読書録「指輪物語1」4
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p240より引用
“「わからないんだなあ!」と、ピピンがいい
ました。「あなたは行かなきゃいけないんで
しょーだから、ぼくたちもまた行かなきゃな
らないんです。メリーとぼくはあなたと一緒
に行きますよ。サムはすばらしいやつです。
あなたを救うためには竜の喉元にだって跳び
込むでしょう。自分の足に蹴つまずいたりさ
えしなければね。だけど、あなたの危険な冒
険旅行には、連れは一人ではたりませんよ。
」”
目次より抜粋引用
“待ちに待った誕生祝い
過去の影
三人寄れば
茸畑への近道
正体をあらわした陰謀”
大いなる力を持った指輪を巡り繰り広げら
れる、主人公達の長い旅の道程を描いた長編
ファンタジー小説。
指輪の来歴やこの物語の世界背景について
から、主人公達の旅立ちまで、細かく丁寧に
描かれています。
上記の引用は、生きて帰れないかもしれな
い旅に一人で行こうとする主人公・フロドに
対してのホビット仲間の一人・ピピンの台詞。
生きるか死ぬかが掛かった場面で、一緒に誰
かがいてくれると言う事は、多分その人の生
き方が正しかった事の証明なのではないでしょ
うか。たとえ普段は一人で過ごしていても、
死に際に誰かが居てくれるように、日々を過
ごしたいものです。
ファンタジー作品に登場する、人型の他種
族を一番初め位に物語の中で描かれた作品で
あったように記憶しています。世界背景や情
景、ホビットを中心としての種族の生活様式
等が、行間を空想で補う必要が無い位、緻密
に描かれています。
あらゆるファンタジー作品に影響を与えた、
偉大な作品なのでしょう。しかし、その緻密
な描写のために、ある程度読書が好きでない
と、読み辛さを感じるかもしれません。
ーーーーー
読書録「指輪物語2」3
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p63より引用
“かれはマゴットじいさんのことを、かれら
が思っていたよりずっと偉い人であると考え
ているように見えました。「じいさんの足の
裏には土、指には泥がある。骨々に知恵があ
り、あの目は二つながら開いている。」と、
トムはいいました。”
目次より抜粋引用
“古森
トム・ボンバディルの家で
霧の塚山丘陵
躍る子馬亭で
馳夫”
大いなる力を持つ指輪を巡って、帰れるか
わからない旅をすることになったホビットた
ちを主人公とした、長編ファンタジー小説。
指輪を捨てる旅を続ける、主人公・フロド
達ホビット一行。出来れば踏み入りたくはな
い森を通ることとなり…。
上記の引用は、主人公達の危機を救った人
物・トムの、ホビットの農家のお爺さんに対
する評価についての一節。
長年の経験を積み重ねた事による、知識と技
術というのは、尊い物であると言う事でしょ
う。昔はよく、「老人一人が亡くなると、図
書館が一軒無くなるのと同じ。」というよう
なことわざを聞いたものですが、最近は正直
疑問に思わざるを得ないような、老人の姿を
見ることが多い気がします。大切にするべき
人とそうでない人が、はっきり分かれるので
はないでしょうか。
訳者あとがきに、作品の概要が記されてい
て、作品が創られた背景や周辺への影響等に
ついて知ることが出来、より作品への理解が
深まるのではないでしょうか。
ーーーーー
読書録「指輪物語3」3
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p88より引用
“暗黒の塔を相手に昔から度々くり返された
戦いにさいして、わしらの最大の敵は常に裏
切り行為じゃった。”
目次より抜粋引用
“数々の出会い
エルロンドの会議
指輪、南へいく
暗闇の旅”
大いなる力を持つ指輪を巡って、帰れるか
わからない旅をすることになったホビットた
ちを主人公とした、長編ファンタジー小説。
指輪を手に入れようとする黒い敵の追っ手
によって、深手を負わされた主人公・フロド。
朧げな記憶をたどりながら目を覚ました、そ
の枕元にいたのは…。
