アコギおやじのあこぎな日々

初老の域に達したアコギおやじ。
日々のアコースティックな雑観

弁当の感想がない

2010-09-03 | Weblog
 弁当についての感想がない。


 前回ブログで触れたが、妻が不在だった1日朝、息子の弁当は私が作った。


 5時起き。料理はふだん妻まかせなので、食材はもちろん、弁当箱、はし、水筒など、弁当に関わるほとんどのモノがどこにあるか分からない。


 そのため、早起きして調理を始めた。


 しゃもじが見つからない。これが2~3分。海苔を探し出すのには5分くらいかかった。油の置き場所も難しかった。


 悪戦苦闘、ほぼ1時間。


 海苔とごま塩の2階建てご飯。おかずは焼き鮭、玉子焼き、ミニハンバーグ、ハムチーズ揚げ。


 彩り豊かな弁当が完成した。


 独身生活が長かったので料理は得意だ(もっとも、ミニハンバーグ、ハムチーズフライは冷凍食品だったが)。メニューは子どもが好むものばかり。


 自信はあった。


 ふたを開けた瞬間の息子の笑顔を確信していた。学校に送り出してからは、通勤の車の中でも、仕事場のデスクでも、帰宅後に息子の感想を聴くのが楽しみだった。




 で、帰宅後。


 息子はプールが楽しかったとか、友達とけんかしたなどという話ばかり。


 話が終わってしまいそうだったので、あわててこちらから水を向けた。



 「お昼はどうだった?」


 「みんなで公園に行ってお弁当食べた。コウキくんはすごいんだよ。セミを3匹も捕まえたんだ」



 (いや、セミの話はどうでもいいんだ。弁当の中身については、どうだったんだ!)


 と思った刹那、悪寒が走った。


 真っ黒な罪の意識が、一瞬にして脳に浸み込んできた。


 高校生のころ、母と二人暮らしだった。4人家族だったが、父親は長期入院、姉は大学で地元を離れていた。


 母親は早朝に家を出て、父のいる病院に寄ってから仕事先に向かっていた。


 家を出る前に、私の朝食と昼食として、おにぎり6個作っておいてくれた。


 朝は2個食べた。しかし、あとの残りは昼に食べることはあまりなかった。友達は小奇麗な弁当だったり、高校前の食堂でラーメンを食べたりしていた。


 おにぎりだけ、というのが恥ずかしかったので、学校ではおにぎりをしまいこんだままパンを買ったりして、しばしば、おにぎりは持ち帰って家の裏の藪に投げ捨てていた。


 ばれない、と思っていた。


 しかし、家の裏にマンションが建設されることになり、造成が始まった。


 アルミホイルに包まれた腐ったおにぎりが大量に見つかった。


 「がっかりだ…」


 母の落胆ぶりは、痛ましほどだった。

 これほどの親不孝はない。


        ◇

 息子は、食べてくれた。


 それだけで感謝。


 私が母にした仕打ちに比べたら、感想なんてどうでもいいか。
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