建設現場の卵

建設現場からのエッセイ。「建設現場の子守唄」「建設現場の風来坊」に続く《建設現場の玉手箱》現場マンへ応援歌。

お盆直前、躯体打設後に

2023-09-11 08:15:45 | 建設現場 安全

   八月 十一日(金) 晴れ   

5階のコンクリート打設だ。

一昨日ポンプ車の問題をクリアーしたので、昨日の仕事は配筋検査も十分行って、コンク
リート打ち前日にしてはめずらしく打設前チェックにゆとりがあった。

昨日は午後から半日鉄筋工も余裕があったので、6階の柱筋を圧接迄してしまった。
柱筋が先に組みあがったのでコンクリート打設時にホースの引き廻しに面倒かなと思った
けれど、配管を盛り変える様な事はなく、スムーズに打設ホースの移動を行えた。
鉄筋工は盆明け時に圧接工を手配する必要がなくなり、いつでも仕事にかかれる態勢になった。

大工さんの半分は1階と2階の『墨出し(ここが壁芯から1m、床仕上げから1mだよという
垂直水平の基準を各室全てに墨で線を引く事)』に取りかかる事が出来た。

墨出しが終ると躯体工事から仕上げ工事に切り替わり、仕上げの一番手はサッシュ工事だ。
サッシュは盆明け早々に納入する。
その時点では型枠は全て片付けて、基準墨出しも完了しておく予定だ。
設備の冷暖房ダクト配管を天井フトコロ(天井裏)に吊り下げておく仕事もある。

――5階のコンクリートを打ちながら、下から仕上げが始まって来た事を実感した。

6階の時、そう、盆明けからは最上階躯体と最下階仕上げ開始が主要な仕事だ。
中間は型枠支保工の解体撤去中となり、躯体工事ももう一頑張りだと見えて来た。

今日のコンクリート打ちも昼過ぎには終わるが、ポンプ車は次の現場が待っていて、一分
一秒でも早くKビルから出て行こうとかなりアワテテいる。
これを目のあたりに見て、
ダメコンを4階の時に打っていなかったらと思うと背筋が寒くなりました、所長」とF君。
「ポンプ車のお家の事情を現場マンとしてはチョッピリ気を配ってあげる事だね」と私。

今日のコンクリート打設は何だか静かだった。
そういえば鉄筋工の姿がない。
『コンクリート相番』といって鉄筋の乱れを直しながら、サシ筋等を段取りする筈なのに一人
もいない。
サシ筋は昨日の内に全て先組みしてあるからいいものの、

「打設中に鉄筋の乱れをどうするのだ?」と私。
「上手に打って下さい、乱れた所は設備屋さんが今回は直すから……」
と言ったかどうかは定かでない。

明日コンクリートを打つどこかの現場の為に、鉄筋の組み立ての応援に引き抜かれているの
が本音であり、昨日の雑談の中とか、それらしき電話が昨日午後から沢山あった。

昨日―――
「何人でも集めろ!!」
の号令で、今日、今晩中に鉄筋をバタバタと組んで、設備屋さんが夜中から朝の十時迄かか
ろうと、とにかくコンクリートを打つんだという現場へ応援に行くと聞いている。

設備屋さんは鉄筋の上筋と下筋の間に配管するので、鉄筋が組上がらないと仕事をしように
配管の接続さえ出来ない。
壁から上がって来ている管をスラブ(床)に接続する部分は(実際には床でなくて天井用の
電気となる配管)大混雑だ。
それに配筋検査はいつするのだろうね。

壁へのコンクリート打ちが終わる迄にスラブ配管作業も、配筋検査も終わるのだろうけれど、
そんなにバタバタと仕事をしてミス、手直しはないのだろうか・・・。
それで果たして盆明けの段取りは出来ているのか……と他人事ながら気にしてしまった。

―――Kビルに話を戻して―――
Kビルのコンクリート打設は昼食抜きで、12時40分には完了した。丁度100㎥。
4階の時にダメコン(雑コン)を打っているので、昼からはどこを打とうか?と考えるのは
甘い。
ポンプ工に今そんな事を言うと首締められるほど殺気だっている状態は先に述べたネ。

午後からは次の現場へ120㎥も打ちに行かねばならないそうだ。
14時になると型枠工事が終わって打てるだろうという所へ、食事もせずに、
「所長さん、悪いけど今日はこれで………」
と飛んで、まさに飛んで出て行った。
何はともあれ御苦労さんだ。

左官工(K業務店)の山内さんも昼食抜きで、3時迄頑張って終了となった。
もう上を歩いても大丈夫だけれど、12時前後に打った付近の所は少し表面が柔らかい。
という事は、夕方からは今日打ったコンクリートの上で作業が出来る。

「えッ?」
この暑さでコンクリートが固まる迄に表面を『均す』スピードが付いて行けないので、左官
工は大忙しだった。
一晩寝かせて朝墨出しをするのが普通(正確には24時間その上を歩かないで養生する事) だけれ
ど、運動靴で歩くには支障のない(傷が付かない)程、表面は固まって来た。

それに陽は長い。
現在5時。夕陽を見るだけでもまだ暑いのに、足元のコンクリートも相当な凝固熱(固まろう
とする熱)を出している。
撒水(さんすい)養生してもすぐに表面は乾いてしまった。

6時になったら『夕陽の墨出しマン』をやろうと打ち合わせをした。
それまで大工もF君もひとまず喫茶店で休息也。

そろりそろりと歩きながらの墨出し作業だったけれど、主要な部分は全て終了した。

打設後は気が抜けるものだ。
特に今回はお盆休みに入るので、安堵感も大いにある。
もう仕事の話は止めて「休みの予定話」が大賑(にぎわい)わいだ。

「明日は今年前半無事終了を記念して昼食会を『しゃぶしゃぶのK』へ行こう」
とN子に予約手続きを頼んだ。

「明日からお盆休みじゃあないのですか?」
「多分半日でも出て来ればの話だけど、うまいもので釣れば皆さんきっと来るでしょう。俺も
来るけどN子も出ておいでよ、夏休み中の子供二人、連れて来ていいからサ」
「わァーい、で、パパは?」    
「ん?(パパいたの?)」  
                     




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