上記の引用は、闇の勢力に対する指輪の処
し方について語る、魔法使い・ガンダルフの
台詞。
安心して後ろを守ってもらっているはずなの
に、敵と挟み撃ちにされてしまっては、どの
ような戦い方をしていても負けることが多く
なるでしょう。背中を預けるのは、よくよく
見定めた相手にしておかなければなりません
ね。
ファンタジーでは定番になっている種族の、
エルフとドワーフも旅の仲間に加わり、指輪
を捨てる旅も本番といったところ。敵の追っ
手だけでなく、雪といった自然環境もあって、
旅は厳しいものになってきました。
苦境を助け合って進む主人公達の姿は、パー
ティープレイのお手本と思わざるを得ません。
ーーーーー
読書録「指輪物語4」3
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p167より引用
“エルフにとってもこの世は動いている。そ
の動き方は非常に速やかでもあれば、非常に
緩やかでもある。速やかというのは、エルフ
自身がほとんど変わらないのに他のものがこ
とごとく飛ぶように去っていくからだ。これ
はエルフたちにとっていたましいことだ。緩
やかというのは、エルフたちは流転する年を
数えたてないからだ。”
目次より抜粋引用
“カザド=ドゥムの橋
ロスロリアン
ガラドリエルの鏡
さらば、ロリアン
大河”
大いなる力を持つ指輪を巡って、帰れるか
わからない旅をすることになったホビットた
ちを主人公とした、長編ファンタジー小説。
敵の襲撃を避けて入った大広間で、養父の
かつての仲間の墓を見つけた主人公・フロド
と旅の一行。残された故人の記録を読み解く
につれ、その最期の様子も明らかとなり…。
上記の引用は、旅の一行のエルフ・レゴラ
スによる、エルフと時間の感じ方についての
台詞。
長命を生きるなど想像の範囲外ですが、人生
も半分以上過ぎてまだ半分近く残っているだ
けでも、正直しんどさを感じている身として
は、長く生きるのは辛そうに思います。
この巻は、序盤から急展開となっていて、
悲しい出来事も描かれています。それでも前
へ進もうとする、主人公・フロド達の旅立ち
に際し、またもやイヤな出来事が。ハラハラ
する話の進みに、次を読みたくなる気持ちが
湧き上がる展開です。
ーーーーー
読書録「指輪物語5」4
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p155より引用
“やつは一大権力になろうと企んでおるな。
やつの心は金属と歯車でできてるのよ。そし
て生え育っているものには、その時々かれの
役に立つものでない限り、何の愛情ももたぬ
のよな。今やかれは極悪の裏切者であること
がはっきりした。”
目次より抜粋引用
“ボロミアの死
ローハンの騎士たち
ウルク=ハイ
木の鬚
白の乗手”
大いなる力を持つ指輪を巡って、帰れるか
わからない旅をすることになったホビットた
ちを主人公とした、長編ファンタジー小説。
指輪の持つ力にあてられ、主人公・フロド
を裏切ってしまった仲間・ボロミア。一緒に
いるのは危険と判断したフロドは、追いかけ
てきたサムと二人で別行動をとることに。
一方、いなくなったフロドを探すアラゴルン
は、ボロミアの角笛の音を聞き…。
上記の引用は、裏切者の賢者・サルマンに
ついて、生きていたガンダルフが吐いた台詞。
能力が高くなれば、それに応じて権力も欲し
くなってしまうのでしょうか。ここまでの巻
の中でガンダルフが言った、味方の裏切りが
一番厄介だとの意味の台詞が、仲間たちに突
き刺さる話の展開です。
離れ離れになった各集団ごとの場面が描か
れるので、しっかりと読まなければ、時系列
が混乱してしまうかもしれません。
いよいよ闇の勢力との戦いが本格化してき
た今巻、指輪を持ったフロドとサムの行動に
ついては、ほとんど触れられずに話が進みま
す。
巻頭にあらすじが書かれているので、ここ
までの話を忘れていても、大体把握出来るの
が親切です。
ーーーーー
読書録「指輪物語6」4
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p139より引用
