78回転のレコード盤◎ ~社会人13年目のラストチャンス~

昨日の私よりも今日の私がちょっとだけ優しい人間であればいいな

◎『けものフレンズ2』6話考察……サーバルが全ての記憶を取り戻すことを信じて

2019-02-19 18:00:00 | ほぼ週刊サンマイ新聞

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 TVアニメ『けものフレンズ2』は、5話のラストで“かばん”が登場、そして2月18日に放送された6話では、かばんの口からビーストセルリウムなどの新情報が次々と明かされ、話は大きく動いた。

 一番の衝撃は、鍋料理を食べている最中に交わされた以下の会話である。


キュルル「もしセルリアンに食べられちゃったら、どうなっちゃうのかなって」

博士「フレンズの場合、食べられると動物の姿に戻って、それまでの記憶は無くなっちゃうのです」

助手「そしてその後、再びフレンズになったとしても、前の記憶が戻ることは無いのです」


 あえてこの会話を挿入し、その直後にかばんの悲しそうな顔。これは普通に考えて、サーバルがセルリアンに食べられて動物に戻り、記憶を失った状態で再フレンズ化したことを示唆していると言って良いだろう。
 現にサーバルは、1期でかばんと旅をしていた頃のことを「上手く思い出せない」(1話)、実際にかばんとの再会を果たしても「あなたは……」(6話)と、名前すら思い出せずにいた。加えて博士と助手(1期7話で登場)、前々回ではアリツカゲラ(同10話)のことも忘れている。

 この記憶喪失については、1期と2期のサーバルが別個体だという説もあるが、当方はあえて同一個体と推測して考察を進める。アプリ版(野中藍)とアニメ版(尾崎由香)であればサーバルの声優が異なるので別個体と考えて良いのかもしれない(もっと言うと、アニメ版でもミライと共に旅をしたサーバルのほうは野中が演じている)が、2期サーバルの場合は1期と同じく尾崎が演じているからである。

 同一個体だとすれば、やはり前述のとおり、サーバルが動物に戻って再フレンズ化した説が、6話で信憑性を増したことになる。そしておそらく、その悲劇は1期と2期の間、アニメ化されていない空白の期間において起きたのだと思われる。

 ただ、完全なバッドエンドというわけでもなく、サーバルの記憶は断片的には残っている。「珍しいフレンズと旅をしていた」(1話)、「食べないでー!」(1話)、燃える紙飛行機に対する既視感のような反応(5話)、無意識とはいえ1期にも出てきた砂時計に興味を示す(6話)などである。
 終盤のカラカルの一言でかばんは安堵し、涙混じりに「あの子……よろしくね」と、前向きな別れとなったことは良い締め方だったと思う。
 まだかばんのことは思い出せていないが、いずれサーバルの記憶が全て戻るかもしれない。そのきっかけや方法も含め、7話以降の動向に注目したい。

 そしてもう一人、記憶を失ったキャラがいることを忘れてはならない。キュルルである。この人もまた、セルリアンに食べられた可能性があるのではないか。まだまだ批判の多い2期だが、回を重ねる毎に面白くなってきていることは確かである。

(#32:1144字)

 

<関連記事:◎『けものフレンズ2』かばん登場のインパクトですっかり忘れられた5話の伏線


◎『けものフレンズ2』かばん登場のインパクトですっかり忘れられた5話の伏線

2019-02-16 10:39:35 | ほぼ週刊サンマイ新聞

<『けものフレンズ2』を見る前に注目してほしい4つのポイント(アニメイトタイムズ)>

 

 毎週のようにネットで批判の絶えないTVアニメ『けものフレンズ』期。別件とはいえ主演声優までもが炎上し、バズった2年前とは真逆の意味で話題だけは尽きないコンテンツに成り果ててしまった。

 そんな中、2月11日に放送された5話のラストで、1期のメインキャラだったヒトのフレンズ“かばん”が登場。降板の憂き目に遭ったたつき前監督の考案したキャラクターを使用するという暴挙に出たことで、もはや火にケロシンを注いだ状態に。当方としては、かばんに関しては謎が多すぎるので、現時点では言及しないでおく。

 それよりも、そのインパクトの影に隠れてしまったが、ゴリラの話していた「ヒトは動物を思いのままに操ろうとした」という噂のほうが重要な伏線なのではないか。
 結局その噂についてはキュルルが無理矢理「ヒトは紙相撲で動物を操っていた」という結論にしてワニとヒョウの争いを食い止めたが、無論そういうことではないだろう。

 ゴリラの発言を受けて当方が真っ先に思い出したのは2話と3話である。

 まず2話では、タイヤのブランコに乗ったジャイアントパンダが「なんだろう、このまるいの? なんだかしっくり来る」と、まるで過去(まだ動物だった頃)に同じことをしていた(=ヒトに飼育されていた?)と匂わせる発言をしている。
 3話はもっと分かりやすく、イルカとアシカがかつてショーをしていた頃のことをかなり正確に思い出している。

