トンボ撮影レンズ考
200ミリクラスのマクロレンズ
200ミリクラスのマクロレンズは、主に、200ミリと180ミリがあり、ニコン、キャノン、ペンタックス、ミノルタ、サードパーティでは、シグマ、タムロンなどから出ている。
このクラスのマクロレンズは、1キロ前後と重いため、可搬性にやや難があるが、トンボを被写体として限定した場合、望遠から等倍マクロまで連続的に使用できるのが非常に便利である。
100ミリクラスのマクロレンズ(105ミリ、100ミリ、90ミリ)では、焦点距離が短い分、寄らなくてはならず、被写体のマクロ撮影をすることに関し、成功率は確実に落ちる。若干離れての撮影になると、背景がごちゃごちゃして、トンボの姿も画面のほんの一部に映っているだけ・・・何が写ってるかわからない・・・という悲惨な結果になりやすい。その点、200ミリクラスでは多少離れていても満足な大きさに写し込むことが可能である。
100ミリクラスのマクロレンズと比較した場合、200ミリクラスの有利な点は、まずワンカット撮影に費やす時間を短縮出来ると言うこと。100ミリクラスほど寄らずに撮影出来るため、相手に逃げられる確率が低く、成功ショットを早期に収めやすい。時間がない中でのフィールドワークでは、離れて良し、寄って良しの200ミリクラスはこれ以上ない成果を収めるであろう。
200ミリでは少し寄るだけで、被写体を大きく背景をぼかして撮ることが出来る。
ペンタックス200ミリマクロ使用
100ミリクラスのマクロレンズ
前記のように、100ミリクラスのマクロレンズは、満足な大きさに映し込むために、より被写体に近づく必要があり、トンボの場合は近づく前に逃げられてしまう可能性が高くなってくる。時間に余裕のない時、足場に難があって近づけない場合には、100ミリクラスでは役に立たない事が多くなってくる。ただ、被写体に近づきやすい場合、被写体が狭い範囲で飛翔している場合など、200ミリクラスでは手に余ってしまうこともあり、そんな時に100ミリクラスは間違いなく活躍する。
時間に余裕があり、被写体にも十分寄れるとなると、開放F値が明るい100ミリクラスでは、より早いシャッタースピードを選択できることになり、軽量効果もあって、200ミリクラスで起きやすい手ぶれの危険を大幅に回避できる。また被写体にぐっと近づく撮影になるため、自然との一体感を味わえるのも100ミリクラスの醍醐味である。最近シグマから出ている中間的な150ミリマクロがあるが、適度なワーキングディスタンスと明るさ、軽さを兼ね備えた良いレンズだと思われる。
100ミリクラスのマクロレンズでは、自分が自然と一体化した感覚に浸りながら写すことが出来る。
タムロン90ミリマクロ使用
50ミリクラスのマクロレンズ
50ミリクラスのレンズは、当然ながら相当寄らないと満足な大きさには写せないので、逃げ足の速いトンボ相手や足場が悪くて近づけない環境では殆ど役に立たないが、人間の視野に相当する画角の広さを活かして動きのある飛翔物体の撮影に威力を発揮する。より広角な30ミリクラスのマクロレンズも出てきているが、これらはノーファインダーでも、そうでなくても、そのコンパクトさを活かして動きのある被写体に積極的に挑める楽しさがある。
望遠レンズ
300ミリ、400ミリクラスには、適度な大きさ重さで、最短距離も短く、F値もそこそこ明るく、値段も手頃な優秀なレンズが各社から出ている。最近は望遠ズームが圧倒的に多いが、画質を追求するとなると、単焦点レンズを選択した方が良いだろう。
特に、安価な望遠ズームでは、望遠端付近の描写力にまだまだ難点があり、望遠域を目的で購入すると画質に対して不満を抱く結果になってしまう。これらの単焦点望遠レンズは、特に大体2メートルから10メートル位の中距離での撮影に効果を発揮する。
