たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

第三者委のあり方 <障害者雇用 水増し問題 第三者委報告 不適切慣行>と<水増し「悪質だ」 進次郎部会長>などを読みながら

2018-10-23 | 差別<人種、障がい、性差、格差など

181023 第三者委のあり方 <障害者雇用 水増し問題 第三者委報告 不適切慣行>と<水増し「悪質だ」 進次郎部会長>などを読みながら

 

パラリンピックをはじめ障害者の置かれている厳しい状況の改善がわが国でも少しずつ注目されるようになりました。

 

そんな中、障害者雇用・国の水増し問題について毎日新聞は継続的に取り上げてきました。そして今朝は第三者検証委員会の報告を受けて、第一面から4面をほぼ全面で取り扱っています。障害者雇用を率先して進めないといけない国の行政機関のほとんどで、そのガイドラインを逸脱して水増ししていたことについて、検証結果の内容とその評価が追求されています。

 

第一面の<障害者雇用水増し問題 国が3700人 93%手帳・診断書なし 退職後も補充せず 第三者委報告>では、<不正計上は昨年6月時点で国の33の行政機関のうち28機関で計3700人(実数)に上った。このうち約93%に当たる3426人で、国のガイドラインで定めた障害者手帳や指定医による診断書を持っていなかった。>ことを明らかにしています。

 

障害者手帳も診断書もなく、どのようにして障害者性を客観的に判断できるのでしょう。

<報告書は「障害者の範囲や確認方法を恣意(しい)的に解釈していた。極めて由々しき事態」と批判した。>また<報告書は「前例踏襲で長期にわたり多くの行政機関で不適切な実務慣行が継続していた」と結論づけた。>ともされています。

 

第三者委員会は、恣意的な解釈とか、前例踏襲で不適切な実務慣行とか、はっきりいえばあいまいな結論にとどまっています。

 

この点、松井委員長の記者会見を取り上げた<障害者雇用 水増し問題 第三者委報告 不適切慣行、漫然と>では、同委員長の見解を引用しています。

 

<「法定雇用率を充足するため、恣意的な不適切計上が行われていた」と指摘したが、「故意ではなかったか」との質問に「主張を覆す裏付け証拠が出てくれば別だが、故意性、意図性を認定できない」と繰り返した。>と。

 

証拠がない以上、故意性を認定できないといのは、検事出身ですから、当然の発言です。こういった不正・不適切な事例について、第三者委員会が求められるのは、すでに不正なデータがある中で、不正に直接関係した人たちの認識について、捜査経験を生かしていかに適当な弁解を許さず客観的証拠を踏まえて追求するかということが求められるのではないかと思うのですが、本件の記者会見での質疑でそのような調査経緯が合理的に語られたかというと、疑問を感じます。

 

松井氏の所属する法律事務所ホームページにそのプロフィールが掲載されていますが、長い検事経験をされていて、ある時期までは現場で相当の経験をされてきたことがうかがえます。弁護士になってからは第三者委員会の経験も結構されていて、高い評判を得ているのでしょう、いろいろなところで推薦される方のようです。

 

ただ、記者の質問<意図性を断定する証拠がなかったということだが、約1カ月という検証期間が制約となったのか。>に対し、<1カ月あまりではあるが、濃密に調査・検証ができたと考えている。>と答えていますが、どうしてそういえるのでしょう?

 

さらに<(不適切計上と認定された)3700人について徹底的に検証することになれば、捜査に近いものになる。>と回答していますが、なぜ3700人の個々に調べることが捜査に近いものになるのでしょう。だいたい「徹底的に検証」といって弁解していますが、そのための第三者委員会ではないのでしょうか。適当な検証ならやらないほうがましでしょう。

 

<(不適切な慣行を)共有していたのは、地方の人事担当の人が多い。そういう人たち一人一人を呼んで聞くというのが、長期間かけて本当にできるのか。私の過去の経験からは疑問がある。>そうこの方は、こういう考えをお持ちですから、依頼に当たっても、個別に担当者に聞き取ることはせず、だれか各省の担当者が聞き取ったか整理した上で、その担当者の話を聞いて検証したというのでしょう。

 

次の回答からは、そもそも相当先入観を抱いていたうえで検証にあたったようにも見受けられます。

<今回の問題については、「考えた」というよりも、「考えずに行われた」という感が強い。前例踏襲で新たな障害者を雇う努力をせず、独自の不適切な実務慣行が漫然と行われていた。法に従う公務員の仕事としては、あぜんとする思いだ。>

 

このような松井氏の感じ方が、個別に担当者から聞き取った上で(仮に全員でなくても相当数に絞った上でも直接聞き取った)、このような考えに至ったのであれば、そのような具体的な担当者の言葉を引き合いに出せますが、どうもそのようには思えません。

 

また<意図的な計上はなかったという認識か。>との質問に対する答えが<意図的だというケースは認められなかった。架空の人を計上するとか、障害の実態をまったく考えないででっち上げるといったものはなかった。>ということですが、<障害の実態をまったく考えないとしていますが、そういえるのか疑問です。

 

水増し問題 検証委員会の報告書 詳報>によると< ・視覚障害について、矯正視力ではなく裸眼視力で測定すると誤解。>としていますが、裸眼視力で障害を認定することは常識的にありうるのでしょうか。私も障害認定されそうです。悪質な民間企業ならそういった弁解もありうるでしょうけど、国家機関の人事担当がそのような認識であったとみるほうが不自然ではないでしょうか。

