◇ツイッターは百四十字以内でつぶやくというルールがあります。俳句は十七音。短歌は三十一音。それに較べれば百四十文字は実に広大な世界です。サンプルをいくつかご紹介します。
・「ミシンとコーモリ傘の手術台の上での不意の出会いのように美しい」。この詩句の解釈を巡って一言。『マルドロールの歌』は吸血鬼小説のパロディとして書かれている。『マルドロールの歌』全編のミクロコスモスとして、この詩句を読んでみる。するとどうなるか。チックタック、チックタック、それ!
・手術台とは大量の血が流れる予感に充ちた場所である。その上で出合ったミシンとコーモリ傘の運命やいかに? ミシンとコーモリ傘は、手術台の上で瞬時に吸血鬼に変身を遂げるのだ。かくして、マルドロールとは、「ミシンとコーモリ傘の手術台の上での不意の出会いのように美しい」人物なのである。
・小林秀雄はたいへんなヘビースモーカーだったが、『本居宣長』を書き上げたいがために、きっぱりとタバコを絶った。老境に入ってからヘビースモーカーがタバコを絶つ。この一事だけ取り上げても小林秀雄という人は大変な人だったことを証明する好個のエピソードと思われる。
・朝目覚めてすぐ「そうだ、会社へなど行っている場合ではない」と思い、すぐ電話して「体調が悪いのできょうは休ませてもらいます」とウソを言って(体調が絶好調だからこそ休みたかったのだ)、その日一日、ドストエフスキーの『悪霊』を読み耽ったことがあった。『悪霊』が無性に読みたかったのだ。
・橋川文三の文章は所々あまりにも含蓄的で限りなく奥深い。そのきらめくような思考の断片のあちらこちらをつなぎあわせて比較推量し、やっと橋川文三が考えていたことの深みの理解の端緒に至ることができる、そういう性質の文章である。 誰が橋川文三を真に読み切ったか。読み切った人は誰もいない。
・雑談というのはテーマがどんどん流れていくところにその妙がある。 AさんがXのテーマで話を始める。その中にYのテーマが含まれている。BさんがYのテーマで話し始める。 今度はCさんがYのテーマからの連想でZのテーマを語り始める(BさんはZのテーマには一切触れていないのに注意)。
・本当は好きなものをあたかも嫌いであるかのように装って憎たらしげなパフォーマンスしてみせるのは思春期特有の病気だが、そういう意味では好きな天皇を嫌いであるかのように見せかける表現方法を採用した丸山真男もまた、思春期病から生涯抜け切れなかった一人である。魔女の二枚舌は永遠に不滅です。
・恋人たちのみならずおよそ人間の視線と視線が交錯する瞬間に発生する沈黙こそ文学の永遠の故郷である。◎◎◎と●●●とがこすり合わされて生じる音楽をかつて梶井基次郎はエロティック・シンフォニーと称したが、沈黙と音楽の交配こそ天地創造の始原であろう。されば音楽よ高鳴れ!沈黙よ深まりゆけ!
◇とまあ、こんなのがツイッターです。あなたもツイッターでつぶやいてみませんか?
自衛隊の美しすぎる歌姫 鶫真衣 「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」
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