港町のカフェテリア 『Sentimiento-Cinema』


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『リラの門』 旅の友・シネマ編 (16) 

2018-08-24 17:06:40 | 旅の友・シネマ編



『リラの門』 Porte Des Lilas (仏)
1957年制作、1957年公開 配給:東和 モノクロ
監督 ルネ・クレール
"脚本 ルネ・クレール、 ジャン・オーレル
撮影 ロベール・ルフェーヴル
原作 ルネ・ファレ 「ラ・グランド・サンチュール」
音楽 ジョルジュ・ブラッサンス
主演 ジュジュ … ピエール・ブラッスール
    バルビエ … アンリ・ヴィダル
    マリア … ダニー・カレル
    楽士 … ジョルジュ・ブラッサンス



パリの下町「リラの門」での人情噺。怠け者で大酒飲みながらも町の人から愛されているジュジュと彼の友人で通称"楽士"が
一杯やっていると警察に追われた男が逃げ込んで来た。男はバルビエという殺人犯であるが、その事情の分からない二人は
バルビエを地下倉庫に匿って歓待する。やがてジュジュはバルビエが殺人犯のお尋ね者だと知るが、彼に大いなる興味を持ち
次第に尊敬するようになり、新しい友人を一生懸命世話するため酒もやめ真面目な生活に改めたので周りの人たちも驚いた。
一方バルビエは倉庫に腰を落着け高飛びの計画を練って旅券と現金を工面しようとする。カフェの娘マリアはジュジュの生活の
変化に気づいて問い詰めるとジュジュは殺人犯を匿っていることを白状した。それを知ったバルビエはマリアをそそのかして
マリアと一緒に外国へ高飛びを図ろうとする。マリアに気のあるジュジュはバルビエにその計画を変更を頼むが聞き入れて
もらえない。夜の路地裏で二人はもみ合い、ジュジュはバルビエの持っていた拳銃でバルビエを撃つ。そして、ジュジュはまた
元のろくでなし人生に戻るのであった。



この作品は『巴里の屋根の下』『巴里祭』などで巴里の下町の人々を情緒豊かに描いたクレールが、巴里の下町を舞台に
庶民の哀歌をうたいあげ、久々に巴里に戻ったクレールの年輪の渋みを味合わせる豊艶さが満喫できる傑作となりました。
ジュジュの口癖である「俺は何で生きてると思う?首を吊って死にたいからだ」が象徴する「ろくでなし人生」のキャラクターを
前面に押し出しながら庶民の日常生活をきめ細かく描き、そしてしみじみとした情感を漂わせ、映画のリズムそして彼の原点
でもある構図の確かさも健在で、まさにファンタジスト・クレールの存在感を示した作品です。



クレールが原作本を映画化するのは非常に珍しいですね。でも、クレールをリスペクトする身からすれば、クレールが巴里に
戻ってくれたこと、それだけでありがたさを感じてしまいます。
しかし残念なことに、この『リラの門』がクレールの日本での最後の単独作品となってしまいました。


(荷車で始まって荷車で終わる、テッパンの映画文法ですね)