
ムク犬さんがね、いいんですよ。
よく見ると目がくりくりしていて、若君とさほど年は変わらないと思うんです。
きっと護衛兼、若君の話し相手として側に置かれているんですね。
茶葉のありかを当てちゃったとき、「もう1回」と慌てますが、
あれは「もう1回やってください、間違えますから」という意味で間違いない。
若君を喜ばせるためならどんなマヌケなこともやっちゃえるムク犬さんが好きさ。
《あらすじ》
チョルチュ一味を始末し、娘たちは解放されたが、爆薬を得る手立ては失われてしまった。
ヨンムンを疑っていた史曹判書だが、ノ尚君の弁明を受け入れるしかない。
人身売買を見逃していたのは政府の手落ちなのだから。
煙の中、ギルドンは官軍に追われ逃げようとするが、現場にきたウネと鉢合わせてしまう。
「なぜここへ来た?」
ウネはギルドンをとらえようとしたイニョンを瓶で殴り倒し、一緒に逃げようとする。
官軍に囲まれたギルドンは、仕方なく彼女を人質として扱い、囲みを突破する。
「盗賊の味方と思われるより、人質の方がましだろう」
ウネを連れてからくも逃げ出したギルドンは、廃屋に隠れた。
彼女の足が血に染まっているのを見て、傷の手当てをしてやる。
「あなたのために怪我をしたのだから、痛くないわ」
ウネがギルドンへの想いをつのらせるが、ギルドンは冷静だ。
彼は今でもイノクの守り袋を肌身離さず持ち歩いている。
「お前は一線を越えてしまった。これ以上はダメだ。お前の世界へ戻れ」
ウネは、最後に一度だけ会って欲しいと頼む。引き際は心得ているつもりだから。
チョルチュを成敗して娘を助けたのは、ギルドンとチャンフィだが、
ギルドンは表舞台に出ることはできない。
手柄はヨンムンのものとなり、イノクに褒められた王子はほっとする。
イノクがギルドンが生きていることを知らないままだとわかり、複雑な気持ちだ。
チャンフィは、自分のためだと言ってイノクを処理しようとしたノ尚君に会いたくなくて、
商団に帰らずイノクについて歩く。
「家出してるの?ノ様とケンカした?わたしそういえば若君のこと何も知らないわ」
思わずほほえむチャンフィ。
「時間のつぶし方を教えてくれ。そうしたら私の名を教えよう」
ふたりは町をぶらぶらと歩いて、一時穏やかな時間を過ごすのだった。
左議政は、娘ウネが人質になったと知り、ノ尚君に助けを求める。
嫁入り前の娘に悪い噂が立っては困るのだ。
しかも、自分からギルドンについて行ったとあってはなおさら表沙汰にはできない。
ギルドンと別れたウネはヨンムンの手のものに保護され、ノ尚君を通して父の手に戻った。
これでノ尚君は、左議政の弱みを握ったことになる。
左議政は、ノ尚君にギルドンの抹殺を依頼した。
娘たちは無事親元に帰り、チョンが代表して挨拶に来た。
皆は喜んで、彼らを活貧党(ファルビンダン)と呼んでいる。
貧しい彼らを力づけてくれたから。
なんだか嬉しくなる仲間たち。
「盗賊は盗賊さ」とつぶやくギルドン。
後はみなが無事に都を脱出するだけだ。
長かった一日が終わり、チャンフィはイノクに自分の名前を教えた。
彼女が知っていてくれれば、道を誤らないですむと思うから。
「若君、もしかして私を好きになったの?あ、いや、私はただ……」
「鈍感なことに気付かないほど鈍感なお前が気付いたということは相当だな。
考えてみろ」
にっこり笑ってチャンフィは立ち去った。
ややこしいことを言われて頭がこんがらがってしまうイノクだが、
若君の名前を教えてもらってちょっと嬉しい。
王子は、進むべき道を探しているという。
後から悔やんだとき、戻るべき道まで見失いたくない。
