夜のお散歩の時、かりなは必ず同じ場所で振り返り、来た道をじっと見つめる。
「何が見えると?」
かりなの視線を追う。
そこは暗く、街灯が寂しく来た道を照らしている。
「何も見えんがな」
かりなを引っ張る。
まだ眺め足りないと言う様に、視線を残して体だけ引っ張られる。
「何も見えないよ。かりなには見えてるのかも知れないけどさ、怖いやんか」
いつもの事ながら、暗闇から何かが出て来そうで怖くなる。
ぐるっと周辺を歩き、そこを通らなければ、家には戻れない。
無理矢理に引っ張ると歩き出す。
かりながまだ若い頃に、こんな事があった。
いつもの様に夜のお散歩に(かりなは家では排泄しないので1日最低3回はお散歩に出る)出掛けた時の事だ。
ちょうど、電柱と電柱の間、電灯の灯りが薄く交わる場所に倒れている人影が見えた。片手をこっちに差し伸べている様に見える。
「助けなきゃ…」
携帯をポケットから出しながら、慌てて駆け寄る。
「あれ?」
人と思ったのは、灯りと灯りの交わりに出来た影だったのだ。
確かに人が倒れている様に見えたんだけどなぁ…
離れたり近づいたりして何度も確かめる。
影だ。やっぱり影にしか見えない。
不思議な気持ちで、その影が見えた道を突っ切って行こうとすると、かりながそこを通るのを嫌がる。
なんか、気持ち悪い。
いや、いや、見間違いの影だったんだ。
今でもそこを通る度、また同じ様に見えないか確かめたりする。
かりなは、人の気持ちを感じ取っているのか?
私が怖い怖いと思っているからだな。
犬が何にもない空間を、じっと見つめるのは良くある事みたいだ。
何が見えているのやら?
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」
おまけの話
サザエさんの最終回
福引きで「ハワイ旅行」が当たり、家族全員で乗った飛行機が海に墜落。
サザエさん一家は海に帰る。
やっぱり、なんか怖い。