 

また<人事記録の自己申告や同僚職員らの供述、担当者の主観で判断。>といったことは、担当者はすくなくとも当該「障害」と認定した人を認識していて、根拠なく判断したというのですが、その人を知っていれば障害の実態をまったく考えないででっち上げたのに等しいのではないでしょうか。当該人物について、障害の種類・程度が明らかにされていないので、でっちあげかどうかさえ、これだけでは判断できません。個人のプライバシー保護の必要性を考慮しつつ、報告書の内容には詳細な言及がされていることを期待したいと思います。

 

さらにいえば<過去の計上例を参考に漫然と当てはめた。>と概括していますが、上記を含めこのような弁解が通るのであればわざわざ検証した意味がないと感じるのは私だけではないように思います。

 

個別の検討をすれば、それぞれ事情が異なるのですから、個々の担当者からの聞き取りをすれば、もっと具体的な事情が判明するでしょう。すでに省庁間で連絡して調整済みかもしれませんが。一ヶ月程度で調査を終える見通しであったのであれば、最初から結論ありきだった可能性も疑いたくなります。

 

これだけの内容をいったい実働何人でどのくらいの時間をかけてやったのでしょう。そのくらいは報告の中に入っているのでしょうかね。

 

ただ、調査方法については

<(1)厚生労働省

 身体障害者雇用促進法が制定された1960年から現在までの関連資料の提供を求め、2回にわたるヒアリングを実施。

 (2)国の行政機関

 33の国の行政機関を対象に、書面調査とヒアリングを実施。>

ということですから、この程度のヒアリングではあまり成果をあげられないと思うのです。いや松井氏は辣腕検事だから大丈夫とおっしゃられるのかもしれませんが、現実味に乏しいと思うのです。まあ第三者が(これも同じ名称ですね)勝手な口出しをしても糠に釘かもしれませんが、たまには岡目八目ということもありますから、世論の声はしっかり聞いてもらいたいとも思うのです。

 

障害者雇用水増し問題 故意性否定に憤慨 障害者「検証は表層的」>では、

<日本障害者協議会代表の藤井克徳氏は「なぜ長期間にわたり、これだけ大規模に水増しが行われてきたのか。検証委は障害者雇用に対する関心の低さや、法の理念に対する意識の低さという表現をしているが、なぜ関心が薄かったのか、その疑問に答えていない。検証は表層的だ」と指摘する。

 さらに、藤井氏は「根本には障害者を職場に入れたくないという障害者排除の考え方があったのではないか。真相をえぐってほしかった」と嘆き、・・・

 また「・・・当事者を入れて、障害者の労働や雇用制度について根本から議論すべきだ」と語った。【山田麻未】

 

当然の怒りでしょう。

 

最後に小泉進次郎氏の意見を採り上げておきます。

障害者雇用水増し「悪質だ」 進次郎部会長、初日からビシバシ>では、

<自民党の厚生労働部会長になった小泉進次郎衆院議員が・・・、中央省庁などの障害者雇用数水増し問題について「法律を破ることはあり得ない」と早速苦言を呈した。

 ・・小泉氏は障害者手帳を持たないうつ病の職員や裸眼で視力の悪い職員を障害者に算入した違反事例を挙げ「悪質だ」と指摘した。【原田啓之】>

 

違反事例としていますね、切れがいいです。安倍政権ではどうも表面だけを装って内容がないことが多いように思うのですが、どうでしょう。松井氏は自分は捜査のプロだから、裏付けがない以上、意図性を認めないという立場は理解できますが、でもほんとにこれで検証としていいのでしょうか、それが毎日がこれだけ大きく取り上げた背景ではないでしょうか。わたしもその疑問を共有しています。

 

今日はこのへんでおしまい。また明日。


開示とプライバシー <刑事裁判記録公文書館移管>を読みながら

2018-10-22 | 刑事司法

181022 開示とプライバシー <刑事裁判記録公文書館移管>を読みながら

 

刑事事件はいつの時代にも話題となることが少なくありません。むろんほとんどの刑事事件は関係者以外には関心をもたれることもなく、当事者も多くは忘れてしまいたいこともあり、いつの間にかその記憶も記録も失われていく運命かもしれません。

 

しかし、事件当時話題性を呼び起こしたかどうかに関係なく、その事件が今後の刑事事件の取扱に参考となるような場合研究対象となるなどのために保存し開示・利用に供することは意義のあることではないかと思います。

 

今朝の毎日記事<刑事裁判記録公文書館移管 開示・利用方法や対象選定に課題>として、この問題を取り上げています。

 

ところで刑事裁判記録の現状はつぎのような取扱とのこと。

<刑事裁判の判決が確定すると、供述調書や判決書を含む記録は1審の検察庁に戻され「門外不出」になる。確定から3年間は一部の閲覧が認められる(コピーはできない)が、その後は原則として見ることができず、保管期間が過ぎた後は、保存されているのか廃棄されているのかについても、外部からは分からない。>

 