イノクの目を通せば、自分が目を背けてきたものが見える気がする。
ギルドンにも言われた言葉を考え続けている。
イノクはギルドンの色眼鏡のことを思い出し、チャンに会いに行った。
「じゃ残りはまだ倉庫にあるね、今から探しにいこう!」
「あの方が言った通り無鉄砲な人ね」
「え?私のことを知ってる人なの?」
イノクは、月下の侠客が自分の知っている人間だと気付いて、廃屋にかけて行く。
「ちょっと!月下の侠客!私がマヌケだからって気付かないとでも思ったの!」
そこにはちょうど、あの衣装を着たスグンが……。
「月下の侠客って、党首でしょ!」
「……あ、ああ、久しぶりだな、子鹿」
「やっぱりそうだと思ったー!やるじゃん!党首!」
まさかバレたのかと思いきや、イノクはやっぱり鈍感だった。
物陰に隠れて、ほっとしたようなギルドン。
ウネは、ギルドンに刺繍入りの巾着袋を作ろうと用意する。
次の満月、最後の時に彼に渡せるように……。
イノクはスグンと酒を飲み、近況を語り合う。
スグンはひやひやだが、イノクの勘違いにのって酒に付き合った。
昔話に花が咲くが、ギルドンの名前は禁句だ。
「平気か?」
「残された人は生きていかなくちゃ」
「忘れられたのなら、よかったよ」
イノクがヨンムンに雇われて、若君に惚れられているようだときいて、穏やかでないギルドン。
「昼間はぎゅっと抱きしめられた」
「お、お前の気持ちはどうなんだ?」
「そんなことはいいじゃない、飲んで飲んで!」
飲み過ぎたイノクに、別れを告げるスグン。
「党首といるとギルドンの話ができて嬉しいのよ」
「忘れられないのか?」
「あ……ギルドンのことは思い出しちゃいけないんだっけ。私ったらマヌケなんだから」
「いいじゃないか、ギルドンは死んだけど、たまには思い出してやればいい」
「ダメなの。ギルドンのことを思い出したら、生きていけないもん。
眠れないし、食べられないし、涙ばかり流れるの。
夢かうつつか、いつもギルドンが現れる。一緒に行こうっていっても、いつも消えてしまう。
目が覚めるとまた涙が出て、生きてる心地がしないの。
生きたいから、生きるために、忘れることにしたの。
仕方ないもん。虎の穴ならついていけるけど……」
イノクの目から、どんどん涙があふれてくる。
ギルドンは静かに彼女の言葉を聞いている。
「でもマヌケだから、時々ギルドンのことを思い出しちゃう。
そうするととっても胸が痛くなって生きていけないの……。
心もマヌケになってくれればいいのに……」
ギルドンの目からも、涙が一筋こぼれた。
イノクの祖父は、孫娘の出自を調べようとあちこち聞き回っている。
そして酔いつぶれたイニョンを送り届けた際に、史曹判書の言葉を聞いた。
この声は!はっきりと思い出す。
「あいつだ」
スグンは先に戻ったが、ギルドンは眠ってしまったイノクの近くでまだ彼女を見つめている。
イノクは目を覚まして、さっき見たギルドンの幻影を思い出している。
「またギルドンの夢を見たんだ……ここに座ってたな」
そっと柱を撫でたイノクは、そこに残る温かさを感じ、外に走り出た。
するとそこには、いつもの様子でぶらりと歩くギルドンの姿が。
「ギルドンア!本物だ……ギルドンでしょ!ほんとにギルドンでしょ!」
ゆっくりとふりむくギルドン。
「夢じゃなさそう……夢かな?」
「夢じゃない」
「じゃ、幽霊かな?」
「幽霊じゃない」
「じゃ、ホントにギルドン?」
「マヌケ……」
イノクはギルドンに抱きついて、子どものように大声で泣いてしまう。
ギルドンはただ、遠くを見つめている。
(つづく)
ううっ……涙、涙の第12話。
ここのタイトルが「活貧党結成」でいいのか?
