第73期文演(19/9/7~11/16)アンケートからです。
きょうは、大学生のOさんです。
・2019-07-19「1回90分で脳がへろへろになる人と、そうでない人の違いは何だろう」のOさんです。
Oさんの文演アンケート
Q.1 当講座をどんな目的で受講しましたか?
A.1 机の横に置かれた電波時計は「8/30 23:57」を表示している。やばい。0時までに卒業論文を提出しなければ退学だ。大学に6年間も在籍していた不真面目な学生には、卒業か退学かの道しか残されていなかった。論文の最終確認に差し掛かっていた。謝辞の部分に誤字が見つかり、慌てて修正をする。内容の良し悪しはともかく、論文として最低限のルールが守られているかどうかは大丈夫なはずだ。キーボード上、コマンド+Sで論文のPDFファイルを保存した。これで提出の準備はできた。PC上に開いていた大学ホームページから、自身の卒論提出リンクへ飛ぶ。提出画面が現れ、ファイル選択画面がデスクトップに小さく表示される。マウスパッドを操作し、卒論.pdfファイルを選択した。ファイルの読み込みか開始される。やはり同じような学生が他にもいるのだろう。一曲披露できそうなほど、読み込み時間が長い。お前ら、間に合うといいな。想像上の同士たちの健闘を祈る。電波時計へと目をやる。「8/30 23:59」に表示が変わった。と同時に、ついにファイルの読み込みが完了した。自分史上最速の動きで「提出」ボタンのクリックする。このときの集中力でスピードチェックにのぞんでいたら、奇跡の10秒台がでていたかもしれない。冗談だ。PC画面上、「提出」クリック後の自分の提出画面を確認する。そこには、「提出時間:8/30 23:59:40」と表示されていた。なんとか、期限までに提出が完了したのだった。それからしばらく放心状態のまま、パソコン画面を見つめていた。自分にできることはもう残っていない。あとはこの論文が承認されるかどうかだけだった。
本来であれば安堵と達成感を感じても許される状況だったかもしれない。しかし自分への不甲斐なさ、焦燥感、不安感が、モヤモヤと身体全体に渦巻いていた。論文の提出が終わった瞬間は、自分自身の課題をはっきりと自覚した瞬間でもあった。作文能力の無さ、文章の全体像を描き、構造的に考える力。なんとかしなければならない。自分の精神的な未熟さ、甘えが、この卒論執筆において文章能力の無さという形で表面化したのだった。文演を受ければ、この課題を解決するヒントを得られるかもしれない。これまでクリエイトに通い、トレーニングを受け様々な面で能力の向上を実感できていた。文演の存在は入会したときから知っていたが、受講する動機もなく、この時点までは必要性を感じていなかった。
しかし教授の寛大さによって学生という身分を正式に終えることが確定し、文演への参加を決めた。
Q.2 「文演」を受講して文章への印象で変わったことがありますか?
A.2 そんな期待を込めて文演に参加したものの、文章作文に対しては苦手意識を持っていた。卒論執筆の苦い経験のせいだろう。要約や作文と言われると、苦手な人と同じ部屋で過ごす不快感というか、普段の生活の中ででなるべく避けたいもの、という感情を抱いていた。これまで実生活で行ってきた文章作文の経験は、大学授業のレポートや卒業論文程度だろう。これらはすべて消極的な動機から行われているものだった。単位がとれないから、卒業できないから、仕方なく書いているという気持ちが強かった。
しかし文演を通し、文章というものを理解するにつれ、だんだんと文章について新鮮な印象を抱くようになっていた。一つだけ強烈なインパクトを受けたことがある。「文章には筆者の精神が現れる。良い文章を真似ることは、筆者の精神を真似ることに他ならない」ということだ。この思想に触れたことで、自分の文章観のパラダイム転換が起こった。文章を書く際、何をテーマにし、どのような材料を使うか。考えを正確に表現するにあたり、どのような言葉をなぜ使い、配置するのか。そのすべてが文章には込められている。なんとなく好きな文章や本があるのは、そこに滲み出る著者の精神と、自分の精神が無意識で共鳴しているのではないか。自分の尊敬する人の文章をじっくりと読み、咀嚼し、真似をすることで、その人に近づくことができる。文演を受講したことで、文章がもつ力の源泉を知ることができた。今まで面倒だと感じていたものが、自分を高めるツールの一つだと感じた瞬間だった。
Q.3 宿題の「要約」はどうでしたか?
