㉘ 指示と行為
企業においては、指示と行為は同じでなければならない。正常で優良な企業であれば、「高い目標にチャレンジする事」「職場環境整備」「抜擢・降格・信賞必罰人事」いずれも素晴らしい「指示」である。それがそのまま「行為」であれば問題はない。
ところが、「目標達成の為に手段を選ばない。」「行き過ぎた環境整備の為に全体最適を見失う。」「納得感のない情実人事になってしまう。」など、指示と行為に整合性がなくなると話は別である。
いずれも、企業モラルの低下、法令違反、モチベーションの低下につながる。結果的に企業の業績どころか存続に関わる。ビッグモーター事案はこのような正しく立派な「指示」であってもいつの間にかとんでもない「行為」になり下がる事例である。しかも問題は経営トップがよく知らないことである。「天地神明に誓って」知らないと言う説明は嘘ではないだろう。知っていて黙認するほどの覚悟はないだろう。本当の問題は、現場のマイナス情報がトップに伝わっていないことである。これはどんな企業でもあることで、なんでもかんでもトップに言える良い会社などありえない。トップは一定の権威を保持し畏怖の対象でもある。「なんでも言える」はずがない。従って、役員や幹部が中間的立場で現場の声を上げるのである。これが正常な組織であるのだが、幹部社員も平社員も同等に扱われている企業も多い。当該企業は、社長と息子である副社長以外は、ひら社員扱いであったのだろう。
ならば社員は辞めれば良いと、世間は言う。話は簡単ではない。職場に毎日いると世間の常識が分からなくなる。「どの企業もやっている。」「自分だけが悪い。自分だけが無能なのか。」「辞めても仕事はない。」などと思う。場合によっては洗脳状態に陥ることもあろう。
しかし、当該企業が業界トップまで駆け上がった事は事実なのだ。好業績優良企業だったのだ。でも、ドーピングにより世界記録を出したようなものだ。フェアではない。ただし、見つかるまで「分からなかった。」のである。
特に未上場企業はチェックが甘い。厳しいガバナンス規制に対応できないがゆえに上場していない可能性もある。株式を公開するかどうかは企業の自由だが、100人を超える大企業は同等のガバナンスを求めるべきである。また、内部告発制度も国家レベルで告発できるように窓口を広範囲に設置すべきである。SNSが盛んになっている昨今、フェイクニュースを規制する一方、真実の訴えを拾う工夫も早急に実施してもらいたい。いつも被害者は社員と消費者である。