“「危急の時に宝物が捨てられない者はわれ
とわが身を縛ってるようなもんだ。あんたは
正しく行動したんだよ。」”
目次より抜粋引用
“黄金館の王
ヘルム峡谷
アイゼンガルドへの道
漂着物
サルマンの声”
大いなる力を持つ指輪を巡って、帰れるか
わからない旅をすることになったホビットた
ちを主人公とした、長編ファンタジー小説。
生きていたガンダルフと再会し、裏切りの
賢者・サルマンとの戦いの為にローハンの宮
殿へと進むアラゴルン達。なんとか王に謁見
は出来たのだが、王の隣には一行に敵対的な
側近がおり…。
上記の引用は、行方を探していた二人のホ
ビットの一人・ピピンが、誘拐をされていた
時に、仲間への目印としてブローチを落とし
ておいた事に対しての、アラゴルンの台詞。
命を守る為には、どれ程大切な物であっても、
おしみなく使い捨てる決断が必要になってく
るのでしょう。
裏切者がその軍勢と共に敗北するという、
胸のすくような物語の展開となっています。
しかし、一難去ってまた一難、新たな難事に
ガンダルフは走り回る事になります。
今巻も、主人公と言えるフロドとお付きのサムは出番なし。その動向が気掛かりな所ですが、その分フロドの仲間達の活躍が思う存分楽しめる巻となっています。
ーーーーー
読書録「指輪物語7」3
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p248より引用
“頭部がなくなっていて、その代わりにそれ
を嘲り真似て、粗く切り出した丸い石が載せ
てありました。そしてそこには野蛮な者たち
の手で、額の真ん中に大きな赤い目が一つに
たりと笑った顔と見せたものがぞんざいに描
かれていました。坐像の膝に、巨大な椅子に、
また台座に余すところなく、モルドールの蛆
虫どもが用いるけがらわしい記号をまじえた
落書きがありました。”
目次より抜粋引用
“スメアゴルならし
沼渡り
黒門不通
西に開く窓
サムワイズ殿の決断”
大いなる力を持つ指輪を巡って、帰れるか
わからない旅をすることになったホビットた
ちを主人公とした、長編ファンタジー小説。
ボロミアの裏切り以降、アラゴルン達と別
れて行動していた主人公・フロドとお付きの
サム。出来るなら素早く旅を進めたい二人だっ
たが、荒れた岩山の道のりは険しく、見えて
いる平地へ下りる事もままならず…。
上記の引用は、古代からあるであろう石像
に対して行われた、闇の勢力の者共の行いに
ついて書かれた一節。
現実でも、よその国の史跡などを損壊したり
落書きしたりする人達がいますが、闇の勢力
とか悪の軍団と判断されるようになっても、
仕方ないかもしれません。
今巻になってようやく、主人公であるフロ
ドの行動が描かれています。しかし、アラゴ
ルン達の話と比べると、極めて地味で忍耐が
必要な様子が描かれているため、読む方も少
し気が重くなりがちになるのではないでしょ
うか。
ーーーーー
読書録「指輪物語8」4
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p310より引用
“思うに、自分が愛するのにふさわしいもの
をまず愛するのが最善じゃなかろうか。どこ
かで始めなきゃならないのだち、どこかに根
をおろさなきゃならないんだから。”
目次より抜粋引用
“ミナス・ティリス
灰色の一行 罷り通る
ローハンの召集
ゴンドールの包囲
ローハン軍の長征”
大いなる力を持つ指輪を巡って、帰れるか
わからない旅をすることになったホビットた
ちを主人公とした、長編ファンタジー小説。
見通す力を持った石を覗き込んだピピンを
連れて、闇の軍勢との戦いが今まさに始まろ
うとしているゴンドールへと向かうガンダル
フ。どこにいたとて安全ではない戦いへと突
入しようとする世界で、少しの望みを繋ぐ為、
ガンダルフは馬を走らせる…。
上記の引用は、負傷して治療中のメリーの
台詞。
苦しくて辛い時ほど、身近な物事を大切にし
て、一つ一つこなして乗り越えていかなけれ
ばならないのかも知れません。
冥王・サウロン率いる闇の軍勢と主人公達
のゴンドールでの戦を中心に描かれる巻。