チャンフィとイノクとギルドンと、ウネの想い、ちょこっとイニョンの想い。
人を恋したり、愛したり、若者の特権ではないですが、
こういう感情に燃えている時期が、生物としての旬かもしれませんなー。
もう!チャンフィ王子にワクワクですよ。
昔も今も、若者たちの町歩きデートは定番なのか。
蒸しまんじゅうを買い食いしたり、露天をひやかしたり、
イノクと王子はなかなか楽しそうなんだよねぇ~。
とにかく王子の状態が普通じゃなさそう、と心配していたイノクですが、
王子が自分に惚れていることにやっと気付いた様子。
「鈍いお前に気付かれるとはよっぽどだ」ということですが、
素直に「お前が好きだ」と言ってあげればいいのに。
王子ったら、シャイなんだから。
そのへんは男同士、ムク犬さんには正直な心境を打ち明けちゃう王子なのでした。
カワイイわぁ~。

イノクはなんて言うだろう?と不安そうなチャンフィ。

褒められてほっとしています。カワイイ。
前回、イノクをギュって抱きしめたときには、
彼の激しい感情に心揺さぶられたのですが、
今回見ると、彼の幼さというものをすごく感じましたね。
若さ、かなぁ、幼さ、かなぁ、微妙なお年頃ですけれども。
「ぼくのものだっ!」みたいな感じ?
彼の初恋だものね。
イノクを好きな気持ちは理屈じゃないけど、
自分が良い王になるための導き手だとも感じているみたい。
本当の名前まで教えてしまいましたけど、大丈夫かしら……。
「真の名」って、よくファンタジーとか、物語の中に出てくる設定でしょ。
本当の名前は、両親とかそれを付けた人とかしか知らなくて、
その名前を知るものは、その人を支配できる、みたいな。
だから本当の名前というのは、すごく信頼している人にしか教えてはダメだよ、みたいなさ。
言霊信仰とかいろいろあるんでしょうね。
魔除けの意味もあるし。呪いとかかけられても、本当の名前じゃないときかない、とかさ。
ま、そういうのを彷彿とさせる場面ではあったのですけど、
彼の場合は本気で本名知られちゃうとヤバい立場の方なわけで。
イノクは知らんうちに、すっごい大事な秘密を明かされちゃったわけです。
マヌケな娘なので心配よ。
黙っていられるかなー。
ただ単に惚れた!というだけではなく、
王子にとって、イノクの存在がどれほど重要なのかがよくわかるエピソードでしたね。
ノ尚君にバレたら、どれほどお怒りになることか……。
もう想像しただけで怖い。
「高貴な血を引く王子だろうが、卑しい召使いの血を引く王子だろうが、
やってることは変わらん。王座を得るために汚い血をまき散らしている」
現在の王がつぶやく言葉は正しい。
彼は、チャンフィに殺される瞬間を実は楽しみにしていると思う。
俺と同じ血塗られた手で王座を得よ、と思ってるんじゃないか。
そこではじめて、彼は血筋からくる劣等感から解放され、
彼を認めなかった父や家臣、臣民らに「そら見たことか」と言い返せるんじゃないか。
お前たちが蔑んできた血と、あがめていた血、一体何が違うのか、と。
あわれな王。
孤独な王。
チャンフィは、一歩間違えば、兄の二の舞になりかねない怖さをわかりかけている。
だからこそ、イノクを側に置きたい。
ノ尚君は理解できるでしょうかね~。
「今は自分の内面を見つめたい」いう王子を待てるでしょうか?

鼻筋は通っているのにだんごっぱな気味なところがかわいさを醸し出していると思う。
ギルドンは、さすがに経験者だけあって、恋愛問題には余裕の対応。
同じく初恋に夢中になってしまっているウネお嬢様をうまくあしらってます。
動揺を見せるのは、イノクのきんちゃく見られちゃった時くらいかな。
自分に向けられるウネの激しい想いには少し戸惑い気味だけど、
お嬢さんの気まぐれだ、と思ってるし、
すべてを捨ててウネがこっち側へ来ることはないとわかっているからこその余裕かもしれませんね。
ウネはウネで、自分の恋は成就しない、ということはわかってる。
最後に1回だけ会いたい。
その時、刺繍入りのきんちゃく袋を渡したい。
大事にしてくれるかはわからないけど。
わがままお嬢様だけど、自分の限界をよくわかってるとこは好感が持てます。
一時の感情ですべてを捨ててついて行っても、すぐ根をあげそうだもんね。
ハルモンいないと何もできないじゃん?