私は再審事件を担当したことがないので不案内ですが、事件を担当する弁護人は当時の記録が身近に残っていないときでも、検察庁で記録を謄写して検討できるのだと思っていましたが、閲覧しかできず、しかも3年間に限られるとなると、再審請求するには事件当時の弁護人がしっかり記録を残していないといけません。通常は刑事記録はずっと保存していると思いますし、とりわけ無罪を争っている事件だと弁護人も何年経っても保存しているでしょうから問題ないかもしれませんが。

 

他方で確定後の保管は、<刑の種類や刑期などに応じて3~50年(判決書については最長100年)、検察に保管される。>

 

では最長の50年経過後の扱いはというと、次の指定がなければ廃棄処分するのでしょうね。<経過後は、刑事法制や犯罪の調査・研究のために重要だと判断されれば廃棄せず、法相が「刑事参考記録」に指定する。>

 

その保存される基準については<法務省刑事局長通達(1987年)によれば、刑事参考記録の指定基準は、死刑確定事件▽国政を揺るがせた犯罪▽犯罪史上顕著な犯罪▽無罪確定事件のうち重要なもの--などとされる。>

 

このような取扱の問題点としては、法務省・検察庁が内密に?指定するかどうかを判断しているわけですが、財務相や防衛省などの改ざん・隠蔽問題などで行政に対する信頼が揺らいでいることもあり、法務省も対応を迫られたようですね。

 

<法務省は先月、保管期間が過ぎた後も検察庁に保存されている刑事裁判記録のリストを作り、古いものを試行的に国立公文書館に移す方針を打ち出した。>具体的には

 

<法務省が4月に設置した「公文書管理・電子決裁推進に関するプロジェクトチーム」(PT)は9月、刑事裁判記録の保管の在り方についても一定の方向性を打ち出した。(1)明治期前半の刑事参考記録1~数件を国立公文書館に試行的に移管する(2)刑事参考記録としての保存が不要になって、法相が指定を解除する場合、法務省は国立公文書館などと協議し、「歴史資料」として重要と認められる場合は公文書館に移す--との内容だ。>

 

公文書館に移すとどのような結果となるかですが、

<公文書館に移されれば、原則として研究者らに対して開示されることが想定される。刑事裁判は公開の法廷で審理された「オープンな記録」とする考え方がある一方で、記録には事件関係者にとって不名誉な情報も含まれているとされる。>

 

そのような問題もあって、<刑事裁判記録が国立公文書館に移された実績はほとんどないとみられ>るそうです。

 

そもそも検察庁のこれまでの取扱では、<刑事参考記録について、法務省は学術研究などの必要があれば検察官の判断で閲覧を認めるとしているが・・・田中角栄・元首相(故人)らが有罪判決を受けたロッキード事件も参考記録に指定されているか明らかになっておらず、これまで事件研究に利用された形跡は見られない。>というのには驚きました。

 

私は公刊されているロッキード事件の裁判記録(題名は忘れてしまいました、何巻もある膨大な文書だったように思います)を東弁の図書館で、四半世紀前頃しばらく時間をかけて読んだことがあります。そこには弁護人の質問に対する供述が裁判調書のように掲載されていた記憶です。執筆者を確認したと思うのですが別にメモをとってまで読んでいたわけではないので、弁護人が書いたものかどうかは忘れてしまいました。弁護人であれば裁判記録を謄写しますので、それを出版することは可能でしょうね。

 

この事件の記録は、弁護人の法廷での弁護活動が赤裸々に掲載されていますので、法曹としての大変な経歴のある弁護人がいかにおざなりな(失礼ながら)質問をしていたかとか、弁護団の中で若手になる弁護人がいかに有効な質問をしていたかとか、勉強になりました。この事件は、そういった法廷弁護に限らず、話題沸騰の刑事免責付き嘱託尋問調書など、多様な法的問題を含んでいますので、この記録が指定されていないというのでしたら、一体、指定に値する事件があるのかと思うくらいです。

 

まあそれくらい法務・検察は刑事記録の開示に消極的であったわけですね。今回の公文書館移管でどう変わるかです。

 

記録のリストが公開されることに意味がありますね。<今回の改革で刑事参考記録のリストが公開されることで、何が保存されているのかが外部からもある程度分かるようになる。重要な記録が法務・検察当局だけの判断で廃棄されにくくなることにもつながる。>

 

参考記録の指定のあり方が問題になりますが、

<日本弁護士連合会は80年代に「(刑事参考記録は)広く法曹三者(裁判所、検察庁、弁護士会)ならびに学識研究者に利用されてこそ保存の意義がある。そのためには、保存記録の選定について、なるべく広く意見を徴する委員会を設置することが望ましい」と提案している。>のですが、改善されるのでしょうか。

 

他方で、開示・利用のあり方は、プライバシー保護の観点から慎重にされないといけないことは確かでしょう。ふつう弁護人は、刑事記録の中に、さまざまな個人情報がありますので、被疑者・被告人本人であっても注意しています。供述調書だと知られたくない被害者や第三者の住所・連絡先も記載されていますし、その内容自体も配慮する必要があります。

 

ましてや研究者といえども第三者ですし、以前たしか医師が記録を開示してそれが出版されて問題になったことがありますが、慎重な取扱が必要であることは少年・成年を通じてありますね。

 

