かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 395(中欧)

2020-04-13 16:38:21 | 短歌の鑑賞
 馬場あき子の外国詠54(2012年7月実施)
   【中欧を行く 虹】『世紀』(2001年刊)P109~
   参加者:K・I、N・I、崎尾廣子、曽我亮子、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:藤本満須子 司会と記録:鹿取 未放


395 エレクトラ熱唱する大き影ゆれてかく呪ふことわれを励ます

          (レポート)
 今は亡き父を慕い、孤独の寂しさを訴え、復讐を誓うエレクトラの影が舞台背面に大きく揺れている。そのエレクトラの姿は私を励ましてくれる。エレクトラの中に自己のある姿を見ているのだろうか、あるいは『世紀』でうたっている日本の状況の中での思索なのだろうか。(藤本)


         (当日発言)
★人間の感情の底知れない深さを感じ取っている。深さを知れば知るほど鼓舞されている。短歌
 を深いものにしたいという先生の気持ちが表れている。(崎尾)
★呪うことが励ますというのは世間的には憚られること、それを敢えて詠われたところがすばら
 しい。道徳とか善に縛られていない。(慧子)
★呪うことというのは強さである。道徳的とかそういうこととは違う。(曽我)
★言葉どおり取ったら、「呪うことがわれを励ます」のだ。(藤本)
★表現者としてというところを超えて人間として、呪いの熱唱の圧倒的な力に打たれている。情
 念の厚みのようなものの凄みに圧倒され、人間としての大きさというか、古代的な強さという
 か、そういうものを感じ取っている。ダイレクトな感情の高まりの場面で、藤本さんのいわれた
 ような日本の状況がどうとかいう思いが忍び込む隙間はないでしょう。下の句で深く深く納得し
 たが、うまく説明できない。すばらしい歌だと思う。(鹿取)

コメント
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