どうしても近づけない被写体を満足な大きさに写すには、このクラスのレンズは欠かせない。
筆者が使っているDA300ミリは、最短1.4メートルで1/4倍まで、シグマの400ミリテレマクロは、F5.6ながら、最短1.6メートルで1/3倍まで寄ることが出来る。10メートル以上の、より遠距離の被写体となると、このクラスでは表現しきれない部分が出てくるので、500ミリ以上の望遠レンズが必要となるが、トンボでは長距離砲の出番は殆ど考えにくい。勿論、あれば役立つこともあるが、トンボは幸い近づきやすい被写体なので、レンズを伸ばさずとも、近づくことで焦点距離をカバーできるのである。
望遠レンズでは、近づけない被写体をある程度の大きさに切り取ることが出来る。
DA300ミリ使用。
足場が悪くて近づけない被写体を400mmテレマクロで捉える。
ズームレンズ
ズームレンズは、今や標準レンズの代わりとして活躍する汎用的なレンズで、万能であるが故に、個々の性能では単焦点レンズに一歩譲る面がどうしても出てしまう。従って、精細な絵を得たい場合は、単焦点のマクロ専用レンズを使った方が、満足のいく結果を得やすいと言うことになる。勿論、各社から出ている70~300mmのマクロ付きズームをフィールド用万能レンズとして使うのもアリだが、実際の操作面で難があったり、どうしても専用レンズには描写能力で劣ってしまう点があるだろう。また、望遠側の開放が5.6とかになってしまうのは、ファインダーが見づらくなるなどの点で、少々つらい。
一方、17ー70ミリクラスの標準ズームレンズは、面白い使い道がたくさんありそうだ。1/2.3倍まで寄れるシグマのDC17-70mmをはじめ、このクラスには、広角から中望遠までカバーすることで、環境の写し込みから、背景をぼかしたマクロまでこなせる優秀なレンズが多い。レンズも比較的コンパクトなので、写しながらのズーミングが楽で、十分実用的だ。
また、これらのレンズは、ヘリコイドの回転幅が狭いことが多く、よりシビアなピントの追い込みには少々つらいが、それゆえに、物理的にスピーディに被写体にピントを合わせやすいという利点がある。それを活かして、飛翔物体をすばやく画面に捉えてモノにする方法も考えられる。
また、最近は、大口径で明るいながら、重さも適度で最短距離も短い望遠ズームが出ている。特に、タムロン、シグマの70-200ミリはその最たるものと言えよう。タムロンのレンズは、最短が全域で95センチと、シグマより僅かに近くまで寄れ、1/3倍までのマクロが可能となっている。等倍マクロは出来ないが、ポートレート主体の撮影だったら、かなり重宝する焦点距離だし、開放2.8から画質が良いようである。値段も安いし、筆者も機会があったら揃えておきたいレンズの一つだ。ただ、広角側でも最短距離は同じなので、短い焦点距離で寄って撮影は出来ない。出来れば、安価なズームレンズと同様、1/2倍まで寄れると間違いなく買いなのだが・・・。
17-70ミリ 70ミリ側で撮影。ヘリコイドの回転角が小さいため、素早くピントを合わせることが出来る。
但し、回転角が小さい分、精密なピントの追い込みは難しい。
17-70ミリ 17ミリ側で撮影。背景が写し込める。勿論、中間的な焦点距離での撮影も面白い。
90ミリマクロ使用。
テレコンバーター
筆者も手持ちのレンズ資産を最大限に活かそうと、テレコンバーターをいくつか購入した。
1.5倍では、200ミリが300ミリに、2倍では、200ミリが400ミリになる。最短距離は変わらない(フロントコンバーターでは変化する)ので、最大倍率もその分大きくなり、理屈上では非常に便利である。しかし、結論から言うと、テレコンバーターの使用は、トンボ撮影にはあまりおすすめできない。