多勢にまかせて押し寄せるサウロン軍に、少
数で悲愴な戦いを強いられるゴンドール側。
読んでいて苦しい展開が続きます。
そして、最後にカギを握るのは、やはり主人
公・フロドという所になるのが、胸を熱くさ
せます。
ーーーーー
読書録「指輪物語9」5
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p130より引用
“探索の旅は成就し、今はすべてが終わった
のだから。お前がここに一緒にいてくれてう
れしいよ。一切合財が終わる今、ここにいて
くれてね、サム。」”
目次より抜粋引用
“キリス・ウンゴルの塔
影の国
滅びの山
コルマルレンの野
執政と王”
大いなる力を持つ指輪を巡って、帰れるか
わからない旅をすることになったホビットた
ちを主人公とした、長編ファンタジー小説。
完結巻。
スメアゴルの裏切りと怪物の毒によって瀕
死の状態になり、なおかつオークに攫われた
主人公・フロド。フロドを助ける為、単身オー
クの要塞へ、サムは侵入を試みる…。
上記の引用は、旅の目的を果たしたフロド
の台詞。
旅の最初から最後まで、常にフロドに寄り添っ
て助け合ってきたサム。彼が居なければ、何
度も旅が終わっていたであろう機会があった
ように思われます。その他の主要な登場人物
も、重要な役割を果たしていますが、何より
も彼のフロドに対する忠義と献身が、旅の成
功へ大きく貢献したのではないでしょうか。
一冊の半分以上が、旅の後日談のようになっ
ています。主だった登場人物たちのそれぞれ
の道へ進む別れや、ホビットたちの故郷での
一悶着等が描かれています。
作品全体を通してみると、序盤・中盤の緻
密で丁寧な情景描写に、冗長さを感じる事も
多く見受けられました。しかし、それを含め
て、読み終わった後の心地よさを感じ取れる
作品ではないでしょうか。
読書に慣れていない人には、読みにくい書か
れ方がされているとは思いますが、じっくり
と時間をかけて読み通すことで、良さを味わ
える作品であると思われます。
ーーーーー
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p240より引用
“「わからないんだなあ!」と、ピピンがいい
ました。「あなたは行かなきゃいけないんで
しょーだから、ぼくたちもまた行かなきゃな
らないんです。メリーとぼくはあなたと一緒
に行きますよ。サムはすばらしいやつです。
あなたを救うためには竜の喉元にだって跳び
込むでしょう。自分の足に蹴つまずいたりさ
えしなければね。だけど、あなたの危険な冒
険旅行には、連れは一人ではたりませんよ。
」”
目次より抜粋引用
“待ちに待った誕生祝い
過去の影
三人寄れば
茸畑への近道
正体をあらわした陰謀”
大いなる力を持った指輪を巡り繰り広げら
れる、主人公達の長い旅の道程を描いた長編
ファンタジー小説。
指輪の来歴やこの物語の世界背景について
から、主人公達の旅立ちまで、細かく丁寧に
描かれています。
上記の引用は、生きて帰れないかもしれな
い旅に一人で行こうとする主人公・フロドに
対してのホビット仲間の一人・ピピンの台詞。
生きるか死ぬかが掛かった場面で、一緒に誰
かがいてくれると言う事は、多分その人の生
き方が正しかった事の証明なのではないでしょ
うか。たとえ普段は一人で過ごしていても、
死に際に誰かが居てくれるように、日々を過
ごしたいものです。
ファンタジー作品に登場する、人型の他種
族を一番初め位に物語の中で描かれた作品で
あったように記憶しています。世界背景や情
景、ホビットを中心としての種族の生活様式
等が、行間を空想で補う必要が無い位、緻密
に描かれています。
あらゆるファンタジー作品に影響を与えた、
偉大な作品なのでしょう。しかし、その緻密
な描写のために、ある程度読書が好きでない
と、読み辛さを感じるかもしれません。
ーーーーー
読書録「指輪物語2」3
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p63より引用
“かれはマゴットじいさんのことを、かれら
が思っていたよりずっと偉い人であると考え