<法務省刑事局によると、利用制限の方法は現段階では未定だ。例えば、プライバシーにかかる記載にマスキングを施す範囲を、移管や閲覧のタイミングで国立公文書館と検察庁が協議して決定するといった方法などが考えられるという。>

 

内部だけで調整するだけでよいかは、日弁連が保存記録選定で言及しているのと同じ論理で、見直してもらいたいと思うのです。

 

今日はこのへんでおしまい。また明日。

 

 

 


効用とマナー <アクセス 議場で喉あめ、懲罰必要?>などを読みながら

2018-10-21 | 議員の役割(国会・地方)

181021 効用とマナー <アクセス 議場で喉あめ、懲罰必要?>などを読みながら

 

ある行為がもつ意味や評価は時代や社会意識の変化に応じて変わるものかもしれません。常識というものも、漱石が往年に生きた時代に感じたものは、むろん現代では否というものが少なくないことは、あの文豪においても然りでしょうか。まあ漱石さんはそんな常識なんぞという怪しいものにとらわれなかったかもしれませんが。

 

今朝の毎日記事<アクセス議場で喉あめ、懲罰必要? 熊本市議を「出席停止1日」 賛「非常識」/否「いじめ」>では、議場でのど飴をなめながら質問した議員に対して、議場がとった対応について賛否両論で大きく揺れているようです。

 

<昨年11月に生後7カ月の長男を連れて議場に入り、議論を呼んだ熊本市議会の緒方夕佳議員(43)が今年9月28日、本会議中に喉あめをなめながら質疑に立って「出席停止1日」の懲罰を受け、再び議論を巻き起こした。緒方氏は今月、取材に応じて「本質より形式を重んじる一面が出た」と議会を改めて批判した。>

 

議場における質疑応答が活発になったり、政務調査が充実した内容になったりするのを期待するのですが、こういった「議論」で紛糾するのはどんなものでしょう。

 

ともかく事実関係を確認しましょう。のど飴を口に入れ、質疑に立った経緯は次のようです。

<緒方氏によると、せき込むと止まらないため議場に入った時からあめをなめていた。上着に「龍角散ののどすっきり飴(あめ)」を入れていた。本会議開始直後から質問に立ち、約1時間後、自席で二つ目を口に含み、質問する番になってそのまま登壇。話すときに邪魔なのであめ玉を口の中で横に押しやっていた。議員たちが気付き、騒然となった。>

 

のど飴はマナー違反というのは出席停止という懲罰に反発する議員も含めほとんどの議員が認めているようです。でも、緒方氏はおそらく違う考えです。

 

<「飲食はまずいという認識はあるが、せき止めのあめは飲食ではない。前にも一般質問であめをなめ、それをまわりも知っていたはずだ。授乳中で薬を飲めない事情を理解してほしい」と話す。>ま、飲食とは言えないですが、飴を口に入れながら質疑に立つことが議場のマナー違反というのですか(神聖な議場ということでしょうか?)、それがほとんどの議員の考え方のようです。

 

ただ、世論の中には擁護派もなかなかの意見です。<元アナウンサーの小島慶子さんはツイッターでメイ英首相が演説中にせき込み、喉あめをなめるエピソードを引用し、熊本市議会を<ただのいじめ>と酷評。>また、緒方氏自身も、<留学や国連職員などの海外経験を踏まえ「日本には決まりが多く、破れば糾弾され、生きづらい社会につながっている」と嘆く。>ということですから、海外の公式会議での経験を踏まえての言動かなと思うのです。

 

なぜか城島勇人記者は、突然、この文書の後に、<公式の場で断りなくあめを口に入れてしゃべれば、ふつうは常識を疑われる。>そうかもしれませんが、そうでないかもしれません。

 

常識というものは移り変わるものだと思います。たとえば喫煙ですね。いつ頃まででしょうか、議場で議員が喫煙していたのは?最近は見られないですが、質疑しながら喫煙するのが自然であったこともそれほど遠い昔ではないように思うのですが。

 

議場のマナーという意味では、ヤジや反対するときの妨害行為も、国会も地方議会も、恥ずかしい限りです。それに比べるとのど飴を口に含むことなど、さほど重大なことかと思ってしまいます。むろんその会話が聞き取りにくいとか、だらしなく(これも形容に困りますが)のど飴を口にしながら質問するといったことであれば、マナー違反といってよい場合もあるでしょう。

 

なぜのど飴かというの緒方氏の弁解に合理性があるかは一応、確認しておきたいと思います。

<【管理栄養士監修】のど飴の効果はある?ない?風邪対策におすすめの商品10>というのを参考にします。

 

実は私は、のど飴とガムの愛好家?なのです。長距離ドライブのとき両者(特に後者)を愛用しています。ほとんどが裁判所までの往復ですが、さすがに法廷に入る前にはのど飴なら食べ終わらせるか(私の場合なめていても最後はかんでしまいますのでなくなります)、口から出して紙に包んでポケットに入れておきます。これはマナーかどうかですが、そこは昔気質なのでしょうか、別に緒方氏の考えに反対の立場ではありません。

 

まあ通常は医薬部外品のど飴を口に入れるでしょうということで、その場合の効能は<咳止めの効能を持っているものはなく、のどの痛みや腫れを抑えたり、口腔内を殺菌する効果が期待できるもの>ということのようです。

 