トンボの場合、マクロとは言っても、顕微鏡のように詳細を写すことはあまりなく、適度な大きさに全身カットをおさめるというのが常道であろう。したがって、その大きさでも精密さを要求する場合、テレコンバーターを使用することによって、画質の低下が露呈しやすいことになる。テレコンバーターの原理は、マスターレンズの描写をそのまま拡大するものなので、マスターレンズ以上の描写性能は発揮されない。むしろ、光学系が増えることによって像の純度は落ちるし、ケンコーなどの安価なテレコンでは、フレアなどが起きやすくなるし、ましてや、倍率の分F値も暗くなるので、シャッタースピードが下がり、ブレも起きやすくなる。テレコンバーターがその威力を発揮するとしたら、マスターレンズだけでは、十分な大きさでファインダーに入れられないためにピントが正確に合わせられない場合、テレコンで像を拡大して、ピント合わせの確率を上げる・・・テレコン使用によってよりピントの正確な像を得たい・・・という要求にその使用効果が合致した場合のみである。
ただ、前述のように、その分ファインダーも暗くなるので、必ずしもテレコン使用によってピント合わせが楽になるとは言い難い。
筆者は実際にいくつかのテレコンを用いてテストした結果、テレコン使用は、中途半端な拡大率のトンボ撮影では概して役に立たないという結論に至ったわけである。テレコン使用が成功したかどうかは、結果として表れる像を見ての判断ということになり、人間の目の実務的?解像度(視覚)との駆け引きにゆだねられるわけで、超接写であれば、テレコンにより像がより大きくファインダーに現れ、より精密な接写が得られるということになるが、ポートレート主体の撮影では、その使用は殆ど役に立たず、逆にテレコン使用による画質劣化の方へ目がいきがちになる。そして、今や、テレコンを使わずとも、補間拡大、トリミングなどで自由に画像の大小をコントロールできる。また、近寄れるのだったら、テレコンを使わずにあと一歩寄れば済むことなのである。
DA300ミリ単体で写したもの。これでも大きさ的には悪くはないが。
DA300ミリにテレプラスをつけて撮影した例。近寄れない被写体を大きく写すことが出来た。
*検証*
タムロン70-200は、A★マクロ200の代わりが務まるか?
我が最愛のレンズA★マクロ200。1992年に購入後、長年愛用してきた。扱いがぞんざいだったため、途中絞り羽根が故障、カビ跡もあり、デジタルに移行してから、次第にヘリコイドの引っかかりも気になり、レンズ情報も伝わりづらくなるなど、若干老朽化してきた。そこに来て、2010年には一番避けるべき水没という事態に陥り、修理不能と思われたが、奇跡的に修理されて復活!・・・しかしその一月後には転倒して地面に思い切りたたきつけ、マウント部分に少しガタツキがでてしまった。接点情報が若干伝わりづらくなったものの、普通に使用可能なので、シーズンオフまではごまかしごまかし使って、オフに治せるかどうか?工房に問い合わせてみるつもりで居る。
そんな過酷な目に合わせてきた200ミリだが、その写りは他の何者でも代用できない。
昨年タムロン90ミリを購入し、透明感と解像感に満足し、今シーズンはかなり使用率が上がるか?と思われたが、イトトンボ等で少し活躍したものの、200ミリのバックボケがどうしても捨てきれず、結局200ミリに戻ってきてしまった。
ところで、昨年あたりから密かに注目していたレンズがあった。タムロンの70-200だ。
0.95メートルまで寄れ、倍率1:3.1。写りにも定評があるのに低価格!と魅力たっぷりだ。そして2010年7月、ついに思い切ってオークションで落とした(50k位)。
しかし、買ってすぐに実戦投入して写した画像を見て愕然!
ものすごいフレアで使い物にならないのだ!
