かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  278

2021-08-09 17:09:45 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究34(16年1月実施)
    【バランスシート】『寒気氾濫』(1997年)115頁~
     参加者:石井彩子、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:渡部 慧子  司会と記録:鹿取 未放


278 CNC旋盤見る見る鉄削る 削られてゆく未来オモエリ

       (レポート)
 旋盤の運動制御をコンピューターによっているCNC旋盤。それが今みるみる鉄を削っている。削られてゆく見える物質。一方で目には見えない未来というものを作者は「オモエリ」という。コンピュータープログラムによって動いているので、そこに人間の勘やためらいはない。それを「オモエリ」と乾いた感じの表記とした。(慧子)


      (当日意見)
★下の句に既視感があって、誰かの本歌取りかなあと思うんだけど思い出せなくて。誰か知
 りません?まあ未来思えりって誰でも使うような言葉だけど、「思えり」ではいけない理
 由がこのカタカナの「オモエリ」にはあるんですよね。。(鹿取)
★削られてゆくに目が行っているのは、何かが無くなっていくようで。(鈴木)
★工場って何か作り上げるところなのに、何かが失われてゆく。(石井)
★そうですね、失われてゆくものが過去のものではなくて未来に繋げているところ、時の矢
 が前方から迫ってくるような感じが怖いですね。(鹿取)
★何かを作り上げるということは価値のあるものばかりを目指す訳で、そこから排除される
 ものがあるわけです。役に立たないと思われているもののなかに本当はすごいものがあっ
 たかもしれな いのに。経済成長だけが善という今はいきかただけど、成長しなくてもい
 いのではないか、そこで失われていくものは何なのか、そういうことを言っている。
     (鈴木)

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