ているように見えました。「じいさんの足の
裏には土、指には泥がある。骨々に知恵があ
り、あの目は二つながら開いている。」と、
トムはいいました。”
目次より抜粋引用
“古森
トム・ボンバディルの家で
霧の塚山丘陵
躍る子馬亭で
馳夫”
大いなる力を持つ指輪を巡って、帰れるか
わからない旅をすることになったホビットた
ちを主人公とした、長編ファンタジー小説。
指輪を捨てる旅を続ける、主人公・フロド
達ホビット一行。出来れば踏み入りたくはな
い森を通ることとなり…。
上記の引用は、主人公達の危機を救った人
物・トムの、ホビットの農家のお爺さんに対
する評価についての一節。
長年の経験を積み重ねた事による、知識と技
術というのは、尊い物であると言う事でしょ
う。昔はよく、「老人一人が亡くなると、図
書館が一軒無くなるのと同じ。」というよう
なことわざを聞いたものですが、最近は正直
疑問に思わざるを得ないような、老人の姿を
見ることが多い気がします。大切にするべき
人とそうでない人が、はっきり分かれるので
はないでしょうか。
訳者あとがきに、作品の概要が記されてい
て、作品が創られた背景や周辺への影響等に
ついて知ることが出来、より作品への理解が
深まるのではないでしょうか。
ーーーーー
読書録「指輪物語3」3
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p88より引用
“暗黒の塔を相手に昔から度々くり返された
戦いにさいして、わしらの最大の敵は常に裏
切り行為じゃった。”
目次より抜粋引用
“数々の出会い
エルロンドの会議
指輪、南へいく
暗闇の旅”
大いなる力を持つ指輪を巡って、帰れるか
わからない旅をすることになったホビットた
ちを主人公とした、長編ファンタジー小説。
指輪を手に入れようとする黒い敵の追っ手
によって、深手を負わされた主人公・フロド。
朧げな記憶をたどりながら目を覚ました、そ
の枕元にいたのは…。
上記の引用は、闇の勢力に対する指輪の処
し方について語る、魔法使い・ガンダルフの
台詞。
安心して後ろを守ってもらっているはずなの
に、敵と挟み撃ちにされてしまっては、どの
ような戦い方をしていても負けることが多く
なるでしょう。背中を預けるのは、よくよく
見定めた相手にしておかなければなりません
ね。
ファンタジーでは定番になっている種族の、
エルフとドワーフも旅の仲間に加わり、指輪
を捨てる旅も本番といったところ。敵の追っ
手だけでなく、雪といった自然環境もあって、
旅は厳しいものになってきました。
苦境を助け合って進む主人公達の姿は、パー
ティープレイのお手本と思わざるを得ません。
ーーーーー
読書録「指輪物語4」3
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p167より引用
“エルフにとってもこの世は動いている。そ
の動き方は非常に速やかでもあれば、非常に
緩やかでもある。速やかというのは、エルフ
自身がほとんど変わらないのに他のものがこ
とごとく飛ぶように去っていくからだ。これ
はエルフたちにとっていたましいことだ。緩
やかというのは、エルフたちは流転する年を
数えたてないからだ。”
目次より抜粋引用
“カザド=ドゥムの橋
ロスロリアン
ガラドリエルの鏡
さらば、ロリアン
大河”
大いなる力を持つ指輪を巡って、帰れるか
わからない旅をすることになったホビットた
ちを主人公とした、長編ファンタジー小説。
敵の襲撃を避けて入った大広間で、養父の
かつての仲間の墓を見つけた主人公・フロド
と旅の一行。残された故人の記録を読み解く
につれ、その最期の様子も明らかとなり…。
上記の引用は、旅の一行のエルフ・レゴラ
スによる、エルフと時間の感じ方についての
台詞。
長命を生きるなど想像の範囲外ですが、人生
も半分以上過ぎてまだ半分近く残っているだ
けでも、正直しんどさを感じている身として
は、長く生きるのは辛そうに思います。
この巻は、序盤から急展開となっていて、
悲しい出来事も描かれています。それでも前
へ進もうとする、主人公・フロド達の旅立ち
