10秒 x 久住高原の秋の夕暮れ
猛暑も過ぎて全国の紅葉も見ごろを迎えました。色鮮やかな秋の光景は改めて日本人で良かったと体感できる貴重な宝です。日本では古くから寂しさ、物悲しさを詠うことで秋の情感を際立たせていました。そんな秋の夕暮れを込めた「三夕(さんせき)」の和歌があります。いずれも新古今和歌集に収められた名歌です。
〇さびしさはその色としもなかりけり真木立つ山の秋の夕暮れ 寂蓮
特に紅葉ではないその色が寂しいという訳でもないのだけど真木の立つ山の秋の夕暮れはどことなく寂しさを感じるものだ。
〇心なき身にもあはれ知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ 西行
どうしても美しい鴫立つ沢の美しさよ、世を捨てたこの身にも情緒は感じられるものだ。
〇見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫家の秋の夕暮れ 藤原定家
見渡せば花も紅葉もない浦のボロ屋の秋の夕暮れだ、「何もない粗末な風景が情緒があるものだ」
この三つの歌、寂連の「観取」西行の「葛藤」定家の「付合」同じ「秋の夕暮れ」というモチーフを用いながらこうも多様であるのかと和歌の魅力を再認識し、日本の秋の美しさを改めて認識しました。