ただ、緒方氏の場合風邪で微熱があり、<せき込むと止まらないため>ということですから、こういう場合は医薬品ののど飴であれば<咳や痰、のどの痛みといった症状がつらい場合>に一定の効能が認められていますので、医薬品を選ぶのが本来でしょう。ところが緒方氏は<「龍角散ののどすっきり飴(あめ)」>を上着に入れて、なめていたというのですから、ちょっと健康管理がどうかと思うのです。いや、たしかにこの飴好きですので、私もなめますが、風邪をひいた症状の時に対処するものではないと思います。だからダメとは思いませんが。自身の健康管理上は要注意でしょう。

 

もう一つ、<本会議開始直後から質問に立ち、約1時間後、自席で二つ目を口に含み、質問する番になってそのまま登壇。>ということですが、登壇直前に口に含まなくてもよいかと思いますが、あるいは緊張を緩和させる意味もあったのでしょうか。ま、細かいと言えば細かい話ですし、議場での緊張関係から生まれたものかもしれません。

 

この話のついでといえば、メジャーやサッカー選手などスポーツ選手によるガムをかむ姿について、少し議論があるようです。他方で、ガムの効用については以下のようなウェブ情報があります。

 

ガムによって作り出される唾液の効果>ということで、管理栄養士北川みゆき氏が監修したものだそうです。

<■歯の清浄作用

■美容効果

■顎を強くする

■脳の活性化

■リラックス効果>

 

で、私はこのうち、脳の活性化というのに、なんとなく腑に落ちています。

この具体的な内容は、<ガムを噛むと脳の血流量が増加し、脳が活性化するので集中力や判断力・記憶力が増すといわれています。噛むことによる刺激は認知症の予防にも効果があるそうです。また、脳が刺激されることで眠気の防止にもつながります。>

 

私はドライブ中、長距離になると、眠気を催すことがよくあります。ところがガムをかみ始めてからは(時折のど飴ですが)、集中力も高まり、眠気も起こらなくなったのです。この効用だけは認めます。

 

で、地方議会も、国会も、マナーの細かい話より、もっと大切なことに時間を、頭を使ってもらえないかと期待する国民・市民の一人として、このテーマを取り上げました。

 

今日はこのへんでおしまい。また明日。


司法の役割 <特殊詐欺 3億円返還へ・・大阪地検>と<最高裁 相続分無償譲渡は「贈与」>を読みながら

2018-10-20 | 司法と弁護士・裁判官・検察官

181020 司法の役割 <特殊詐欺 3億円返還へ・・大阪地検>と<最高裁 相続分無償譲渡は「贈与」>を読みながら

 

強いジャイアンツはあまり好きになれなかったけど、弱すぎるジャイアンツもつまんない、と野球ファンというかスポーツ好きの私は勝手な意見の持ち主のようです。広島カープは強いですけど、菅野が一度も投げずに4連敗はないでしょうと思ってしまいます。このシリーズでは広島もさほど打てていないのに、いいところでホームランなりヒットがでて、貧打の割に高得点を稼いでいます。西武が一方的に勝つかなと思ったら、SBがしぶといですね。そういうゲームをしてもらいたいものです。

 

さて新聞やTVでは、サウジアラビアの記者で政権批判記事を続けていたカショギ氏を皇太子関係者が同国トルコ総領事館内で殺害したという猟奇疑惑事件が連日報道されています。サウジの独裁体制については、北朝鮮同様報道統制があってあまり実態が分かりませんが、時折、隠し撮りがいくつかの媒体に流れますね。しかし、ここまでやるかと思ってしまいます。SBの孫氏も超大規模経済連携をスタートしたばかりで、どうするのでしょうかね、昨夜の幕引き会見で収束するとは思えないのですが、日本も含め利害関係が複雑に入り組んでいて、今後どうなるか注視したいです。

 

そういったきな臭い話は横に置いていて、今日は司法の役割について、2つのニュースを手がかりに少しだけ考えてみようかと思います。

 

一つは昨夕の毎日記事<特殊詐欺3億円返還へ 震災仮設巡り 関係先で発見 大阪地検>です。特殊詐欺の被害者は年々増大し、被害者が申し出ただけでも相当な金額になりますが、捕まるのは末端ばかりで、被害回復の話は希です。そんなとき、この3億円返還はうれしいニュースです。大阪地検の功績でしょうか。

 

高嶋将之、松本紫帆両記者による記事はその意義について、<東日本大震災の仮設住宅購入をかたる特殊詐欺事件を巡り、大阪地検が、だまし取られた現金3億4200万円を被害者に返還する手続きを進めている。組織犯罪で奪われた財産を被害者に返す「被害回復給付金支給制度」に基づくもので、特殊詐欺事件としては最高額。>と指摘しています。

 

この事件の手口は<地検などによると、特殊詐欺グループが14~15年、東日本大震災の仮設住宅を購入するための名義貸しを高齢女性らに電話で依頼。その後、金融庁職員だと名乗って「名義貸しは犯罪。逮捕を免れる保釈金がいる」などと要求し、現金をだまし取った。>

 

上記の制度に基づき行われる被害者返還について、<地検は今年7月から、ホームページで給付を告知し、裁判で被害者とされた16人を超える28人(今月10日現在)が既に申請。西日本豪雨で被災した一部地域については、11月末まで募集を続ける。口座の記録などで裏付けられた被害に応じた金額を分配する。>とのこと。