でもその最後の1回で、事件が起こりそうな予感なんだなぁ。
経験豊富なギルドンも、恋ははじめてだと思うのよ。
だからイノクに対しては、ぜんぜん冷静でいられないのよね。
大切な女だから、危険が及ばないように、身を引いた。
そこまではすごい!冷静!深い愛だよね!
本当に愛する人の幸せを想ってのことだもん。つらいのに。
でも、イノクを大好きだからさ、できれば側にいたいからさ、
別れがたくていつまでも影に隠れてイノクの話を聞いちゃう。
そこで彼女の本音が炸裂ですよ。
無理にでも忘れないと、自分が生きていけないから、忘れるんだ、と。
今でもギルドンを思い出すと涙があふれてとまらなくて、すごくつらいんだ、と。
もうここでギルドン、冷静そうに見えて冷静じゃないと思うの。
自分から「俺は生きてるよ」って絶対言えないけど、
無意識では、イノクに見つけてほしいと思ってる気がするの。
だってさ、本気で見つけてほしくなかったらさ、
もっとはやく立ち去ったっていいじゃない。
もちろん、ここで会わせるのは脚本家ホン姉妹の計算ですよ?
計算ずくですけども!
なんかギルドンがぐずぐずしてたのは、
彼の無意識の結果だと思いたいんだー!
自分だってそういうことあるでしょ?
ダメだとわかっているけど、なんかグズグズしちゃうとき。
バレたらバレたでいいや!と思ってたわけじゃないけど、
偶然だったんだもん、仕方ない、って自分で言い訳しちゃうときとかさ!
イノクがいくら幸せそうに見えたって、
ギルドンを忘れたように見えたって、それは見せかけだってわかったでしょ。
自分がいない世界では、彼女は本当の意味でしあわせになれないってわかったでしょ。
まじで死んじゃったら仕方ないけど、生きてるんだから。一緒にいればいいじゃん……。
もうイノクがだんだん泣きながら話をするの見ていてわたしも泣けちゃった。
スグンのいたたまれない気持ちがよくわかる……。
イノクはほんとにギルドンが好きなんだね。
チャンフィ王子には申し訳ないけど、ふたりを引き離すなんて無理だよね。
もう、最後の「モンチョンイ……」に万感の想いが込められていて泣ける。
ギルドンの声がやさしーんだもの。
イノクもわあわあ泣いちゃってさ。
でも、がしっとイノクを抱きしめられないギルドンがまたセツナス。
え?イニョン?
あいつもさー、ウネお嬢さんを好きな気持ちは一途だな、って
ちょっと感動したんだけど、
きついこと言われて発憤するかと思いきや、すぐにお酒に逃げたじゃん。
あれでチョーがっかりだよ。ちょっとは見直せるかもと思ったのに。
イノクのじいちゃんが、ギルドンパパの正体に気付きましたね。
彼女の出生の秘密はいつ明らかになるのかな?
活貧党って名前がついて、反政府軍みたいな扱いになっちゃうのかな?
チャンフィはもうちょっと潜伏するみたいだけど、
ノ尚君は何を考えているのかな?ウネが爆弾のかわりになる?
