かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 30

2023-04-19 12:24:10 | 短歌の鑑賞
    2023年度版 渡辺松男研究4【地下に還せり】
      (2013年4月実施)
      『寒気氾濫』(1997年)12~
       参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、鹿取未放
        司会と記録:鹿取 未放(再構成版)


30 水楢の裂けたる幹に手を当てて芽吹きの遅きことを愛せり

     (当日意見)
★水楢という種類の樹が芽吹きが遅いということではなく、目の前
 の個体が裂けている、つまりこの樹だけが傷を負っているので芽
 吹きが遅いというんじゃないかな。だから樹に手を当てておま
 え、ちょっと遅れをとっているぞ、がんばれよ、っていう感じ。
   (鹿取)
★水楢という樹はみんな裂けているんですか?(鈴木)
★だいたい裂けています。(慧子)
★でも裂けているのが常態ならわざわざ裂けたるとは言わないので
 は。(鈴木)


      (後日意見)(2020年5月)
 水楢を植物図鑑などで調べると、どんぐりのなる樹のひとつで、ごつごつした幹だけれど、樹皮が裂けるのが常態だというようなことは書かれていない。慧子さんの意見のように裂けることも多いのかもしれないが、ここでは他の水楢の樹と違って幹が裂けた樹があり、その樹だけちょっと芽吹きが遅れている、というように解釈しておきたい。(鹿取)
コメント
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