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クリエイト速読スクールブログ
なおしのお薦め本(48)『麻原影晃の誕生』
クリエイト速読スクール文演第1期生の小川なおしさんから、お薦め本が届いています。今回は「オマケ」つきです。
『麻原彰晃の誕生』
麻原のような人間に惹かれた人間がいたのはなぜか。この問題について未だにモヤモヤしている人はこれを読んでみてください。
「私は何人かの元信者たちと会った(彼らは二十代から三十代だった)けれども、入信にいたる原点はなんであったかというと、家族の死によって自己の死を強く意識したということで共通していた。それは死について考えるというより、この世から自分が消えてしまうことへの恐怖であり、親しい人たちを自分から奪い去ってゆく死というものにたいするおびえであって、たとえば夜になって床に就き、目を閉じて眠ってしまったらそのまま死んでしまうのではないかと身悶えするような幼い感情であった。そうした感情がいくつになっても去らずにあって、新しく体内に生まれた得体の知れぬ臓器のようにドクドクと脈を打ちつづけるのだ」
これは他人事ではありません。そう思った方は続きをどうぞ。
「物質主義への反発、精神主義への傾倒、予言や占いブーム、地球規模の環境破壊、これにチェルノブイリ原発事故が加わって、腐敗した大人社会からの脱出と自立をもくろむ孤独でみじめな彼らのまえに、麻原は救世主として登場したわけだった。
しかし黙示録にしるされたような終末の様相は、新世紀がはじまってまもない現在(2005年)のほうがより顕著になっている。これまで経験もしなかったような大地震、大津波、ハリケーン、台風が世界各地を襲い、人類は地球の温暖化に歯止めをかけられずにいる。冷戦後、アメリカのグローバリズムの拡大のもとで、経済効率優先と弱肉強食の論理はますますひろがって、先進国の人びとは物乞いをするように投資と飽食に明け暮れるようになった。アメリカを襲った同時多発テロなどは、「第五の御使」があらわれてラッパを吹き鳴らしたときのようなありさまではないか。
私たちは知恵と勇気と想像力を失いかけている。それを考えると、麻原影晃とはやはり私たち自身の投影だったと思われる。たしかに修行者としては類まれな能力をもっていたのだろう。ところが、ほんの今し方まで美しく咲いていたはずの牡丹の花が首からぽとりと落ちるように、決まって彼はながつづきしないのだ。安易に目先の結論を求めて、目に見えるかたちで結果をほしがる。こうした人間は、自分に都合のよい結論や結果を求めるものだ。自分で結論や結果をつくりだそうとする」
またまた他人事ではありません。
では最後に、著者の考えがもっともよくわかるところを引用します。
「修行者としても、教祖としても、とっくに終わっているといちばん自覚していたのは、本人だったのではないだろうか。だから教団内に『大蔵省』や『防衛庁』や『諜報省』などを置いて、ひとつの『国家』をつくろうとした。サリンを武器として大規模なテロを仕掛けたのは、彼にとっては『戦争』だったのかもしれない。しかし私に言わせれば、国家とは人間の堕落と退廃が行き着いた極致の姿である。夢見物語だと笑われてしまうかもしれないが、個人の自由と他者の尊厳をたがいに認め合い、ひとり勝ちを求めずに、みながみな自立し支え合って生きてゆく、これこそが人間の求めるべき世界像であるとなにがなんでも私は信じたい。醜悪な国家とは、それをあきらめた、またはそうしたことを想像さえしたことのない人びとが、自己の繁栄のために共謀してつくりあげた暴力的なシステムである。堕落と退廃を極めたその人々は、こころない言葉に華やかな衣装をまとわせて、自国の民から物心両面の尊い財産を奪い、自己の延命のために他者を攻撃する。麻原という人格は、それにそっくり当てはまる。
戦争と革命の二十世紀を生きてきた私たち人類は、なにが愚かで、なにが尊いか、充分に思い知ってきたはずなのだ。しかし、どうも人間というものは、愚かなことのほうへ知恵と経験を生かそうとするもののようだ。私には麻原が、戦後の高度成長と公害の先端から生まれ出たさびしい怪物のように見える。その怪物は、私たちのこころのなかにも棲みついている。彼を『外部』に置いて見るのではなく、『内部』に置いて考える。彼を経験化することが求められていると思う」
ここまで自分の思いの丈が綴られていると、読んでいて爽快感があります。
こんかい引用した部分はすべて後記からのものです。本文は、少年時代の麻原を知る人の言葉など、会話文が多くて読みやすくなっています。
ただ、この本は決して麻原を擁護する意図をもって書かれたものではありません。念のために申し添えておきます。 なおし
■参考記事
※もりぞう爺さんの話(上)
オマケ
―なおしのメール―
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私の中では、もっと複雑で人間くさいです。