silly ski squadronスキー雑記

バカなスキー集団。スキーならなんでもやります京都方面本部。
突撃我ニ続ケ!!

こんなシンポジウムは危険だ

2010年11月08日 00時33分53秒 | 糖尿・メタボリック・自転車
まずいつも通り言葉遣いは厳格に。
シンポジウムの意味から調べましょう。
Yahoo辞書(大辞泉)より:『聴衆の前で、特定の問題について何人かが意見を述べ、参会者と質疑応答を行う形式の討論会。語源はギリシャ語のシンポシオンから。』

差はあれ、どの辞書も似たり寄ったりの内容です。

さていつどこでとはいいませんが、とてもシンポジウムとは呼べないものに参加してきました。
私たちの業界にはシンポジウムにも色々ありまして、各学会総会などが主催するシンポジウムがおそらく一番フェアなものだと思います。
それは薬剤会社の影響を受けにくい、誰でも学会員は参加して質疑応答を行うことが出来るからです。
今回のシンポ(以下シンポと略)は、まあT薬品とでもしときましょうか。が後援のもの。
シンポと名打ってはいても、販売促進目的の交通費、宿泊付きのものです。要するに『これこれこういう製品を開発、発売しましました。つきましては メリットを知って頂きたいので是非お越し下さい。オピニオンリーダーの講演もあります』って感じで、じゃあそのメリットとはなんですかいな?、と割り切っ てあまりアカデミックになりすぎず聴くものです。
ジャッジがいるわけでもなく座長もそのメーカーの趣意に沿ったことを話すことになります。
と云いますか、メーカーの意図に沿った研究者を呼んで話して貰うと言った方が良いでしょう。
今回は二種類の薬剤がメインです。チアゾリシン系薬剤とDPP-4阻害剤。

オープニングリマークス(開会の辞)と基調講演は、どちらも業界での有名人。間違いなく賢いオピニオンリーダーたちです。
話はとてもためになりました。知ってることが多かったですけど。

次に続くパネルディスカッション。パネラーは3人。
A:一番目は薬のメカニズムや最近の日本人の栄養状態の動向など。
B:二番目はたぶん開業してる人の、症例呈示。
C:三例目は循環器からみた二薬剤の可能性。
で、クロージングリマークスに続いて発売会社社長の謝辞。

以上の流れをみると販促って目的が強く、学術的シンポとは違うのがお分かりだと思います。
まあ普通はそれでいいのだ。
でも今回は問題点が二つある。いや三つある。いや四つある。すみません五つある。

※まずA。日本人の心血管イベントを抑制する方法は二つある。アディポネクチンを多くすれば抗酸化され動脈硬化を防ぎ長寿が得られる。
それは(端折りすぎにしても)まあいい。
ただアディポネクチンを上げるには二つの方法があり、片方は運動と食事制限。もう一つはチアゾリシン系薬剤を服用すること。
間違いじゃないけど等価に並べるのはおかしい。まずは運動と食事でしょう。
※次B。この二薬剤を使ったらこんなに効果がありましたという一例報告を数例。いずれも極端に血糖を下げすぎている。特にその中の一例はいきなり三剤併用です。薬剤で急激に血糖を下げると思わぬ網膜出血や神経障害が出るのは常識。
特にDPP-4阻害剤は凄くよく効くので、実際に使用して『うわ、下がりすぎる!投与量半分に』と冷や汗が出ることがある。
なので結果として下がってしまったのだと思うが、それを『こんなによく効くんですよ~』とプレゼンするのは非糖尿病専門医相手には危険ではない か?専門医ならこの薬の切れ味を知っているし『ああ下がっちゃったんだろうなあ』で済むが、そうでない人たちは『こんなにいいのなら即、常用量から使って みよう~!低血糖のリスクも低いんだし』となる可能性大。
(同じ作用のGLP-1注射薬を非専門医が使って高血糖による死亡例が出たのは耳新しい)
参加したみなさんは勉強してる(であろうから)大丈夫だとは思うのですが。。。
※C。循環器の先生はとても控えめで(糖尿病系のシンポでもあるし)誠実なデータを出されていたのですが、チアゾリシン系薬剤は体内の水分貯留を増やすので心不全傾向の方には使いにくい。当然承知だと思うのにそれを言われなかったこと。
4番目の問題点。メトホルミンはどうした?メトホルミンをスルーしていいのか。

最後5番目が最大の問題点
『いろいろご質問があると存じますが時間もないのでここで終わりとさせて頂きます、有り難うございました』

えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?
ちょっと待って!訊きたいことはいっぱいある。もちろん場の雰囲気を崩さない程度での疑問、質問を用意して敢えてマイクのそばに陣取ったのに。

フロアからの質問なしのシンポジウム。。。前代未聞。
もうこれはシンポジウムとは呼べない。単なる宣伝活動だ。
アンケートには交通費返す(宿泊は別に自前でとってた)からこんなシンポは意味がないと書いて会場をあとにしました。
その後の懇親会では質疑応答は出来るが、それは個人レベルの話。全体に伝わらないと意味がない。
せっかく良い薬でまともな会社なのに、シンポのやり方で寧ろ副作用が出てしまいかねない危険な会だと思いました。
そりゃ大きな会場を借りて相当なお金をかけたシンポだと思うので時間オーバーしたら数百万単位の損失が出ると思いますが、質疑応答なしで、その後臨床の場で大きな問題が起これば数億円規模の損失が出ると思うがどうだろう。

この手のシンポジウムをされる薬剤会社には考えて貰いたい問題です。
コメント (2)
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