今回は恋模様中心のおはなしだったですが、
政治的な方面で次回は進展がありそう~。
よく見ると目がくりくりしていて、若君とさほど年は変わらないと思うんです。
きっと護衛兼、若君の話し相手として側に置かれているんですね。
茶葉のありかを当てちゃったとき、「もう1回」と慌てますが、
あれは「もう1回やってください、間違えますから」という意味で間違いない。
若君を喜ばせるためならどんなマヌケなこともやっちゃえるムク犬さんが好きさ。
《あらすじ》
チョルチュ一味を始末し、娘たちは解放されたが、爆薬を得る手立ては失われてしまった。
ヨンムンを疑っていた史曹判書だが、ノ尚君の弁明を受け入れるしかない。
人身売買を見逃していたのは政府の手落ちなのだから。
煙の中、ギルドンは官軍に追われ逃げようとするが、現場にきたウネと鉢合わせてしまう。
「なぜここへ来た?」
ウネはギルドンをとらえようとしたイニョンを瓶で殴り倒し、一緒に逃げようとする。
官軍に囲まれたギルドンは、仕方なく彼女を人質として扱い、囲みを突破する。
「盗賊の味方と思われるより、人質の方がましだろう」
ウネを連れてからくも逃げ出したギルドンは、廃屋に隠れた。
彼女の足が血に染まっているのを見て、傷の手当てをしてやる。
「あなたのために怪我をしたのだから、痛くないわ」
ウネがギルドンへの想いをつのらせるが、ギルドンは冷静だ。
彼は今でもイノクの守り袋を肌身離さず持ち歩いている。
「お前は一線を越えてしまった。これ以上はダメだ。お前の世界へ戻れ」
ウネは、最後に一度だけ会って欲しいと頼む。引き際は心得ているつもりだから。
チョルチュを成敗して娘を助けたのは、ギルドンとチャンフィだが、
ギルドンは表舞台に出ることはできない。
手柄はヨンムンのものとなり、イノクに褒められた王子はほっとする。
イノクがギルドンが生きていることを知らないままだとわかり、複雑な気持ちだ。
チャンフィは、自分のためだと言ってイノクを処理しようとしたノ尚君に会いたくなくて、
商団に帰らずイノクについて歩く。
「家出してるの?ノ様とケンカした?わたしそういえば若君のこと何も知らないわ」
思わずほほえむチャンフィ。
「時間のつぶし方を教えてくれ。そうしたら私の名を教えよう」
ふたりは町をぶらぶらと歩いて、一時穏やかな時間を過ごすのだった。
左議政は、娘ウネが人質になったと知り、ノ尚君に助けを求める。
嫁入り前の娘に悪い噂が立っては困るのだ。
しかも、自分からギルドンについて行ったとあってはなおさら表沙汰にはできない。
ギルドンと別れたウネはヨンムンの手のものに保護され、ノ尚君を通して父の手に戻った。
これでノ尚君は、左議政の弱みを握ったことになる。
左議政は、ノ尚君にギルドンの抹殺を依頼した。
娘たちは無事親元に帰り、チョンが代表して挨拶に来た。
皆は喜んで、彼らを活貧党(ファルビンダン)と呼んでいる。
貧しい彼らを力づけてくれたから。
なんだか嬉しくなる仲間たち。
「盗賊は盗賊さ」とつぶやくギルドン。
後はみなが無事に都を脱出するだけだ。
長かった一日が終わり、チャンフィはイノクに自分の名前を教えた。
彼女が知っていてくれれば、道を誤らないですむと思うから。
「若君、もしかして私を好きになったの?あ、いや、私はただ……」
「鈍感なことに気付かないほど鈍感なお前が気付いたということは相当だな。
考えてみろ」
にっこり笑ってチャンフィは立ち去った。
ややこしいことを言われて頭がこんがらがってしまうイノクだが、
若君の名前を教えてもらってちょっと嬉しい。
王子は、進むべき道を探しているという。
後から悔やんだとき、戻るべき道まで見失いたくない。
イノクの目を通せば、自分が目を背けてきたものが見える気がする。
ギルドンにも言われた言葉を考え続けている。
イノクはギルドンの色眼鏡のことを思い出し、チャンに会いに行った。
「じゃ残りはまだ倉庫にあるね、今から探しにいこう!」
「あの方が言った通り無鉄砲な人ね」
「え?私のことを知ってる人なの?」
イノクは、月下の侠客が自分の知っている人間だと気付いて、廃屋にかけて行く。
「ちょっと!月下の侠客!私がマヌケだからって気付かないとでも思ったの!」
そこにはちょうど、あの衣装を着たスグンが……。
「月下の侠客って、党首でしょ!」
