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クリエイト速読スクールブログ
父の目方
月曜日。ジムの帰り、駅構内の書店に立ち寄りました。
父の日が近いからなのか、それらしき本が並んでいます。
作家の名前に魅かれ、宮本輝選『父の目方』という文庫を手に取りました。
奥付には、2007年5月20日初版1刷発行とあります。大型書店でもないので、店頭に平積みされてまだ何日も経っていないのか、頁と頁がうっすらとくっついていました。
4年前、「文章を書くことを生業(なりわい)としていない、いわゆる一般公募というかたちで、原稿用紙十枚の『父への思い』を書いて応募してきた方々」のエッセイ集が『父のことば』。
それが好評で、『父の目方』は、あらたに公募したエッセイのなかから再び宮本輝が選んで編集した35篇だそうです。
「はじめに」、ということでの氏の前書きがあります。
「中国には『家は一年、木は十年、人は百年』という言葉がある。
深い意味を含む言葉だと思う。
よほどの豪邸でないかぎり、一年もあれば一軒の家が建つ。小さな苗木も十年もたてば木と呼べるまでには成長する。しかし、人は百年かかるというのである。
どんなに医学が発達しても、人が百歳まで生きるのは稀であろう。ではなぜ「人は百年」なのか……。
若いころ、私はこの中国の古い諺の意味がわからなかった。しかし、五十を過ぎたころから、「人は百年」という意味がわかってきた。
人材論という別の観点からの解釈も可能だが、そうしたものから離れて、単純にひとりの人間の成長を考えるとき、人は否応なく、「父」と「母」の影響を強く受けて育つのである。父あるいは母を幼少時に亡くそうとも、善悪合わせて、遺伝子の螺旋は子に組み込まれている。
この言い方が誤解を招くとすれば、容貌や体形、物の考え方、癖、ちょっとした立居振舞い等々に、父と母の、あるいはそのまた父と母の形態とか心の有り様といったものが継承されている。
そのような「持って生まれたもの」ばかりではなく、人生経験によって培われた世間智や常識や処世術も、勉学や読書や芸術鑑賞などによって得た知能も情緒も、子は知らず知らずのうちに「父」や「母」から受け継ぐものが多いであろう。
故に「人は百年」なのである。生まれたての赤ん坊が三十歳となり四十歳となり五十歳となり六十歳となり、それぞれの花を咲かせるとき、その花の種は百年前に蒔かれてあったと考えるならば、きょう生まれた我が子もまたそのようにして人間となっていくのだとわかるはずなのだ」
この後に、「私が友だちを真似て下品な言葉を口にすると、烈しい形相で私を睨みつけ、そのような言葉遣いをする人間に育てるためにわしはお前の父になったのではない」と、宮本氏を叱る父の話が出てきます。
ひとつひとつに、良質の短編を読んだような重さがあります。35篇の中から、3篇の梗概を書きます。
●「父」は今も健在で、精力的に仕事をこなしている。書きたいと思うことがなくなるまで原稿を書き続けるような人物である。その仕事ぶりは、「誠実の一言に尽きる」と36歳の娘に言わせるほど生真面目。彼は著名な小説家である。娘は子供のころ、父の寝間着姿を見たことがない。夜に起きても、朝に目覚めても、父の書斎からは父の気配があった。そんな父が幼い娘に「自分という作品を作るつもりで生きて行きなさい。これは……」と言う。そんな父と、そして母を見る娘の思い。(P81~)
●学校から帰ると、「父」はいつも自分の机に向かっている。「無職」の父は、酒も飲まず、賭け事もしない。働いていないことを除けば「良き父」である。この父は、娘が成人になるまで司法試験受験生であった。五十代半ばで夢をかなえるまで勉強する父の、その間の人生と、その後の人生と。(P135~)
●広島に原爆が落ちたのを、40キロ離れた小島からのキノコ状の奇怪な雲を息子と見て「行かないかん!」と大声で叫び、家族に「ありったけの食料と衣服や薬品を集めさせて」自分のポンポン船に積み込んで、広島に向けて港を出た「父」は4日後に亡くなる。(P195~)
どのエッセイにも、「文章を書くことを生業(なりわい)としていない」人たちでも、これほどのものを書けるのかという驚きがあります。
「父」の重量(目方)が伝わってきます。
私の父親も健在であれば、きょう29日、84歳の誕生日を迎えていたはずです。亡くなって、すでに8年もたちます。最近、よく思うのは、「あの人は、(自分の齢と)同じ齢のときに何を考えて生きていたのだろう?」ということです。 真
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こうして梗概で紹介されると、実物を読んでみたくなりますね。
実物を読んでみたくなるような梗概を書けていたら、文演のセンセとして合格ですかね?
最近、なおしさんのお薦め本がありませんが、待っている人多いです。
IPアクセスが普段より30くらい増えますから
お仕事、お忙しいんでしょうが「お薦め本」の方も
よろしくお願いします
とりあえず、養生してください。
こちらも、のんびりと待っています