ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

ゆっくり動くということ

2025-01-10 | 腹腔鏡
手術が上手い人は、手捌きが早いと思われているのではないでしょうか?もちろん、無駄な動きをなくし、手術時間を短縮することは重要です。しかし、私は「ゆっくり動く」ことにも大きなメリットがあると考えています。今回は、「ゆっくり動く」ことによって得られる3つのメリットについてお話します。

メリット1:助手との協調性
あまり早く動くと、助手が慌ててしまうことがあります。慣れていない助手であれば、なおさらです。以前は助手を急かしてしまったこともありました。術者と助手が協調しない手術では、スムーズな手術進行は難しく、合併症のリスクも高まります。良い手術とは、術者と助手のリズムがシンクロしている手術です。助手のリズムに合わせて、ゆっくり動ける術者こそ、優秀な術者と言えるでしょう。

メリット2:立体感の把握
私たちは、腹腔鏡の二次元の画像を見ながら、臓器の三次元の構造を把握しなければなりません。これは容易なことではありません。しかし、ゆっくりとした動きを見ることで、三次元を感じやすくなるというメリットがあります。

メリット3:優しい手術操作
早く動こうとすると、鉗子の動きが直線的になりがちです。これは、手先だけで手術操作をしている状態です。患者さんの体に合わせて、曲線的な鉗子運動をすることで、より優しい手術ができます。そのためには、術者は手や腕だけではなく、自分の体のすべての関節を使って動いていく必要があります。そうすることで、体全体で立体感を感じながら、繊細な手術操作を行うことができるようになります。

「ゆっくり動く」ことは、一見すると非効率に思えるかもしれません。しかし、助手との協調性、立体感の把握、優しい手術操作など、多くのメリットをもたらします。

『ゆっくり動いているのに何故か早く終わる手術』これが手術の理想だと思います。
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