ラパロスコピストの夢

大阪梅田で子宮内膜症と闘うラパロスコピストのblog
子宮内膜症、子宮筋腫に対する腹腔鏡下手術はどこまで進歩できるか?

袋に入れる!TLHへの私のこだわり4

2025-01-17 | 腹腔鏡
TLH(腹腔鏡下子宮全摘術)において、子宮を取り出すのは主に腟からです。全身麻酔をかけている状態では腟はある程度伸びますので、子宮筋腫などの大きな腫瘍を摘出する時でも経腟的に回収できることが多いです。腟が狭い場合や子宮筋腫が特別に大きい場合は、お腹の傷を若干広げて(1.5~2cm程度に)電動モルセレーターと呼ばれる器具を用いて腫瘍を細切して取り出すことがあります。

しかし、術前診断で良性と思われていた腫瘍が、実際には悪性腫瘍(肉腫など)であるケースが稀にあります。その確率は0.1%程度と低いものの、腹腔内で腫瘍をそのまま細切すると、悪性腫瘍だった場合に、腹腔内に悪性細胞を播種してしまうリスクがあります。これは、手術部位以外にがん細胞が散らばってしまうことで、再発や転移のリスクを高める可能性があります。

そこで、当院では、経腟的であっても経腹的であっても、ほぼ全例でin-bag morcellationという方法を採用しています。これは、腹腔内で腫瘍を袋に入れた状態で細切する方法です。
1.5kgの巨大子宮筋腫のIn-bag morcellation(この症例は経腟的に細切除去)

こうすることで、万が一、悪性腫瘍だった場合でも、悪性細胞が腹腔内に散らばるのを防ぎ、がんの播種リスクを最小限に抑えることができます。このin-bag morcellationは、手術時間を少し延長してしまう可能性がありますが、患者さんの安全を第一に考えた結果、当院ではこの方法を標準的に採用しています。

他の施設では、袋に入れずに腹腔内で直接細切しているところが多いようです。また、電動モルセレーターを使わず、お腹の傷を3cm程度に切開して、直接細切除去している施設もあります。しかし、お腹の傷を大きくすると、術後の痛みが強くなったり、傷跡が目立ちやすくなったりする可能性があります。

私は、患者さんの術後のQOLを向上させるためには、創部の痛みや傷跡を最小限に抑えることが重要だと考えています。そのため、in-bag morcellationを採用することで、お腹の傷を小さくし、患者さんの負担を軽減することにこだわっています。

もう10年以上、この方法にこだわり続けています。In-bag morcellationのW杯が開催されたら、メダルが取れるかもしれない😆 私の気持ちとしても、この方法が安心で気分もスッキリなんだよな。性分なのかな?😊
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