「……あ、ああ、久しぶりだな、子鹿」
「やっぱりそうだと思ったー!やるじゃん!党首!」
まさかバレたのかと思いきや、イノクはやっぱり鈍感だった。
物陰に隠れて、ほっとしたようなギルドン。
ウネは、ギルドンに刺繍入りの巾着袋を作ろうと用意する。
次の満月、最後の時に彼に渡せるように……。
イノクはスグンと酒を飲み、近況を語り合う。
スグンはひやひやだが、イノクの勘違いにのって酒に付き合った。
昔話に花が咲くが、ギルドンの名前は禁句だ。
「平気か?」
「残された人は生きていかなくちゃ」
「忘れられたのなら、よかったよ」
イノクがヨンムンに雇われて、若君に惚れられているようだときいて、穏やかでないギルドン。
「昼間はぎゅっと抱きしめられた」
「お、お前の気持ちはどうなんだ?」
「そんなことはいいじゃない、飲んで飲んで!」
飲み過ぎたイノクに、別れを告げるスグン。
「党首といるとギルドンの話ができて嬉しいのよ」
「忘れられないのか?」
「あ……ギルドンのことは思い出しちゃいけないんだっけ。私ったらマヌケなんだから」
「いいじゃないか、ギルドンは死んだけど、たまには思い出してやればいい」
「ダメなの。ギルドンのことを思い出したら、生きていけないもん。
眠れないし、食べられないし、涙ばかり流れるの。
夢かうつつか、いつもギルドンが現れる。一緒に行こうっていっても、いつも消えてしまう。
目が覚めるとまた涙が出て、生きてる心地がしないの。
生きたいから、生きるために、忘れることにしたの。
仕方ないもん。虎の穴ならついていけるけど……」
イノクの目から、どんどん涙があふれてくる。
ギルドンは静かに彼女の言葉を聞いている。
「でもマヌケだから、時々ギルドンのことを思い出しちゃう。
そうするととっても胸が痛くなって生きていけないの……。
心もマヌケになってくれればいいのに……」
ギルドンの目からも、涙が一筋こぼれた。
イノクの祖父は、孫娘の出自を調べようとあちこち聞き回っている。
そして酔いつぶれたイニョンを送り届けた際に、史曹判書の言葉を聞いた。
この声は!はっきりと思い出す。
「あいつだ」
スグンは先に戻ったが、ギルドンは眠ってしまったイノクの近くでまだ彼女を見つめている。
イノクは目を覚まして、さっき見たギルドンの幻影を思い出している。
「またギルドンの夢を見たんだ……ここに座ってたな」
そっと柱を撫でたイノクは、そこに残る温かさを感じ、外に走り出た。
するとそこには、いつもの様子でぶらりと歩くギルドンの姿が。
「ギルドンア!本物だ……ギルドンでしょ!ほんとにギルドンでしょ!」
ゆっくりとふりむくギルドン。
「夢じゃなさそう……夢かな?」
「夢じゃない」
「じゃ、幽霊かな?」
「幽霊じゃない」
「じゃ、ホントにギルドン?」
「マヌケ……」
イノクはギルドンに抱きついて、子どものように大声で泣いてしまう。
ギルドンはただ、遠くを見つめている。
(つづく)
ううっ……涙、涙の第12話。
ここのタイトルが「活貧党結成」でいいのか?
チャンフィとイノクとギルドンと、ウネの想い、ちょこっとイニョンの想い。
人を恋したり、愛したり、若者の特権ではないですが、
こういう感情に燃えている時期が、生物としての旬かもしれませんなー。
もう!チャンフィ王子にワクワクですよ。
昔も今も、若者たちの町歩きデートは定番なのか。
蒸しまんじゅうを買い食いしたり、露天をひやかしたり、
イノクと王子はなかなか楽しそうなんだよねぇ~。
とにかく王子の状態が普通じゃなさそう、と心配していたイノクですが、
王子が自分に惚れていることにやっと気付いた様子。
「鈍いお前に気付かれるとはよっぽどだ」ということですが、
素直に「お前が好きだ」と言ってあげればいいのに。
王子ったら、シャイなんだから。
そのへんは男同士、ムク犬さんには正直な心境を打ち明けちゃう王子なのでした。
カワイイわぁ~。

イノクはなんて言うだろう?と不安そうなチャンフィ。

褒められてほっとしています。カワイイ。
前回、イノクをギュって抱きしめたときには、
彼の激しい感情に心揺さぶられたのですが、
今回見ると、彼の幼さというものをすごく感じましたね。
若さ、かなぁ、幼さ、かなぁ、微妙なお年頃ですけれども。
「ぼくのものだっ!」みたいな感じ?
