骨折で3か月半ほど入院していた母が退院したのもつかの間。
数日後には肺炎で再入院。
「熱もあまり下がらず、食事をとろうとしないこと。今は、流動食にとろみがついたものが出されているが、食べようとしない。食べないことには体力がつかないし~」弟や妹から連絡が来ます。
昨日、見舞いに行きました。
病院で弟夫婦と合流。
本当は、一度に大勢いかなくて、時間差で行きたかったのですが、食事をとらない母にどうにかして食事をとってもらいたいと、弟夫婦が昼ご飯を食べさせに来たのです。
ベッドの母は、私たち3人のことはわかるみたい。
でも、母の声は小さく、あまりにも元気のない声で…。
何を言っているのか聞き取れません。
それにたまに行く私には、母の手振りだけでは何を言いたいのか?理解できずに悲しい。
耳の遠い母には、私たちの言っていることも届いていないし~。
ベッドの柵を外そうとする所作は、家に帰りたいという意思表示でしょう。
口を潤すお茶も、とろみがついています。
誤って食物が気管支に入らないようにということです。
食事が運ばれてきました。
まず、弟の連れ合いが母に食べさせます。
スプーンで口に運びます。
「リンゴのゼリー、口当たりがいいから、お母さん食べてください。」
まったく口を開こうとしない母。再度の挑戦も母の口をあけることはできません。
私にバトンタッチ。
「体力ついたら退院できるよ。」と少し期待を持たせても、ダメ。
次は弟の番。結果は同じ。
そしたら、母が「医者の奥さん。」と私には聞こえましたが、そのようにように呼ぶんです。
その声もだんだん大きくなってきて、何回も「医者の奥さん」を繰り返します。
あんなか細い声しか出なかったのに、どこから出て来るの?その声!
3人ともびっくりです。
呼び声の先には…、
若い看護師さんなのかヘルパーさんなのか、男性の患者にご飯を食べさせています。
母の再三の呼びかけに気付いた若い子が、男性の食事の手を休めて母のところへ来てくれました。
彼女が母に食事を与えると、なんと!なんと!食べるではありませんか!顔をしかめながらも口は開けるんです。
「さすが、ベテランさん。食べさせ方がうまいですね。」私は実の娘が食べさせられない体裁悪さをこのような言葉で繕って?
そして、彼女に本当に感謝です。
結局1/3程食べたんです。
これは「たまにしか見舞いに来ないあんたたちより、私はここの病院で、いつも自分の世話をしてくれている人のほうがいいんだよ。」と母に言われているようでした。
それは、母の長年の処世術なのでしょうか?
いかに普段手厚く看護してくださっているかが、うかがい知れる一場面でした。
私たちがどのように思われようと、とにかく少しずつでも良いから食事をとり、体力をつけて欲しい…それが今の愚娘・愚息の願いです。