あわよくば200ミリマクロの代わりに第一線で活躍して貰おうと思っていただけに、フレアショックは大きかった。。。
すぐさま、作例をつけてタムロンに調整に出した。
一週間ほどで戻ってきて、試したところ、フレアはだいぶ改善されたようだった。
しかし、1.4キロの予想以上の重さ、かさばる大きさ。。。持ち運びも大変だし、撮影も楽ではない。
そんなこんなで9月以降は殆ど稼働せずになってしまったが、シーズンも押し詰まってきて、少しゆとりが出はじめたので、久しぶりに実戦に投入してみた。
まずは最も問題のある望遠端200ミリ絞り開放での画像。(以下すべて等倍切り出し無加工)
200mm f2.8 1/1250
あいにく風があって揺れていてピントを合わせづらかったが、何とか踏ん張った。
f2.8での撮影なので、ピントも浅いがどうにか山の一部はつかんでいる。
肝心の写りはちょっとモヤッとしている。これは仕様内とのことで残念。
150mm f2.8 1/2000
130mm f2.8 1/1250
この辺だと写りは安定してフレア感も少なくなる。
A★マクロ200ミリ f4.0 1/2000
タムロンの開放2.8と比べるのは少々かわいそうだが、200mmマクロ絞り開放での撮影。安定感、解像感ともワンランク上の描写だ。このレンズの偉大さを改めて思い知ることとなる。
気を取り直して、更に検証。
150mm f3.5 1/1600
150mm f4.0 1/2000
110mm f3.5 1/1600
以前から確認済みだが、150ミリ付近で一段絞ると描写はかなり安定する。200マクロよりも若干成功立が落ちるのは、レンズの大きさ重さが関係していると思われる。
こんな具合で、一段絞って150ミリ付近で使えば、そこそこ使えるレンズと言えそうだが・・・・。
160mm f2.8 1/2500
160mm f3.5 1/1600
上記二枚は比較的写りの安定する160ミリでの撮影。一般に写真の不鮮明さは、実はピントよりもブレによるところが大きく、1/2500はブレを最小限に抑えうるはずで、今年の経験から、絞り込むよりも絞りは開けたままでシャッタースピードを上げた方がシャープな画像が撮れる確率が高いことを実感しているのだが・・・酷い写りだ。。。
これは座り込んでじっくり何枚も写したのだが・・・。
光線状態を相当選ぶレンズなのかもしれない。
こういう事があると、安心して200ミリの後釜を任せるわけにはいかないのだ。
200ミリクラスのマクロレンズ
200ミリクラスのマクロレンズは、主に、200ミリと180ミリがあり、ニコン、キャノン、ペンタックス、ミノルタ、サードパーティでは、シグマ、タムロンなどから出ている。
このクラスのマクロレンズは、1キロ前後と重いため、可搬性にやや難があるが、トンボを被写体として限定した場合、望遠から等倍マクロまで連続的に使用できるのが非常に便利である。
100ミリクラスのマクロレンズ(105ミリ、100ミリ、90ミリ)では、焦点距離が短い分、寄らなくてはならず、被写体のマクロ撮影をすることに関し、成功率は確実に落ちる。若干離れての撮影になると、背景がごちゃごちゃして、トンボの姿も画面のほんの一部に映っているだけ・・・何が写ってるかわからない・・・という悲惨な結果になりやすい。その点、200ミリクラスでは多少離れていても満足な大きさに写し込むことが可能である。
100ミリクラスのマクロレンズと比較した場合、200ミリクラスの有利な点は、まずワンカット撮影に費やす時間を短縮出来ると言うこと。100ミリクラスほど寄らずに撮影出来るため、相手に逃げられる確率が低く、成功ショットを早期に収めやすい。時間がない中でのフィールドワークでは、離れて良し、寄って良しの200ミリクラスはこれ以上ない成果を収めるであろう。
200ミリでは少し寄るだけで、被写体を大きく背景をぼかして撮ることが出来る。
ペンタックス200ミリマクロ使用
100ミリクラスのマクロレンズ
