【ヒスイ輝石】
約7年ぶりで北陸へ出掛けた。
寡て富山に単身赴任していたが、小滝ヒスイ峡までは行ってなかった。
私は、ヒスイを始めとして鉱物・鉱石に関心を持っており、
大学入学前から、その自然の芸術品の魅力に惹かれていた。
ヒスイは、日本史の教科書の最初の方に「勾玉」の材料として載るので
よく知られている。しかし、ヒスイほど間違って認識されている石も少ない。
本来のヒスイ輝石は白色であり、緑色だからヒスイであるのではない。
やや専門的になって恐縮だが、NaAlSi2O6と珪酸塩鉱物の仲間である。
あのヒスイ特有の緑色は、微量な鉄やクロム等の置換によるものである。
この置換よって白色光のうち赤色成分が吸収され、出てくる光が緑色がついて
見える。また、微量な鉄やチタンと置換されると紫色になったり、
鉄とマンガン等でピンクがかった紫になる様である。
こう書くと何だか味気ないが、別の側面も持っている。
ヒスイは、縄文、弥生、古墳時代に使われていたのに、奈良時代以降は
歴史から消えてしまった。そして、小滝川でヒスイが採れると昭和14年に
学会誌に発表されるまで千年以上の空白期間があったのだ。
尚、ヒスイと、当時の生活や政(まつりごと)との関係や、ヒスイの移動との
関係については、森浩一編「古代翡翠道の謎」に詳しく紹介されている。
ヒスイは、あの「お宝鑑定団」番組で驚異的な鑑定価格がついて以来、
妙な人気が出てしまったが、本来持つ気品がある深い味わいは、昔から
何ら変わっていない。
(やまざくら)
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