マーちゃんの数独日記

かっては数独解説。今はつれづれに旅行記や日常雑記など。

『ソロモンの偽証』(著:宮部みゆき 出版:新潮社)を読む

2012年12月22日 | 読書

 宮部みゆき作「ソロモンの偽証」Ⅰ・Ⅱ・Ⅲを漸く読了した。ページ総数2200ページ弱の大長編で、文京区図書館から借りたⅠ部「事件」を読み始めてから、勤務先中学の図書館のⅢ部「法廷」を読み終えるまでに2ヵ月ほどの月日が流れていた。 「小説新潮」に2002年10月号から2011年11月号まで連載された、原稿用紙にして4700枚の長編小説である。

 物語は、クリスマスの朝、学校の通用門そばで死んでいる中学2年生の男子生徒が発見されるところから始まる。1ヵ月前から不登校状態で、いじめられていたとの噂があり、クラスに仲の良い友人はいなかった。
 生徒の死は飛び降り自殺。警察の判断に両親も納得し、平常の学校生活が戻って来た頃、「本当は殺されたのです」と不良グループを名指しする告発状が学校などに届く・・・。昨今報道される「いじめ」が本書のテーマである。
 生徒の死によって混乱に陥った学校で、中学2年生の女生徒が「自分たちで真実を見つけ出そう。学内での模擬裁判を」と呼び掛け、同級生たちが賛同。中学3年の夏休みの1週間だけ学内裁判が始まる。

 登場する多数の中学生一人ひとりに、内面の思いを語らせる場面が多い。特に第Ⅲ部「法廷」が出色。現実には中学3年生が学内裁判を開催する事が出来るとは思えないが、筆者の力量が、このような裁判があっても可笑しくはないと思わせる展開が続く。生徒達の生き生きとした活躍が綴られていく。
 生徒の死は、自殺か事故か事件か、というミステリーを軸に、宮部は中学生の切実な思いを語らせたのだと私は思った。
 Ⅱ部「決意」を読み終えた時点で、謎解き解答を紙に書いて、家人と私、封筒に入れておいた。二人が読み終えた時点で開封。結果は家人が正解で私は真相を外した。

 小説誌で連載が始まったのが今から10年前。宮部は朝日新聞のインタビューに答えて「本が出る頃には、いじめの問題は解決されてもう古い話だと言われるのでは、と思っていました」と答えているが、現実には”大津事件”に象徴されるように、現在進行形の深刻な大問題である。
 この本は、今年度「このミステリーがすごい」と「週刊文春 ミステリー10」とに、第2位にランクインされた。(因みに第1位は横山秀夫「64(ロクヨン)」)