に際し、またもやイヤな出来事が。ハラハラ
する話の進みに、次を読みたくなる気持ちが
湧き上がる展開です。
ーーーーー
読書録「指輪物語5」4
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p155より引用
“やつは一大権力になろうと企んでおるな。
やつの心は金属と歯車でできてるのよ。そし
て生え育っているものには、その時々かれの
役に立つものでない限り、何の愛情ももたぬ
のよな。今やかれは極悪の裏切者であること
がはっきりした。”
目次より抜粋引用
“ボロミアの死
ローハンの騎士たち
ウルク=ハイ
木の鬚
白の乗手”
大いなる力を持つ指輪を巡って、帰れるか
わからない旅をすることになったホビットた
ちを主人公とした、長編ファンタジー小説。
指輪の持つ力にあてられ、主人公・フロド
を裏切ってしまった仲間・ボロミア。一緒に
いるのは危険と判断したフロドは、追いかけ
てきたサムと二人で別行動をとることに。
一方、いなくなったフロドを探すアラゴルン
は、ボロミアの角笛の音を聞き…。
上記の引用は、裏切者の賢者・サルマンに
ついて、生きていたガンダルフが吐いた台詞。
能力が高くなれば、それに応じて権力も欲し
くなってしまうのでしょうか。ここまでの巻
の中でガンダルフが言った、味方の裏切りが
一番厄介だとの意味の台詞が、仲間たちに突
き刺さる話の展開です。
離れ離れになった各集団ごとの場面が描か
れるので、しっかりと読まなければ、時系列
が混乱してしまうかもしれません。
いよいよ闇の勢力との戦いが本格化してき
た今巻、指輪を持ったフロドとサムの行動に
ついては、ほとんど触れられずに話が進みま
す。
巻頭にあらすじが書かれているので、ここ
までの話を忘れていても、大体把握出来るの
が親切です。
ーーーーー
読書録「指輪物語6」4
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p139より引用
“「危急の時に宝物が捨てられない者はわれ
とわが身を縛ってるようなもんだ。あんたは
正しく行動したんだよ。」”
目次より抜粋引用
“黄金館の王
ヘルム峡谷
アイゼンガルドへの道
漂着物
サルマンの声”
大いなる力を持つ指輪を巡って、帰れるか
わからない旅をすることになったホビットた
ちを主人公とした、長編ファンタジー小説。
生きていたガンダルフと再会し、裏切りの
賢者・サルマンとの戦いの為にローハンの宮
殿へと進むアラゴルン達。なんとか王に謁見
は出来たのだが、王の隣には一行に敵対的な
側近がおり…。
上記の引用は、行方を探していた二人のホ
ビットの一人・ピピンが、誘拐をされていた
時に、仲間への目印としてブローチを落とし
ておいた事に対しての、アラゴルンの台詞。
命を守る為には、どれ程大切な物であっても、
おしみなく使い捨てる決断が必要になってく
るのでしょう。
裏切者がその軍勢と共に敗北するという、
胸のすくような物語の展開となっています。
しかし、一難去ってまた一難、新たな難事に
ガンダルフは走り回る事になります。
今巻も、主人公と言えるフロドとお付きのサムは出番なし。その動向が気掛かりな所ですが、その分フロドの仲間達の活躍が思う存分楽しめる巻となっています。
ーーーーー
読書録「指輪物語7」3
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p248より引用
“頭部がなくなっていて、その代わりにそれ
を嘲り真似て、粗く切り出した丸い石が載せ
てありました。そしてそこには野蛮な者たち
の手で、額の真ん中に大きな赤い目が一つに
たりと笑った顔と見せたものがぞんざいに描
かれていました。坐像の膝に、巨大な椅子に、
また台座に余すところなく、モルドールの蛆
虫どもが用いるけがらわしい記号をまじえた
落書きがありました。”
目次より抜粋引用
“スメアゴルならし
沼渡り
黒門不通
西に開く窓
サムワイズ殿の決断”
大いなる力を持つ指輪を巡って、帰れるか
わからない旅をすることになったホビットた
ちを主人公とした、長編ファンタジー小説。