 

特殊詐欺事件では飛び抜けた返還額というのですが、被害総額に比べるとほんの一部にとどまっています。むろん検察・警察も必死に犯人を追及しているのでしょうが、多くの特殊詐欺事件では、なかなか本丸にたどり着けない状況でしょうか。私も受け子の一人を担当しましたが、すらすらと中国の拠点や各地での詐欺行為を話しますが、リーダーの存在や所在となるとよく分かっていないか、話しません。

 

<日本弁護士連合会は今月、被害回復制度の拡充を国に求める決議を公表した。>ように、弁護士会も、被疑者・被告人の人権保護の活動を従来通り行いつつ、最近は被害者支援に向けた活動を活発に行うようになりました。

 

被害回復について、<詐欺グループは他人名義の口座や海外の金融機関を駆使し、巧妙に資金を隠す。警察は、拠点を見つけて容疑者や証拠を一気に確保する「アジト急襲型捜査」を強化するが、多額の現金が見つかる例は少ない。>として、特殊詐欺事件ではとくに被害に遭うと事後救済はよういではないことが実態です。やはり事前の被害に遭わない対策を講じることがなによりも先決で、従来の被害情報の分析を踏まえて(情報共通して)、予防策を講じる必要があると思うのです。いたちごっこかもしれませんが、銀行窓口を介するようなケースは少なくなったと思いますし、ATM対応もかなり進んできたと思います。自宅訪問や電話対応について、より有効な策を講じることが求められるのでしょうか。

 

だらだらと愚見を述べましたが、今度は少し格調高く?、最高裁判決を取り上げます。

 

今朝の毎日記事<最高裁相続分無償譲渡は「贈与」 遺留分請求認める 初判断>です。

 

相続分の譲渡自体が事件として争われるのはそう多くないと思いますが、このケースではその法的性質をめぐって本質的な問題が争点となりました。

 

<父親の死亡時に、母親が自身の相続する持ち分(相続分)を特定の子に全て無償譲渡したため、母の死亡時に母の遺産を受け取れなかった他の子が最低限度認められる相続の「遺留分」を請求した2件の訴訟の上告審判決が19日、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)であった。小法廷は「相続分の無償譲渡は贈与に当たる」との初判断を示し、他の子が遺留分を請求できると認めた。裁判官4人全員一致の判断。【伊藤直孝】>

 

なぜこれが問題となるかですが、相続分の譲渡では、具体的な財産が当事者間で移動するわけではありません。相続分の譲渡の結果、譲り受けた相続分を前提に、相続人間で遺産分割が行われた場合、被相続人の死亡時に遡ってその相続の効力が発生します。たとえば、母から2分の1の相続分を譲り受けた子は、その相続分と自分の相続分を加えた分を、父死亡時に、父から相続することになります。

 

ですので、譲り受けた子は、譲渡を受けた相続分に相当する財産を父から相続したのであって、母から贈与を受けたものではないと考えるのも相続法理に符合します。他方で、他の譲渡を受けなかった子は母からの相続分の譲渡はその財産価値相当の贈与を受けたと見て、母死亡時、遺留分減殺の対象となると考えるのも自然でしょう。父の相続では贈与と言えなくても、母の相続では贈与とみることができます。でもこのように考えられるかは、下級審で争いがあったようです。私自身は、30年くらい前、東弁で発行した法律税務の書籍の中で、この部分を担当していくつかの場合分けをして書きましたが、当時は母の相続時までは検討していませんでした。もう古い話です。

 

なぜ相続分の譲渡が行われるかですが、私自身も、30年くらい前に原稿を書いたとき、それ以前に父親の遺産相続をめぐってきょうだい間で紛糾し、母親が困ってしまっていて、家業を継いでいる子に渡して、自分は紛争当事者から外れたいと相談され、相続分譲渡に関する公正証書を作ってもらったことがあった記憶です。

 

だいたい相続分の譲渡をするような方は、紛争に巻き込まれたくないという気持ちと、誰かに財産管理を任せたいという気持ちがあって、決心するように思います。当時はまだ相続分譲渡に関する文献もほとんどなく、定説もなかったような記憶ですね。実際の現場では結構使われるか、あるいはあえて文書化しないで口頭合意でやっていたかもしれませんが。

 

この最高裁判決でより明確になったと思います。相続分の譲渡をチョイスとして考える人も増えるのではと思います。

 

父の相続の場合母が2分の1の相続分を譲渡(父・母逆もありますね)することは有効であり、この移転に贈与税が別途かかるわけではないのです。一つの議論として、譲渡人がその相続分全部を譲渡したとき、遺産分割の当事者の地位を残しているかが問題になりますが、確立した定説はないかもしれません。私は譲渡の意図や法的性質から、譲渡人がいなくても遺産分割は有効にできると考えます。さて、最近の実務を検討していませんが、どうでしょうかね。

 

今回の最高裁判断は、父ではなく母の相続のとき、相続分の譲渡を贈与として取扱い、その遺産価値に相当する利益を受けたと言うことで、母の遺産が現存していなくても、他の子はこの相続分に相当する経済的利益を特別受益の対象となる贈与額として遺留分減殺請求できるとしたのですが、合理的な判断ではないかと思います。

