かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 2の234

2020-01-11 17:43:06 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の30(2019年12月実施)
     Ⅳ〈月震〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P151~
     参加者:泉真帆、岡東和子、A・K、菅原あつ子(紙上参加)、
         渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子    司会と記録:鹿取未放


234 家畜象膚擦りよせて過ぎ行けばじんじんと痒き木のじんましん

          (レポート)
 聞き慣れない家畜象とはタイかカンボジアの国のことだろう。木に膚をすりよせることがあるようだ。すると木は痒くなるらしい。樹皮に病があったのか、象アレルギーなのかわからないが、内容よりも下句のオノマトペからじんましんへつながる韻をうたったのか。しかしながら家畜象から木のじんましんへよく発展させたものだとおどろく。(慧子)


           (紙上意見) 
 東南アジアのどこかでは、象を木材などの運搬作業のために飼っているようなので、その象が木の間を必死で進んでいく場面だろう。あのしわしわのごわごわの象にすり寄られたら木も痛がゆくて蕁麻疹が出ようというものか。「じんじんと」に木と一緒に痛くかゆくなるような実感があり、同時に「家畜象」によって象に哀れを感じさせる歌。(菅原)


       (当日意見)
★何かを運搬している象なのでしょうか、痒いので通りすがりの木に膚をすり寄せ
 て痒いところをこすっている。「擦りよせ」って能動的だから。それで木が感染し
 て痒くなってしまった。(鹿取)
★発想が独特で素晴らしいですね。木がじんましんになったって。「木のじんまし
 ん」の「の」は主格ですか?(A・K)
★はい、主格ですね。木もじんましんになって痒いんですね。「じんじん」「じんま
 しん」という韻も面白いですね。(鹿取)



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