見ない?
「見つけても絶対エサやらないでね」
当時の我が家は年内に引越しを控えていて、猫を飼うどころの状況じゃなかったし
なにより両親は本当に猫が好きじゃないのだ。
わたしとて飼えもしない猫に情を移せばつらいだけなので、
その猫を見たい気持ちと見たくない気持ちと両方であった。
しかしとうとうある夜、鳴き声を聞いてしまった。
「いやー」
ややかすれ声の不気味な声。
「エサやらないでね」と母親が念押しする。
あとでこっそりやろうと思いつつ家に入った途端に母親が
「ねえ、かわいそうだからなんかやりなよ」
どっちなんだよ。
お許しが出たところでほいほいとかつおぶしご飯を持ってゆく。
どんな猫かな・・・
「いーやー」
うわ、可愛くない。
このとき娘は子猫というより中猫になりかけていたので、すでに子猫の愛らしさがなくなりつつあったし
なにより柄がよくわからないでたらめな模様で、しかも全体的に薄汚れた灰色で
おまけに顔も貧乏くさかったので全然、謙遜でもなんでもなく可愛くなかったんである。
こんな猫、誰も拾ってくれないだろう、哀れだ・・・
エサをもってゆくと一丁前に背中を丸めてシャーシャーと威嚇する。
せっかくごはん持ってきてやったのに。
仕方ないので置いてゆくと用心してなかなか近寄ろうとしない。
しばらくしてやっとこちらを窺いながら近付き、ちらちら見ながら食べ始めた。
「うにゃうにゃうにゃ」
鳴きながら食べている。
はは、可愛いこと。
これが、今や娘と溺愛する「たら」との出会いである。
飼っていた犬が十六歳で死に、悲しみも癒えぬ頃。
庭で猫の声がすると母が言う。
父も小さな猫を見たという。
二人とも猫が嫌い。
なのになぜ猫好きなわたしだけ声も聞かなきゃ姿も見ない?
「見つけても絶対エサやらないでね」
当時の我が家は年内に引越しを控えていて、猫を飼うどころの状況じゃなかったし
なにより両親は本当に猫が好きじゃないのだ。
わたしとて飼えもしない猫に情を移せばつらいだけなので、
その猫を見たい気持ちと見たくない気持ちと両方であった。
しかしとうとうある夜、鳴き声を聞いてしまった。
「いやー」
ややかすれ声の不気味な声。
「エサやらないでね」と母親が念押しする。
あとでこっそりやろうと思いつつ家に入った途端に母親が
「ねえ、かわいそうだからなんかやりなよ」
どっちなんだよ。
お許しが出たところでほいほいとかつおぶしご飯を持ってゆく。
どんな猫かな・・・
「いーやー」
うわ、可愛くない。
このとき娘は子猫というより中猫になりかけていたので、すでに子猫の愛らしさがなくなりつつあったし
なにより柄がよくわからないでたらめな模様で、しかも全体的に薄汚れた灰色で
おまけに顔も貧乏くさかったので全然、謙遜でもなんでもなく可愛くなかったんである。
こんな猫、誰も拾ってくれないだろう、哀れだ・・・
エサをもってゆくと一丁前に背中を丸めてシャーシャーと威嚇する。
せっかくごはん持ってきてやったのに。
仕方ないので置いてゆくと用心してなかなか近寄ろうとしない。
しばらくしてやっとこちらを窺いながら近付き、ちらちら見ながら食べ始めた。
「うにゃうにゃうにゃ」
鳴きながら食べている。
はは、可愛いこと。
これが、今や娘と溺愛する「たら」との出会いである。