前記のように、100ミリクラスのマクロレンズは、満足な大きさに映し込むために、より被写体に近づく必要があり、トンボの場合は近づく前に逃げられてしまう可能性が高くなってくる。時間に余裕のない時、足場に難があって近づけない場合には、100ミリクラスでは役に立たない事が多くなってくる。ただ、被写体に近づきやすい場合、被写体が狭い範囲で飛翔している場合など、200ミリクラスでは手に余ってしまうこともあり、そんな時に100ミリクラスは間違いなく活躍する。
時間に余裕があり、被写体にも十分寄れるとなると、開放F値が明るい100ミリクラスでは、より早いシャッタースピードを選択できることになり、軽量効果もあって、200ミリクラスで起きやすい手ぶれの危険を大幅に回避できる。また被写体にぐっと近づく撮影になるため、自然との一体感を味わえるのも100ミリクラスの醍醐味である。最近シグマから出ている中間的な150ミリマクロがあるが、適度なワーキングディスタンスと明るさ、軽さを兼ね備えた良いレンズだと思われる。
100ミリクラスのマクロレンズでは、自分が自然と一体化した感覚に浸りながら写すことが出来る。
タムロン90ミリマクロ使用
50ミリクラスのマクロレンズ
50ミリクラスのレンズは、当然ながら相当寄らないと満足な大きさには写せないので、逃げ足の速いトンボ相手や足場が悪くて近づけない環境では殆ど役に立たないが、人間の視野に相当する画角の広さを活かして動きのある飛翔物体の撮影に威力を発揮する。より広角な30ミリクラスのマクロレンズも出てきているが、これらはノーファインダーでも、そうでなくても、そのコンパクトさを活かして動きのある被写体に積極的に挑める楽しさがある。
望遠レンズ
300ミリ、400ミリクラスには、適度な大きさ重さで、最短距離も短く、F値もそこそこ明るく、値段も手頃な優秀なレンズが各社から出ている。最近は望遠ズームが圧倒的に多いが、画質を追求するとなると、単焦点レンズを選択した方が良いだろう。
特に、安価な望遠ズームでは、望遠端付近の描写力にまだまだ難点があり、望遠域を目的で購入すると画質に対して不満を抱く結果になってしまう。これらの単焦点望遠レンズは、特に大体2メートルから10メートル位の中距離での撮影に効果を発揮する。
どうしても近づけない被写体を満足な大きさに写すには、このクラスのレンズは欠かせない。
筆者が使っているDA300ミリは、最短1.4メートルで1/4倍まで、シグマの400ミリテレマクロは、F5.6ながら、最短1.6メートルで1/3倍まで寄ることが出来る。10メートル以上の、より遠距離の被写体となると、このクラスでは表現しきれない部分が出てくるので、500ミリ以上の望遠レンズが必要となるが、トンボでは長距離砲の出番は殆ど考えにくい。勿論、あれば役立つこともあるが、トンボは幸い近づきやすい被写体なので、レンズを伸ばさずとも、近づくことで焦点距離をカバーできるのである。
望遠レンズでは、近づけない被写体をある程度の大きさに切り取ることが出来る。
DA300ミリ使用。
足場が悪くて近づけない被写体を400mmテレマクロで捉える。
ズームレンズ
ズームレンズは、今や標準レンズの代わりとして活躍する汎用的なレンズで、万能であるが故に、個々の性能では単焦点レンズに一歩譲る面がどうしても出てしまう。従って、精細な絵を得たい場合は、単焦点のマクロ専用レンズを使った方が、満足のいく結果を得やすいと言うことになる。勿論、各社から出ている70~300mmのマクロ付きズームをフィールド用万能レンズとして使うのもアリだが、実際の操作面で難があったり、どうしても専用レンズには描写能力で劣ってしまう点があるだろう。また、望遠側の開放が5.6とかになってしまうのは、ファインダーが見づらくなるなどの点で、少々つらい。
一方、17ー70ミリクラスの標準ズームレンズは、面白い使い道がたくさんありそうだ。1/2.3倍まで寄れるシグマのDC17-70mmをはじめ、このクラスには、広角から中望遠までカバーすることで、環境の写し込みから、背景をぼかしたマクロまでこなせる優秀なレンズが多い。レンズも比較的コンパクトなので、写しながらのズーミングが楽で、十分実用的だ。
