2023年度版 渡辺松男研究4【地下に還せり】
(13年4月実施)
『寒気氾濫』(1997年)12~
参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、鹿取未放
司会と記録:鹿取 未放(再構成版)
22 寒雲をひとつ浮かべてしずまれる空そのものの無言 父の背
(当日意見)
★父の背中から非常に通俗的な読みができる歌はたくさんあるだろ
うけれど、この歌はとてもスケールが大きくて通俗性を全く感じ
ない。評者は叙景と言っているがそうなのかな?一字あけの前後
がイコールで結ばれている訳ですが、「寒雲をひとつ浮かべて」
いるところまでは叙景だけど、しずまれる空を無言ととらえてい
るところは比喩であって叙景ではない。これが渡辺さんの歌い方
だと思う。通俗的になりがちな父の背を、精神の高みに導いてく
れるような歌い方に魅力を感じる。(鹿取)
★寒雲と言った場合寒々としたわびしさのようなものが感じられ
る。それを父の背が映し出している。身体によるメッセージだ。
身体としての言葉が背中とかに表れてくる。ニーチェの言葉をあ
えて出すと、「私は身体である。霊魂とはただ身体に属するある
ものをあらわす言葉にすぎない。身体は一つの偉大な理性であ
る。」(「ツァラツストラ」身体を軽蔑する者たちについて)
と言っている。普通われわれが考えているのとは逆のことを言っ
ている。まあ、ニーチェが言っているからというのではなくて日
本人だと無言の父の背中は分かるところがある。空は何も言わな
いけれど無言のメッセージを放っていて、父の背もそうだ。映画
で言うと高倉健のよう。(鈴木)
(13年4月実施)
『寒気氾濫』(1997年)12~
参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、鹿取未放
司会と記録:鹿取 未放(再構成版)
22 寒雲をひとつ浮かべてしずまれる空そのものの無言 父の背
(当日意見)
★父の背中から非常に通俗的な読みができる歌はたくさんあるだろ
うけれど、この歌はとてもスケールが大きくて通俗性を全く感じ
ない。評者は叙景と言っているがそうなのかな?一字あけの前後
がイコールで結ばれている訳ですが、「寒雲をひとつ浮かべて」
いるところまでは叙景だけど、しずまれる空を無言ととらえてい
るところは比喩であって叙景ではない。これが渡辺さんの歌い方
だと思う。通俗的になりがちな父の背を、精神の高みに導いてく
れるような歌い方に魅力を感じる。(鹿取)
★寒雲と言った場合寒々としたわびしさのようなものが感じられ
る。それを父の背が映し出している。身体によるメッセージだ。
身体としての言葉が背中とかに表れてくる。ニーチェの言葉をあ
えて出すと、「私は身体である。霊魂とはただ身体に属するある
ものをあらわす言葉にすぎない。身体は一つの偉大な理性であ
る。」(「ツァラツストラ」身体を軽蔑する者たちについて)
と言っている。普通われわれが考えているのとは逆のことを言っ
ている。まあ、ニーチェが言っているからというのではなくて日
本人だと無言の父の背中は分かるところがある。空は何も言わな
いけれど無言のメッセージを放っていて、父の背もそうだ。映画
で言うと高倉健のよう。(鈴木)