ボロミアの裏切り以降、アラゴルン達と別
れて行動していた主人公・フロドとお付きの
サム。出来るなら素早く旅を進めたい二人だっ
たが、荒れた岩山の道のりは険しく、見えて
いる平地へ下りる事もままならず…。
上記の引用は、古代からあるであろう石像
に対して行われた、闇の勢力の者共の行いに
ついて書かれた一節。
現実でも、よその国の史跡などを損壊したり
落書きしたりする人達がいますが、闇の勢力
とか悪の軍団と判断されるようになっても、
仕方ないかもしれません。
今巻になってようやく、主人公であるフロ
ドの行動が描かれています。しかし、アラゴ
ルン達の話と比べると、極めて地味で忍耐が
必要な様子が描かれているため、読む方も少
し気が重くなりがちになるのではないでしょ
うか。
ーーーーー
読書録「指輪物語8」4
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p310より引用
“思うに、自分が愛するのにふさわしいもの
をまず愛するのが最善じゃなかろうか。どこ
かで始めなきゃならないのだち、どこかに根
をおろさなきゃならないんだから。”
目次より抜粋引用
“ミナス・ティリス
灰色の一行 罷り通る
ローハンの召集
ゴンドールの包囲
ローハン軍の長征”
大いなる力を持つ指輪を巡って、帰れるか
わからない旅をすることになったホビットた
ちを主人公とした、長編ファンタジー小説。
見通す力を持った石を覗き込んだピピンを
連れて、闇の軍勢との戦いが今まさに始まろ
うとしているゴンドールへと向かうガンダル
フ。どこにいたとて安全ではない戦いへと突
入しようとする世界で、少しの望みを繋ぐ為、
ガンダルフは馬を走らせる…。
上記の引用は、負傷して治療中のメリーの
台詞。
苦しくて辛い時ほど、身近な物事を大切にし
て、一つ一つこなして乗り越えていかなけれ
ばならないのかも知れません。
冥王・サウロン率いる闇の軍勢と主人公達
のゴンドールでの戦を中心に描かれる巻。
多勢にまかせて押し寄せるサウロン軍に、少
数で悲愴な戦いを強いられるゴンドール側。
読んでいて苦しい展開が続きます。
そして、最後にカギを握るのは、やはり主人
公・フロドという所になるのが、胸を熱くさ
せます。
ーーーーー
読書録「指輪物語9」5
著者 J・R・R・トールキン
訳 瀬田貞二、田中明子
出版 評論社
p130より引用
“探索の旅は成就し、今はすべてが終わった
のだから。お前がここに一緒にいてくれてう
れしいよ。一切合財が終わる今、ここにいて
くれてね、サム。」”
目次より抜粋引用
“キリス・ウンゴルの塔
影の国
滅びの山
コルマルレンの野
執政と王”
大いなる力を持つ指輪を巡って、帰れるか
わからない旅をすることになったホビットた
ちを主人公とした、長編ファンタジー小説。
完結巻。
スメアゴルの裏切りと怪物の毒によって瀕
死の状態になり、なおかつオークに攫われた
主人公・フロド。フロドを助ける為、単身オー
クの要塞へ、サムは侵入を試みる…。
上記の引用は、旅の目的を果たしたフロド
の台詞。
旅の最初から最後まで、常にフロドに寄り添っ
て助け合ってきたサム。彼が居なければ、何
度も旅が終わっていたであろう機会があった
ように思われます。その他の主要な登場人物
も、重要な役割を果たしていますが、何より
も彼のフロドに対する忠義と献身が、旅の成
功へ大きく貢献したのではないでしょうか。
一冊の半分以上が、旅の後日談のようになっ
ています。主だった登場人物たちのそれぞれ
の道へ進む別れや、ホビットたちの故郷での
一悶着等が描かれています。
作品全体を通してみると、序盤・中盤の緻
密で丁寧な情景描写に、冗長さを感じる事も
多く見受けられました。しかし、それを含め
て、読み終わった後の心地よさを感じ取れる
作品ではないでしょうか。
読書に慣れていない人には、読みにくい書か
れ方がされているとは思いますが、じっくり
と時間をかけて読み通すことで、良さを味わ
える作品であると思われます。
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