また、これらのレンズは、ヘリコイドの回転幅が狭いことが多く、よりシビアなピントの追い込みには少々つらいが、それゆえに、物理的にスピーディに被写体にピントを合わせやすいという利点がある。それを活かして、飛翔物体をすばやく画面に捉えてモノにする方法も考えられる。
また、最近は、大口径で明るいながら、重さも適度で最短距離も短い望遠ズームが出ている。特に、タムロン、シグマの70-200ミリはその最たるものと言えよう。タムロンのレンズは、最短が全域で95センチと、シグマより僅かに近くまで寄れ、1/3倍までのマクロが可能となっている。等倍マクロは出来ないが、ポートレート主体の撮影だったら、かなり重宝する焦点距離だし、開放2.8から画質が良いようである。値段も安いし、筆者も機会があったら揃えておきたいレンズの一つだ。ただ、広角側でも最短距離は同じなので、短い焦点距離で寄って撮影は出来ない。出来れば、安価なズームレンズと同様、1/2倍まで寄れると間違いなく買いなのだが・・・。
17-70ミリ 70ミリ側で撮影。ヘリコイドの回転角が小さいため、素早くピントを合わせることが出来る。
但し、回転角が小さい分、精密なピントの追い込みは難しい。
17-70ミリ 17ミリ側で撮影。背景が写し込める。勿論、中間的な焦点距離での撮影も面白い。
90ミリマクロ使用。
テレコンバーター
筆者も手持ちのレンズ資産を最大限に活かそうと、テレコンバーターをいくつか購入した。
1.5倍では、200ミリが300ミリに、2倍では、200ミリが400ミリになる。最短距離は変わらない(フロントコンバーターでは変化する)ので、最大倍率もその分大きくなり、理屈上では非常に便利である。しかし、結論から言うと、テレコンバーターの使用は、トンボ撮影にはあまりおすすめできない。
トンボの場合、マクロとは言っても、顕微鏡のように詳細を写すことはあまりなく、適度な大きさに全身カットをおさめるというのが常道であろう。したがって、その大きさでも精密さを要求する場合、テレコンバーターを使用することによって、画質の低下が露呈しやすいことになる。テレコンバーターの原理は、マスターレンズの描写をそのまま拡大するものなので、マスターレンズ以上の描写性能は発揮されない。むしろ、光学系が増えることによって像の純度は落ちるし、ケンコーなどの安価なテレコンでは、フレアなどが起きやすくなるし、ましてや、倍率の分F値も暗くなるので、シャッタースピードが下がり、ブレも起きやすくなる。テレコンバーターがその威力を発揮するとしたら、マスターレンズだけでは、十分な大きさでファインダーに入れられないためにピントが正確に合わせられない場合、テレコンで像を拡大して、ピント合わせの確率を上げる・・・テレコン使用によってよりピントの正確な像を得たい・・・という要求にその使用効果が合致した場合のみである。
ただ、前述のように、その分ファインダーも暗くなるので、必ずしもテレコン使用によってピント合わせが楽になるとは言い難い。
筆者は実際にいくつかのテレコンを用いてテストした結果、テレコン使用は、中途半端な拡大率のトンボ撮影では概して役に立たないという結論に至ったわけである。テレコン使用が成功したかどうかは、結果として表れる像を見ての判断ということになり、人間の目の実務的?解像度(視覚)との駆け引きにゆだねられるわけで、超接写であれば、テレコンにより像がより大きくファインダーに現れ、より精密な接写が得られるということになるが、ポートレート主体の撮影では、その使用は殆ど役に立たず、逆にテレコン使用による画質劣化の方へ目がいきがちになる。そして、今や、テレコンを使わずとも、補間拡大、トリミングなどで自由に画像の大小をコントロールできる。また、近寄れるのだったら、テレコンを使わずにあと一歩寄れば済むことなのである。
DA300ミリ単体で写したもの。これでも大きさ的には悪くはないが。
DA300ミリにテレプラスをつけて撮影した例。近寄れない被写体を大きく写すことが出来た。
*検証*
タムロン70-200は、A★マクロ200の代わりが務まるか?