A.3-1「授業前」そのような心構えを身につけたいという一心で、提出期限1週間前に要約へと取りかかった。要約にあたっては、以下の作業を順に行った。① 「要約」とは何かを確認 ②対象となる要約範囲だけでなく、その本自体を読み込む ③字数、段落を踏まえた全体のおおまかな設計 ④文章中、抜き出す箇所のおおよその決定 ⑤書き出し開始 随時細かい部分、読み心地の点検等。
まず要約とは何かを、配布されたプリントで確認した。やり方が間違っていたらすべてやり直しとなるだろう。次に要約対象の新書を購入した。配布された要約対象のプリント一部だけでなく、本一冊として何が書かれているか。それを知る必要があると感じていたからだ。要約する部分は本全体の一部でしかない。全体のなかでどのような役割の章かを理解する必要があった。結果的にそれが必要だったかどうかはあまりわかっていない。おそらく必要なかったと思う。自分には、ある課題がでたときに、意気込み、気持ちが空回りし、関係のないことに注意が逸れてしまう癖がある。森全体を見ることが優先されるときに、木の内部からじっくりと観察してしまう癖だ。自分で最近ようやく気づき始めたこの思考パターンを、松田さんには要約を見てすぐに指摘されてしまった。文章には筆者の精神が現れるのである。
話が逸れたが、本を読み終えた後には全体図をなんとなく作成した。字数制限があるなかで、どこをピックアップし、段落とするか。その作業が済んだのち、作文へと進んだ。要約を進めるうちに、何度も文章を読み直し、要約を修正し、そしてまた文章を読む、ということを繰り返した。こうして時間ぎりぎりで、宿題を提出した。
A.3-2「授業後」提出した宿題には、そもそも文章以前の問題が二つほどあった。記載は省略するが、いずれも自分の抜けているところが別の形で現れたと反省した。要約については松田さんから頂いたコメントに全てが集約されていたなと思う。詰めが甘かった。7割の完成度だけどしかたない、という心の弱い部分が、要約の冒頭にもろに出ていた。自分なりの課題を持ち参加した文演だったが、その課題が要約のたった一文で目に見える形で再び現れたのだった。文章には精神が現れるのだとつくづく思う。しかし今後も速読に通い、文演で学んだこと、要約前には「なんとなく」でやっていたことを、きちんとしたやり方で実生活の作文で心がけていくことで、次の課題が見えてくると思う。
次の課題・段階の存在には、ほかの方々のおかげで気づくことができた。「上には上がいる」。しかし、どの人たちも、決して魔法を使ってそんな高い場所へ到達したわけではない。目の前の階段を一歩一歩確実に登り、つまずいても、両手を使って這い上がったからに違いない。足が丈夫で、生まれつき階段を登るのが早い人もいるし、一段飛ばしで登れる人もいると思う。けれど大切なことは、自分と他人を比較することではなく、高い場所にいる人たちの背中を追い続けることなのだと思う。そうでもしないと、彼らはさらに高く、遠くへ行ってしまう。この差が縮まることはないかもしれないが、僕は彼らが見てる景色を一緒に見たいと思う。彼らはもっと良い景色を探しに、どんどん遠くへ行ってしまうのだろうけど。
Q.4 全体的な感想をお聞かせください。
A.4 文演では、文章作法だけでなく、彼らのような人たちの存在、その尊さに気づくことができた。
最終日の懇親会も楽しかった。リクエストしたビールを飲めたし、今後人にプレゼントしたいと思う日本酒を嗜ませて頂いた。いつもは極限の集中状態で過ごしている教室で、おいしいお酒が飲めるなんて最高だった。松田さんとも乾杯させて頂き、生徒の方々とお酒片手に(最強ダンサーの未成年学生2名は除く)仲良く話せたことが自分にとって新しく、温かみのある時間だった。「最終日のために文演はある」という松田さんの言葉は、要約宿題へのコメントではなく懇親会のことを言っていたのではないかと思っている(半分冗談です)。
文演に参加したから終わりではなく、コミュニティへの参加や、文章への興味など今後の自分の学習をさらに発展させるもの、お金では買えないものを得ることができた。文演から得るものは人それぞれだと思うし、その全てがとても貴重なものだと思う。
この文演の感想も、一つの文章トレーニングと思っているし、楽しむことができている。今までのぼくだったら、アンケートの問いに対しては、サッと結論を箇条書きで書いて終わりぐらいの程度だった。しかし、文章の楽しさをわずかでも知ってしまったぼくは、もうそういうわけにはいかない。
自分にとっての読書、ランニング、自然散策と同じように、一人で楽しめて、没入できる世界。そんな世界への扉、固く閉じていた一つの扉の鍵を開け、少しだけ開いてくれたのが、ぼくにとっての文演だった。
このアンケート量だけでOさんの生真面目さが伝わってきます。
まだ不器用ですが、まずはひた向きさです。
宿題もポイントを外さずに、さらなる工夫にトライしていましたから、その意気やよしです
速読も現在83回(19/11/25)。
数字ランダム70、たて一行210、スピードチェック40秒台、ロジカルDタイプ、イメージ記憶20秒/20秒、倍速読書10,000字/A-ですから順調です。
受講80回目アンケートが届き次第、受講60回・70回アンケートと一緒にアップしたいです。 真