かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 191

2021-03-27 18:30:02 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究23 【眉間】『寒気氾濫』(1997年)79頁~
   参加者:泉真帆、かまくらうてな、渡部慧子、鹿取未放、石井彩子と鈴木良明は紙上参加
   レポーター: 泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
            
    
191 赤尾敏と東郷健の政見を聞き漏らさざりし古書店主逝く

     (レポート)
 赤尾敏は反共主義者。はじめ農民組合運動など無政府主義的活動をし、のちに転向し、大日本愛国党を結成した。東郷健は雑民党の代表。ゲイバーを経営したり、ゲイボーイとして働いたり、エイズ啓蒙活動などをしていた。連作の中で、全体をつなぐ役目か。両氏の政権をしっかりと心に留めた古書店主が浮かぶ。(真帆)


    (紙上意見)
 昭和の後期、各々右翼、左翼の違いはあるが、赤尾敏も東郷健も、政治思想というよりは毎回、選挙に立候補して、落選するので有名であった。この古書店主は、組織が嫌いで、一匹狼的な性 格の持ち主なのだろう、そのような反骨精神を彼らに重ね、彼らが当選し、政権を握ることを信 じていたのかもしれない。古書店主の生前の生き様を巧く捉えた一首(石井)


 両名は、何度も選挙に立候補しては落選し続けてきた右翼?と同性愛者?。時世や当落に関係なく主張が一貫しているので、それを「聞き漏らさざりし古書店主」も別世界の人であった。(鈴木)


    (当日意見)
★こういう歌があることが面白いですね。(うてな)
★農業の祖父とか弟の作業着とかに繋がっているので、一連で労働者ということをいいたかったの
 かなと思いました。(真帆)
★赤尾敏と東郷健、その放送を聞いている店主、またそれを見ている作者というふうに入れ子細工
 的な面白さを感じました。(慧子)
★店主に共感していると思います。変わり者に対して。(うてな)
★思想的にも一般の人からはみ出している古書店主かもしれないけれど、暇に任せて彼等の政見放
 送を聞いていたのかもしれませんね。そのことを知っているということは〈われ〉はこの人と仲
 がよくて直接店主から話を聞いたか、〈われ〉が通い詰めて、そういう店主を観察していたかで
 すよね。そして亡くなったことも知っている。店主に近親感を持っていたか、同類だと嗅ぎ取っ
 ていたか。(鹿取)


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