番外
最後は、MRIだ。再検査で後日受けたこの審査は、当日朝の絶食以外には特に過酷な準備はない。
当日、病院に向かい、検査服に着替えて早々に検査室前に行く。
今日は、エスコート嬢もいなく、予定時間を過ぎてもなかなか呼んでもらえず検査官から、どうぞと言われた時は、刑場に赴く罪人のような気持ちだ。
検査室は案外広く、奥の方に検査器がドーンと構えている。イラストにあるように、狭い細長い半筒状のベッドに、巨大なトンネルがついている。
ここにあおむけに寝てください。上がったとたんに足と胴体をベルトで締められ身動きを封じられた。
閉所恐怖症やパニック障害などの人は、ここでまず耐えられないだろう。
そしてヘッドギヤのようなもので頭も固定され耳にはヘッドフォンが装着される。このヘッドフォンは単なる耳栓で音は聞こえない。
手に小さなスイッチを握らされて、「何かあったら押してください。」
ええっ?「何かあるのですか?」
「別に寝ているだけですが、緊急事態やどうしても我慢できないことがあればどうぞ押してください。」
何が始まるのだろう。
検査官が去った後、足元から巨大トンネルが自分の眼の上まで動いてきた。
(実際は寝ている台が下がって行ったのだ。)
身動きが取れない上に、視野が完全に塞がれ密閉状態だ。
それだけでも耐えられないのに、検査が始まると、ビーッ!ビーッ!ガン、ガン!と
強烈な意味不明の騒音が始まる。戦後急ピッチで進んだ地下鉄工事の現場でもこんな騒音はなかったかと思われるような強烈な音。
一層不安感が襲う。
スイッチを押そうかと何度も思ったが、理由が思いつかない。「うるさいので。」「嫌なので。」とか言えないし・・・。
永遠にこのような閉所騒音地獄が続くのだろうかと、心臓の鼓動がこめかみに響くかのような思いの後、
検査が終わった時は、あたかも銃殺刑で、拳銃の不発によりなぜか一旦助かった罪人のような姿で、検査室を出て来た。
そこで、改善提案。
まずは、ヘッドフォンから音声を出し、患者と双方向で話しできるようにしてくれ。
エスコート嬢が、なまめかしい声で、「検査始まりまーす。なんも怖くないですよ。初めてなんですか。誰でも初めては緊張しますけど。目をつむって体を任せていればすぐ終わります。」
「私も初めての時は緊張して体が硬くなってました。彼氏が優しい人で、全然痛くなかったのよ。」
「あれ?それ、違う話しちゃった。」
「もうちょっと詳しく聞きたいけど、検査はどのくらいかかります?」「30分くらいかな?」
こんな風に話出来れば随分助かるのに。
次に、顔にふさがるトンネルの上(眼前)に、モニターを設置して映像を流すべきだ。
エスコート嬢から「画面は何を希望しますか。①最新映画②演芸③サザンのコンサート④AV」
「?AVって」「ハイ、今日は最新の、『団地妻の秘密(巨乳の新妻)』をご用意をしています。」
「それそれ、④をお願いします。」
「良いですよ。」
検査が始まるが、画面にくぎ付けで騒音も気にならない。
団地に一人、暇を持て余す新妻に、見知らぬ男。待ちかねたような新妻がすぐに寝室に誘う。服の上からもそれと分かる巨乳。濃厚なディープキスを繰り返す二人、口を離すとどちらとも区別がつかない唾液が糸を引く。お互い下着の上から股間をまさぐりあう。男が新妻のブラウスのボタンに手をかける。その手を振りほどいて新妻は、自らの手で服を脱ぎ、背中に手をまわしブラジャーのホックを外す。待ちきれない男は、後ろから手をまわし胸をわしづかみに・・・。いよいよ巨乳の実態が見えそう・・・。
「ハイっ!検査終了です。」「ええっ!もうちょっと見たい。」
「最近そういう人多いんですよね。これ以上見ていると体に良くないですよ。」
「この前も若い人が、検査終了したらパンツ汚して大変なことに・・・。」
「そんなこと聞いてません。検査は30分って言ってたじゃないですか。」
「それは検査室に入ってからの時間です。」
「ええっ、あの後どうなるの?」
「見たければまた検査に来てね。」
「来ます来ます・・・。」
「どうでも良いですけど、検査服の前、ちゃんとボタンしてください。元気な股間が見えてますよ。」
そんなあほな!!