かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の231

2020-01-08 17:20:17 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の30(2019年12月実施)
     Ⅳ〈月震〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P151~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、菅原あつ子(紙上参加)、
         渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子    司会と記録:鹿取未放


231 落日の重さを負えと言われしがへとへとと背をみせて亀ゆく

          (レポート)
 落日の重さを負えと亀は言われた。お噺ではあるが浦島太郎や太古には地球を背負っていると思われたりした。これらは実際の重さなのだが、掲出歌「落日の重さ」をどう解釈するかということだろう。詩的な言葉、落日へは浄化、再生、慰撫などの概念を抱く私たちだが、ここは万年を生きるとされる亀である。地球上に限りなく続く生命の歴史のその事実の重さを落日とともに負えということだろう。しかしながら、へとへとというオノマトペからは消極的に去って行くイメージが浮かぶ。   (慧子)


           (紙上意見) 
 作者は、たぶん仕事で辛い立場、状況におかれているのだろう。疲れ切ったカメの背中に共感を寄せている。切なく哀れな「へとへと」のカメは作者であろう。(菅原)


           (当日意見)
★慧子さん、「落日の重さを負え」と言われたのは亀ですか?〈われ〉ですか?
  (鹿取)
★亀です。(慧子)
★では、その場面を〈われ〉が見ている?(鹿取)
★はい。(慧子)
★わからないけど、この歌大好きです。(鹿取)
★私も好きです。自分が言われたんだとすると単純な歌になってしまう気がする。
 鶴ではだめで亀に言われたのがよい。(A・K)
★ホーキングのどの本だか忘れたけど、ともかく宇宙論の本にこんなエピソードが
 載っていました。宇宙についてあるところで講演をしたら、おばあさんが近づい
 てきて「今のお話しはとっても面白かったわ。でもね、地球は亀が背負っている
 のよ」と言ったって。亀の上に亀が乗ってというふうに数え切れない亀が地球を
 背負っているのよって。まあ、数百年前まではそう考えている人が多かった訳で
 す。この歌を詠んでいたらホーキングのこのエピソードを思い出しました。まあ、
 ここで負うのは地球ではなく落日だから太陽ですけど。(鹿取)
★これは現代詩だと思います。ぞろぞろとかまろまろとか過剰なオノマトペを使っ
 ている一方で、この歌はかっこいい上の句ですよね。それを受けて下の句は現実
 の持っている絶対的な厚みみたいなものを感じる。この下の句があるから上の句
 が生きるんじゃないか。(A・K)
★なるほどねえ。これ、亀に背負えと言っているのは、まあ、神のような絶対者で
 すよね。しかしその命令を受けている亀はへとへととゆくんですね。その落差が
 面白い。(鹿取
コメント
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