 

今日はこのへんでおしまい。また明日。

 

 

 

 

 

 

 

 


地面師リスクと専門家の役割 <地面師事件 なぜ、積水ハウスはだまされたのか>などを読みながら+補充

2018-10-19 | 職業における倫理性

181019 地面師リスクと専門家の役割 <地面師事件 なぜ、積水ハウスはだまされたのか>などを読みながら

 

今日はちょっとしたことで仕事がはかどらず資料探しなどで時間を使いかなり憔悴気味でした。ただ、弁護士特約で依頼のあった交通事故の訴訟提起にかかわる着手金について、2ヶ月前に申請していたのが、保険会社による審査がやっとおり、入金されるとの連絡を受け、少し気分を取り戻しました。弁護士特約事件では示談交渉くらいでは着手金は報酬金と一緒に請求しますが、訴訟となると手間と時間がかなりかかりますので、それに専門家のサポートも必要な事案なので、保険会社の対応待ちでした。

 

疲労感が残っているので、本日のお題について考える気分にはならない状況で、最近また紙面を賑わせている積水ハウス地面師事件を取り上げてみようかと思います。

 

一昨日の毎日記事<地面師事件なぜ、積水ハウスはだまされたのか>は、誰もが疑問に思うことを取り上げているので、読みましたが、なにか釈然としないのです。以前、この事件については取り上げたことがあり、そのときは社内事情を紙面が問題にしていたので、その観点から言及しました。今度はどうかと思って読んで見ると、どうも隔靴掻痒なのです。

 

とりあえずその記事をフォローします。

<大手住宅メーカー「積水ハウス」(大阪市北区)が東京・西五反田の土地取引をめぐって約55億円をだまし取られた事件で、警視庁捜査2課は偽造有印私文書行使容疑などで地面師グループ8人を逮捕し、ほかにも数人の逮捕状を取った。>

今回のニュースが警視庁が地面師グループの多くを逮捕し、本格的な捜査に入ったことが契機のようです。

 

<事件の全容解明はこれからだが、・・・なぜ、積水ハウスはだまされたのか。同社の調査対策委員会が今年1月にまとめた報告書や関係者の証言から、一連の経過を追った。【五十嵐朋子、佐久間一輝、黒川晋史】>ということで、ネタは内部調査報告書(公表されたのかしら)と関係者証言と言うことです。

 

地面師に狙われた対象物件は<JR五反田駅からほど近いビル街に、うっそうとした樹木に覆われた一角がある。戦前から続く老舗旅館だった土地で、現在の建物は1954年に建てられた。大手ホテルチェーンなどが台頭する中、営業を続けていたが、数年前に廃業。>というのですから、ここから数年前まで老舗旅館として営業されていた土地建物ということがわかります。五反田駅周辺は90年代後半ないし2000年頃から飛躍的に開発の波がやってきて変貌著しい環境ですね。

 

売買経緯は<事件は2017年3月、「旅館の跡地が売りに出されている」という情報を積水ハウスの担当者が耳にし、・・・翌月18日に阿部俊則社長(当時)が物件を視察し、20日には取引を進める決裁を出した。担当者らは売買話を持ちかけてきた仲介業者を通じて「所有者」を装った女と接触し、同24日に63億円での売買契約が成立した。>

 

さすが大企業ですね、素早い対応です。でも<不動産業者の間では「のどから手が出るほど欲しいが、地主が首を縦に振ってくれない土地」として有名だった。>というのですから、地主の意思がなぜ変わったのかといった基本的な確認がされたでしょうか。

 

売買成立後直ちに仮登記をしたようです。

<自身の土地が仮登記されたことを知った「本当の所有者」(当時72歳、昨年6月に死去)だという人物が5月上旬、同社に内容証明郵便を送って来たのだ。「売買契約をしていないのに仮登記された」と、登記の取り消しを求める内容だった。>

 

こういった内容証明郵便は、相手が上場企業ですし、地主が高齢で病床にあったというのですから、弁護士からのものと思われます。所有者の行為ではないとして仮登記の取消を求める内容ですから、通常、顧問弁護士に対応を相談し(金額が大きいですし、地主の本人性や意思確認の必要からいえば売買成立前に必要です)、より慎重な対応が求められる事態です。

 

<内容証明は4回にわたって届いた>というのに、<積水側は「取引を妨害したいがための嫌がらせ」と解釈してしまった。>といった認識になること自体、異常な事態ではないかと思います。

 

ただ、地主側代理人としても、4回も内容証明を出すことはどうなんでしょうね。それだけ緊急を要すると考えていたのだと思われますが、そうであれば仮処分申立をするのが本来であったように思います。あるいは地主が病気で十分な意思疎通ができなかったのかもしれませんが、普通は4回も立て続けに出す前に、大企業とはいえ相手がかなりいい加減な対応をしていて、売買を実行し本登記手続をすることが相当程度予測しうる事態であったと思われますから、まずは仮差止めでしょうね。

 

あるいはどうせ地主本人の意思に基づかない無効な売買契約だから、本登記しても抹消登記手続請求によって原状回復できるので、被害回復は後からでもできると踏んだのかもしれませんが・・・このあたりは地主側弁護士の弁を聞いてみたい気もします。ま、ノーコメントでしょうか。

