かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 132(ネパール)

2021-01-18 20:02:23 | 短歌の鑑賞
  馬場あき子の外国詠16(2009年1月実施)
    【ニルギリ】『ゆふがほの家』(2006年刊)83頁~  
     参加者:K・I、N・I、T・K、T・S、N・T、
         藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:T・H 司会とまとめ:鹿取 未放
                    

──── ネパールのアッパームスタンに「こしひかり」を実らせた
       近藤亨翁をたずねてジョムソンに行った。
(この詞書のような2行は、「ニルギリ」の章全般に掛かる。鹿取注)

132 いつしかに弓月が嶽に雲わたる声調を思へりき雲湧くヒマラヤ

        (まとめ)
 柿本人麻呂の「雲を詠む」と題した万葉集の歌「あしひきの山川の瀬の響るなへに弓月が嶽に雲立ちわたる」がある。「山川の流れる音が高まるにつれて、弓月が嶽に雲が湧きのぼってくることよ。」の意。「あしひきの」は「山」に掛かる枕詞。「なへに」は、上代の助詞で「~するに従って」「~するにつれて」の意。力強い声調をもつダイナミックな歌で、島木赤彦が誉めたことから有名になったという。馬場の歌、雲湧くヒマラヤを眺めていると、いつのまにか人麻呂の「弓月が嶽に雲わたる声調を」思いだしたことだというふうに繋がる。雄渾なヒマラヤの景色を前にした心のたかぶりが伝わってくる。127番歌「高き雲西へ去りゆき低き雲東へわたるニルギリの朝」も人麻呂の弓月が嶽の歌の影響があることは既に述べた。(鹿取)

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