彼の初恋だものね。
イノクを好きな気持ちは理屈じゃないけど、
自分が良い王になるための導き手だとも感じているみたい。
本当の名前まで教えてしまいましたけど、大丈夫かしら……。
「真の名」って、よくファンタジーとか、物語の中に出てくる設定でしょ。
本当の名前は、両親とかそれを付けた人とかしか知らなくて、
その名前を知るものは、その人を支配できる、みたいな。
だから本当の名前というのは、すごく信頼している人にしか教えてはダメだよ、みたいなさ。
言霊信仰とかいろいろあるんでしょうね。
魔除けの意味もあるし。呪いとかかけられても、本当の名前じゃないときかない、とかさ。
ま、そういうのを彷彿とさせる場面ではあったのですけど、
彼の場合は本気で本名知られちゃうとヤバい立場の方なわけで。
イノクは知らんうちに、すっごい大事な秘密を明かされちゃったわけです。
マヌケな娘なので心配よ。
黙っていられるかなー。
ただ単に惚れた!というだけではなく、
王子にとって、イノクの存在がどれほど重要なのかがよくわかるエピソードでしたね。
ノ尚君にバレたら、どれほどお怒りになることか……。
もう想像しただけで怖い。
「高貴な血を引く王子だろうが、卑しい召使いの血を引く王子だろうが、
やってることは変わらん。王座を得るために汚い血をまき散らしている」
現在の王がつぶやく言葉は正しい。
彼は、チャンフィに殺される瞬間を実は楽しみにしていると思う。
俺と同じ血塗られた手で王座を得よ、と思ってるんじゃないか。
そこではじめて、彼は血筋からくる劣等感から解放され、
彼を認めなかった父や家臣、臣民らに「そら見たことか」と言い返せるんじゃないか。
お前たちが蔑んできた血と、あがめていた血、一体何が違うのか、と。
あわれな王。
孤独な王。
チャンフィは、一歩間違えば、兄の二の舞になりかねない怖さをわかりかけている。
だからこそ、イノクを側に置きたい。
ノ尚君は理解できるでしょうかね~。
「今は自分の内面を見つめたい」いう王子を待てるでしょうか?

鼻筋は通っているのにだんごっぱな気味なところがかわいさを醸し出していると思う。
ギルドンは、さすがに経験者だけあって、恋愛問題には余裕の対応。
同じく初恋に夢中になってしまっているウネお嬢様をうまくあしらってます。
動揺を見せるのは、イノクのきんちゃく見られちゃった時くらいかな。
自分に向けられるウネの激しい想いには少し戸惑い気味だけど、
お嬢さんの気まぐれだ、と思ってるし、
すべてを捨ててウネがこっち側へ来ることはないとわかっているからこその余裕かもしれませんね。
ウネはウネで、自分の恋は成就しない、ということはわかってる。
最後に1回だけ会いたい。
その時、刺繍入りのきんちゃく袋を渡したい。
大事にしてくれるかはわからないけど。
わがままお嬢様だけど、自分の限界をよくわかってるとこは好感が持てます。
一時の感情ですべてを捨ててついて行っても、すぐ根をあげそうだもんね。
ハルモンいないと何もできないじゃん?
でもその最後の1回で、事件が起こりそうな予感なんだなぁ。
経験豊富なギルドンも、恋ははじめてだと思うのよ。
だからイノクに対しては、ぜんぜん冷静でいられないのよね。
大切な女だから、危険が及ばないように、身を引いた。
そこまではすごい!冷静!深い愛だよね!
