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なおしのお薦め本(6)男気万字固めb

 本宮ひろ志

  「やっぱり、自分を見る客観性って人間の持ってる重要なポイントじゃない。どう考えたって動物って自分に対する客観性持ってないから、人間は自分自身をもっと客観的に見なきゃいけないわけだよね。……っていうことは、年中自分で鏡見てなきゃいけないんだよ」

 「水の中って、上にあがっちゃったら見えないでしょ? でも魚が住んでんのは、水の中じゃないですか。たとえば、テレビやなんかに出てる連中を見てると、見られるということに慣れてて、見ることを忘れてるんですよ。水面にいると水の中は反射して見えないから、どんな巨大な魚が隠れているかわかんないわけでしょ? その客観性を持ってないですね。『お前ぐらいの見識で、ものを喋るな!』っていうヤツがいっぱいいるじゃないですか。俺は『ヤバい!』ってなったら、すぐにどっか隠れちゃうことができる商売だから。俺らの商売で描き手があんまり露出するって、あんまりよくないでしょ? 勝負は漫画の主人公だから。描いてる人間のレベルを見透かされちゃうと困るしね」

 「俺なんかは、『白紙の状態でものを考えろ』と言われたら、結構頭いいんですよ。ただ『この教科書に基づいて勉強せい』って言われたら、メチャクチャバカなんです。そういうのって、それぞれ特性があるわけでしょ」

 「人がものを教えてくれるということは、既に世の中にあることなんですよ。俺、そんな知識は別に必要ないから(きっぱり)。それは情報として入れてるだけであって。堕落した多数派を駆逐するのは、パワーのある少数派なのよ」

 「基本的にバカじゃないとは思うけど、インテリじゃないですよね。インテリってのは活字読める人間でしょ。俺、活字読めないですから(きっぱり)。ところが、世の中には活字読めない頭のいいヤツが結構いるんですよ。そういう人間は漫画を読みたがるんだけど、そのレベルに読み耐えうる漫画がないんですよね」

 「職業として、食うために漫画描いてたらつらいでしょう。結果として食えるのがいいよね」

 「俺、漫画は描いてないんですよ。漫画という表現の道具を利用して、面白いものを描ければいいと。漫画にこだわってる連中と話したって会話になんない。漫画家で、そこらへんのことまともに話せる連中って何人もいない。ほとんどダメですからね。俺がズレてるから」

 「結局、自分が面白くないとダメなんですよ。同じ視点でグルグルまわってたら、『こんなのやってられるか!』って」

 「勉強してるように見えるでしょ? 逆なんだよね。仮説を立てて、その仮説に都合のいい資料だけ集めるの。膨大な数の本を読んで、そっから立ち上げるのは効率が悪いわけですよ」

 「とりあえず仮説を立てたら、都合のいい本だけ探す。これが、必ずあるわけ。日本の本屋ってすごいよ。どんな本だってある」

 「とにかく自分の心地よさが一番重大じゃないですか。何が欲しいのかっていうと自分の楽しさが欲しいんですよ」

 「(ビッグになるためのコツを訊ねられて)簡単な話でね。何になりたいかを決めないままズルズルと成長してきちゃうのが、いまの教育でしょ? 目立つこととか飛び跳ねちゃうことは、日本人の本質として凄い嫌がるじゃないですか。親はそういうの気にするから、無難に無難にという育て方になるよね。そういう中で、やりたいものを決める人間って一割ぐらいかなって思ったの。今の子に『何になりたいの?』って聞くと、『わかんない』とか言うのが多いけど、みんなわかんないからとりあえず、俺のやり方で言うと、無理矢理決めるんですよ。だから、俺なんかにしても中学卒業して、みんな高校行くっていうから、みんなと同じ道行くのヤだなって……。それでいきなり『漫画家になる』って言って。それは好きだからとかじゃなくて無理矢理ですよ。そういう目標を立てたら、それに向かって努力するじゃないですか」

 

 最後に、解説代わりに登場した乙武さんの発言より。

 「(障害者の“害”という漢字を使わないようにする運動について)結局、世間の人の障害者に対する概念とかイメージが変わらない限り、いくら言葉を振り替えたところで、また何十年後かに新しく定着した言葉に対してやいのやいの言う人が出てくると思うんですよね。だからそういう言葉いじりをするのではなく、根本的な見方、概念を変えるようなことをしていかないと意味がないのかなと思って、僕は賛同してないんですけど」

 「(スポーツライターになったことについて)当時、僕が望まれていたのは障害者福祉の活動であり、バリアフリーの旗頭であったと思うんですけど、その時点で一番顔と名前が一致する障害者であった人間が福祉の道に進むのは、やっぱりそういう人はそういう世界でしか生きて行けないって思わせてしまうと僕は思っていて。そことは正反対の、『え、そっちに行くの』って道で一人前の活躍をしてきちっと認められた方が本当の意味でのバリアフリーになるのかなって僕は思ったんで。そっちの方が大変だったと思うんですけど」

 

 乙武さんは凄いです。他の六人のような男気はないかもしれないけど、人間力は負けていないかも、と思いました。                     なおし

             

            ※クリエイト速読スクールHP

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コメント
 
 
 
読。 (古い生徒3。)
2010-01-15 02:55:32
 あ、どうも。こんばんは。読みました。

 俳優・スポーツ選手・音楽家・漫画家と、自分が
立ち入ることのない世界の方々のお話なので、
内容がわからないところもいくつかありました。
ただ、どなたも素晴らしいエピソードの
持ち主ではありますね。

 ちょっと引いてしまうような部分もありますが、
確固たる信念のようなものを感じました。

 インタビュアーの、事前の入念な準備にも
驚かされました。ここまでチェックされたら、
ついついいろいろ話してしまうのも頷けます。

 自分としては、張本勲さんが印象に残りました。
タクシー運転手のお兄さんのお話とか
よかったです。乙武洋匡さんの考え方も
前向きで、こちらがいろいろ考えさせられて
しまいました。

 題名の通り、ちょっと女性にはキツいお話も
あるかも?でも読んでよかったと思いました。
 
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