かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 100

2022-07-30 09:37:39 | 短歌の鑑賞
  2022年度版 渡辺松男研究2の14(2018年8月実施)
    【はだか】『泡宇宙の蛙』(1999年)P69~
     参加者:泉真帆、A・K、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉真帆   司会と記録:鹿取未放
  

100 穴ぼこの底から空を見上げてみよときどき雲のとおるゆたけさ

      (レポート)
 「穴ぼこ」は何か地中に棲む生き物の巣なのかもしれない。地下に苦しむ人々の喩ともとれるが、それはやや偏った鑑賞かもしれない。しかし、光の届かない小さなところ、わずかな希望から雲のゆたかな動きをみるというのは、単に空を見るよりさらに豊かさを増すだろう。(真帆)


     (当日意見)
★私は穴ぼこは自分で掘ったもののようにイメージしていました。(鹿取)
★臭くみると、人間は穴ぼこにいて、空には神様や仏様がいて永遠なるものがあるんです
 よ、という感じだけど、そうじゃないんだと思う。昔、子ども時代落とし穴を作ったこと
 があるんですよ。それで、人が落っこちると喜んでいた。そういう穴ぼこから空を見たら
 雲がすーと通っていく、それだけなんです。でも渡辺さんにしては「ゆたけさ」ってここ
 まで言うかなって思った。雲が通って行くだけでいい。もちろん、おっしゃりたいことは
 分かるしこういう世界大好きなんだけ ど、自分が存在するって大したことではないんだ
 ねって。形而上学的な事とか永遠とか、この人 のそういうところが好きなんですけど。
     (A・K)
★「壺中の天」を私は思いましたが。(慧子)
★私はA・Kさんと違って「ゆたけさ」に眼目があると思ったのです。先日、飛行機に乗っ
 て雲を見ました。夕焼けに染まってそれはそれは美しかった。上にも下にも雲が見えた
 のです。穴から 見上げるのと、飛行機から下の雲を見下ろすのは違いますが。(真帆)

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