 

それより何より<土地登記の申請を審査していた法務局は6月9日、印鑑証明などが偽造されていることを見抜き、申請を却下した。この段になって初めて、積水ハウスは地面師詐欺の被害に遭っていたことに気付いた。>というお粗末さは当然ですが、ここで不思議なのは司法書士です。

 

登記手続の専門家である司法書士は、本人かどうかの確認、本人意思の確認、登記手続に必要な委任状の署名が本人によるものか、印鑑証明書が適正なものかどうかなど、プロフェッショナルとして、極めて慎重です。他方で、そういった注意義務を怠ると、損害賠償責任を負うのは当然です。

 

で、<被害額はグループ側が同社からマンションを購入するとして相殺した7億5000万円を除いた55億5000万円。同社は9月、詐欺容疑で警視庁へ刑事告訴した。>

 

ということですから、仮登記は申請通りに行われ、登記されたのですね。すると登記義務者である地主の承諾書と印鑑証明書を添付していると思いますが、まずこの時点で司法書士がどのようなチェックをしたかです。ただ、登記官も見逃していたことになりますから、見事な偽造だったと言うことでしょうか。印鑑証明書の偽造なんでできるのかと思うのですが、それも司法書士、登記官が見逃すとは・・・

 

本登記の時は、登記官が見破ったようですね。ただ、地面師グループにとってはすでに売買代金が支払われており、時すでに遅しですね。

 

毎日記事<積水ハウス土地詐欺被害 地面師スカウト役も 所有者役が誕生日、えと間違う>では、本人なりすましの問題が取り上げられ、次のような確認の経緯が取り上げられています。

 

<捜査関係者によると、羽毛田容疑者は昨年5月31日、売買契約が成立した後の本人確認の手続きで司法書士にえとを聞かれ、本当の所有者(当時72歳、昨年6月に死去)のえとではない答えをした。誕生日も正確に言えなかったが、偽造パスポートなどの本人確認書類がそろっていたことから手続きは続行され、翌日には手付金などを除く約44億円を受け取った。>

 

上記情報が正確であったとして、司法書士は、えとや誕生日を質問しながら、それが正確に答えられていないのに、羽毛田容疑者を本人と信じたようですが、それは疑問です。少なくとも認知症を疑って、判断能力の確認として簡易な長谷川式による質問をも検討するか、やはり本人性をしっかり確認する質問をすべきでしょう。数年前まで旅館経営をしていたというのですから、経営状態やあれだけの老舗旅館ですから常連客などを質問することくらいは普通でしょう。

 

偽造パスポートがどのような作り方なのか分かりませんが、仮に簡単に分からないほど精巧なものであったとしても、その渡航歴を確認することも必要だと思います。おそらくデタラメな内容だと思われます。

 

印鑑証明書は偽造でしょうから、実印とされるものも偽造でしょう。こういった印鑑証明書を精巧に作れるものなんでしょうかね。うーん。登記官もいったんはだまされたか、そこが不思議です。

 

ただ、この本人確認は、さほど難しくないはずだと思います。羽毛田容疑者は旅館経営の経験もないわけですから、ちょっと話せばすぐにばれるはずです。だいたい、誕生日も干支といった詐欺師として最低限度の知恵もないわけですから、すぐに化けの皮が剥がれるタイプですね。それをなぜ見逃したか不思議です。

 

今日はそんな不思議を書いてみました。このへんでおしまい。また明日。

補充

 

先日書いたこのブログでは捜査段階なので、事実関係が分からないまま隔靴掻痒であるとこぼしました。その謎解きで、道具屋の証言を取り上げてその一部を推測しています。

 

今朝の毎日記事<積水ハウス土地詐欺被害 作れぬ書類ない 精巧偽造、地面師も助長 旅券、印鑑 分野ごとに「道具屋」>では、詐欺の手口のうち、偽造パスポートと印鑑証明書の作成について、取り上げています。

 

<「作れないものはない」。今回の事件には関与していないが、印鑑作製などの依頼を請け負っているという男が、手口の一端を明かした。【五十嵐朋子、佐久間一輝】>

 

その話によると<印鑑を作る際は依頼主から印影のコピーを受け取る。それを旧知の印鑑業者に発注すると、早ければ1時間で印鑑が完成する。>たしかに印影のコピーがあれば、印影通りの印鑑を作ることはさほど難しくないのかもしれません。実際、そういった偽造を防ぐため、公文書はもちろん私文書でも印影部分は第三者に示すとき黒塗りにしています。

 

ただ、その印影をどのようにして入手したのか、そこが不思議ですね。不動産登記申請添付書類には印鑑証明書等印影が分かる文書がいくつか添付されていますが、その閲覧謄写は利害関係人とその代理人しか通常できません。弁護士や司法書士は、その立場で印影が本人のものか、委任状の署名が本人の筆跡と符合するかを調べることがあります。本件ではどのような経路で誰が入手したか、これもこれからの捜査で追求されるところでしょう。

 

次に印鑑証明書は、記事によれば、別の実印を作って登録したようです。

<積水ハウスの事件では、地面師グループは偽造した身分証で本人になりすまし、役所で新たに別の印鑑を実印として登録。その後に発行された「真正」の印鑑証明書を悪用する手口だった。>