本当に愛する人の幸せを想ってのことだもん。つらいのに。
でも、イノクを大好きだからさ、できれば側にいたいからさ、
別れがたくていつまでも影に隠れてイノクの話を聞いちゃう。
そこで彼女の本音が炸裂ですよ。
無理にでも忘れないと、自分が生きていけないから、忘れるんだ、と。
今でもギルドンを思い出すと涙があふれてとまらなくて、すごくつらいんだ、と。
もうここでギルドン、冷静そうに見えて冷静じゃないと思うの。
自分から「俺は生きてるよ」って絶対言えないけど、
無意識では、イノクに見つけてほしいと思ってる気がするの。
だってさ、本気で見つけてほしくなかったらさ、
もっとはやく立ち去ったっていいじゃない。
もちろん、ここで会わせるのは脚本家ホン姉妹の計算ですよ?
計算ずくですけども!
なんかギルドンがぐずぐずしてたのは、
彼の無意識の結果だと思いたいんだー!
自分だってそういうことあるでしょ?
ダメだとわかっているけど、なんかグズグズしちゃうとき。
バレたらバレたでいいや!と思ってたわけじゃないけど、
偶然だったんだもん、仕方ない、って自分で言い訳しちゃうときとかさ!
イノクがいくら幸せそうに見えたって、
ギルドンを忘れたように見えたって、それは見せかけだってわかったでしょ。
自分がいない世界では、彼女は本当の意味でしあわせになれないってわかったでしょ。
まじで死んじゃったら仕方ないけど、生きてるんだから。一緒にいればいいじゃん……。
もうイノクがだんだん泣きながら話をするの見ていてわたしも泣けちゃった。
スグンのいたたまれない気持ちがよくわかる……。
イノクはほんとにギルドンが好きなんだね。
チャンフィ王子には申し訳ないけど、ふたりを引き離すなんて無理だよね。
もう、最後の「モンチョンイ……」に万感の想いが込められていて泣ける。
ギルドンの声がやさしーんだもの。
イノクもわあわあ泣いちゃってさ。
でも、がしっとイノクを抱きしめられないギルドンがまたセツナス。
え?イニョン?
あいつもさー、ウネお嬢さんを好きな気持ちは一途だな、って
ちょっと感動したんだけど、
きついこと言われて発憤するかと思いきや、すぐにお酒に逃げたじゃん。
あれでチョーがっかりだよ。ちょっとは見直せるかもと思ったのに。
イノクのじいちゃんが、ギルドンパパの正体に気付きましたね。
彼女の出生の秘密はいつ明らかになるのかな?
活貧党って名前がついて、反政府軍みたいな扱いになっちゃうのかな?
チャンフィはもうちょっと潜伏するみたいだけど、
ノ尚君は何を考えているのかな?ウネが爆弾のかわりになる?
今回は恋模様中心のおはなしだったですが、
政治的な方面で次回は進展がありそう~。
今回はイノクとのデート!チャンフィの笑顔が堪らない回ですね。
苦悩する顔ばっかりだったのに表情がやわらかくなってきて
これまたギャップに萌えちゃうわ~。
しかしイノクの思いの深さにああ、結ばれないんだなって思ってしまうのもこの回でした。
最後のギルドンとの再会は私も感動よ~
あれみるとやっぱり二人一緒じゃなくちゃ!!って思うんだよなぁ。
チャンフィ派のあたしでも応援したくなるわ。
イノクとのデートは、本当に楽しそうで癒やされました。
筆でちょびひげを作って「ムク犬さん」とやるイノク。
こういうデートシーンって、どこまで演技をつけるものなんでしょうか?
あれがアドリブだったら面白いのにね。
韓国ドラマでは、縁についてこだわりを持って描かれますよね。
ギルドンとイノクは悪縁である、はずなのですが、
そんな運命をものともしないふたり。
チャンフィとイノクは良縁のはずなのに……。
王の勅命さえなかったらねぇ。
なんであんな剣を作ったのかな?