我が最愛のレンズA★マクロ200。1992年に購入後、長年愛用してきた。扱いがぞんざいだったため、途中絞り羽根が故障、カビ跡もあり、デジタルに移行してから、次第にヘリコイドの引っかかりも気になり、レンズ情報も伝わりづらくなるなど、若干老朽化してきた。そこに来て、2010年には一番避けるべき水没という事態に陥り、修理不能と思われたが、奇跡的に修理されて復活!・・・しかしその一月後には転倒して地面に思い切りたたきつけ、マウント部分に少しガタツキがでてしまった。接点情報が若干伝わりづらくなったものの、普通に使用可能なので、シーズンオフまではごまかしごまかし使って、オフに治せるかどうか?工房に問い合わせてみるつもりで居る。
そんな過酷な目に合わせてきた200ミリだが、その写りは他の何者でも代用できない。
昨年タムロン90ミリを購入し、透明感と解像感に満足し、今シーズンはかなり使用率が上がるか?と思われたが、イトトンボ等で少し活躍したものの、200ミリのバックボケがどうしても捨てきれず、結局200ミリに戻ってきてしまった。
ところで、昨年あたりから密かに注目していたレンズがあった。タムロンの70-200だ。
0.95メートルまで寄れ、倍率1:3.1。写りにも定評があるのに低価格!と魅力たっぷりだ。そして2010年7月、ついに思い切ってオークションで落とした(50k位)。
しかし、買ってすぐに実戦投入して写した画像を見て愕然!
ものすごいフレアで使い物にならないのだ!
あわよくば200ミリマクロの代わりに第一線で活躍して貰おうと思っていただけに、フレアショックは大きかった。。。
すぐさま、作例をつけてタムロンに調整に出した。
一週間ほどで戻ってきて、試したところ、フレアはだいぶ改善されたようだった。
しかし、1.4キロの予想以上の重さ、かさばる大きさ。。。持ち運びも大変だし、撮影も楽ではない。
そんなこんなで9月以降は殆ど稼働せずになってしまったが、シーズンも押し詰まってきて、少しゆとりが出はじめたので、久しぶりに実戦に投入してみた。
まずは最も問題のある望遠端200ミリ絞り開放での画像。(以下すべて等倍切り出し無加工)
200mm f2.8 1/1250
あいにく風があって揺れていてピントを合わせづらかったが、何とか踏ん張った。
f2.8での撮影なので、ピントも浅いがどうにか山の一部はつかんでいる。
肝心の写りはちょっとモヤッとしている。これは仕様内とのことで残念。
150mm f2.8 1/2000
130mm f2.8 1/1250
この辺だと写りは安定してフレア感も少なくなる。
A★マクロ200ミリ f4.0 1/2000
タムロンの開放2.8と比べるのは少々かわいそうだが、200mmマクロ絞り開放での撮影。安定感、解像感ともワンランク上の描写だ。このレンズの偉大さを改めて思い知ることとなる。
気を取り直して、更に検証。
150mm f3.5 1/1600
150mm f4.0 1/2000
110mm f3.5 1/1600
以前から確認済みだが、150ミリ付近で一段絞ると描写はかなり安定する。200マクロよりも若干成功立が落ちるのは、レンズの大きさ重さが関係していると思われる。
こんな具合で、一段絞って150ミリ付近で使えば、そこそこ使えるレンズと言えそうだが・・・・。
160mm f2.8 1/2500
160mm f3.5 1/1600
上記二枚は比較的写りの安定する160ミリでの撮影。一般に写真の不鮮明さは、実はピントよりもブレによるところが大きく、1/2500はブレを最小限に抑えうるはずで、今年の経験から、絞り込むよりも絞りは開けたままでシャッタースピードを上げた方がシャープな画像が撮れる確率が高いことを実感しているのだが・・・酷い写りだ。。。
これは座り込んでじっくり何枚も写したのだが・・・。
光線状態を相当選ぶレンズなのかもしれない。
こういう事があると、安心して200ミリの後釜を任せるわけにはいかないのだ。