 この2話と3話に登場するフレンズに共通するのは、野生としてではなくヒトに操られていた時の生態を模倣していることである。かつてパンダは動物園、イルカアシカは水族館にそれぞれ生息していたのではないか。特に後者はその残骸が海底に残されている。
 この仮説が本当だとすれば、2期の世界のジャパリパークにおいて、ヒトは動物を思いのままに操ろうとしていた(というか操っていた)という噂も確証に変わる
 1期ではパークにおけるヒトの存在について数多の謎を残したまま終了してしまったが(正確には謎が明かされる前に大人の事情で強制終了したが)、2期ではヒトについて深く掘り下げ、核心に迫ろうとしているし、操るという表現からもが垣間見える。

 もしかしたら、6話以降の展開によっては化けるかもしれない。当方はとてもワクワクしている。それまでに燃料を投下しすぎて再起不能レベルにまでなってしまったのはとても勿体無い。おそらく5話までに多くのファンが視聴を脱落しているが、何とか盛り返して欲しいところである。

(#31:1026字)

 

<関連記事:◎『けものフレンズ2』6話考察……サーバルが全ての記憶を取り戻すことを信じて


◎けもフレ声優・尾崎由香の炎上騒動……今こそ声優はアイドルとの違いを見せ付けるべき

2019-02-16 04:11:22 | ほぼ週刊サンマイ新聞

 尾崎由香1st写真集 ぴ(ゅ)あ

 

 現在放送中のTVアニメ『けものフレンズ2』に主人公サーバル役で出演中の若手声優・尾崎由香。2月12日に放送されたTBSのバラエティー番組『有田哲平の夢なら醒めないで』に“アイドル声優”としてゲスト出演し、発言の一部がネットで炎上、尾崎本人がTwitterで謝罪する事態にまで発展している。

 先輩への失礼な態度や「アニメは全く観ない」発言、喉に影響の出そうな激辛の食べ物を好む、バラエティー番組でイモトアヤコのように活躍したいと思っているなど、声優に対するプロ意識の欠如が何度も見られ、とても擁護するのは難しい惨状だったが、当方が一番気になった発言は以下である。

 

尾崎「今の声優って、声のアフレコだけじゃなくて、歌ったり踊ったりとか、結構キャラクターに近い人が選ばれる可能性が高いんですよね。だから、歌って踊れる声優が今、一般的?」

 

 言うほど尾崎はそこまで歌ったり踊ったりしていないとは思うが、昨年ソロデビューを果たし、どうぶつビスケッツという人気ユニットでも活動していることは紛れもない事実。しかし、「歌って踊れる声優が一般的」という、あたかも声優がアイドルと同義であるかのような発言には疑問を覚える。

  当方はこのブログでも過去に「声優とアイドルは違う」「声優はアイドルではない」と力説してきた。特にここ数年は女性声優のソロ歌手デビューが驚くほど相次ぎ、それだけでも「声優がアイドル化している」と思う人が多いようなのだが、その意見は彼女たちのライブをご覧になられてから発言していただきたい。当方は三森すずこ、水瀬いのり、東山奈央、大橋彩香など、何人もの女性声優の単独ライブを生で観てきたが、そのいずれもアイドルではなく“歌手”として、歌と真剣に向き合ったパフォーマンスを魅せてくれた。

(参考:◎東山奈央1stライブ感想……感謝を言葉のみならず行動で示せる人間になりたい

 

 とはいえ、ごく稀に例外がある。小倉唯が歌って踊る様はアイドルのテンプレそのものだし、アイドルアニメから誕生した声優ユニット(Aqours、デレマスなど)はどうしてもアイドルのように見えてしまう。前述の水瀬さえも自らを“アイドル声優”と呼称したことがあるという。声優自身が歌って踊る行為のみをアイドルだと認識してもらっては困る。歌と真剣に向き合う声優をAKBや地下アイドルなどと一緒にしないでいただきたい。

 

 尾崎はどうビスでアイドルのようなパフォーマンスを見せるのでややこしいのだが、ソロ歌手としてはアイドルの要素は皆無である。今回の騒動で下げてしまったイメージを取り戻すには、ソロ活動を真剣に取り組み、いずれ単独ライブを実現、成功させるしかないだろう。声優はアイドルとは全く違うということを、三森や水瀬だけではなく、尾崎自身も証明して見せてほしい。せっかく楽曲は良曲に恵まれている(特に2nd)のだから、あとは自身がどのようにして歌い上げるかだ。

 2019年は“ソロ歌手・尾崎由香”としての真価が問われる年になるだろう。

(#30:1196字)


◎劇場版『ラブライブ!サンシャイン!!』感想……ルビィの成長とSaint Snowの本気を見た

2019-01-08 22:19:50 | ほぼ週刊サンマイ新聞

※壮大なネタバレがあります。

『ラブライブ!サンシャイン!! The School Idol Movie ~Over the Rainbow~』を劇場で観た。2回も観てしまった。

 感想については色々と言いたいことがあるが、全体的には素直に感動したので細かい部分の批判や突っ込みはやめておく。以下の2点に絞ろう。

(1)黒澤ルビィの輝かしい成長
(2)Saint Snowのライブシーン

 まず(1)だが、TVシリーズを1期から追いかけてきた視聴者の多くは、ルビィの成長に驚かされたことだろう。1期1話では他者との会話すらままならない人見知りだったのに、Aqoursの活動を通して少しずつ話せるようになり、2期8・9話の函館回での成長にも感慨深いものがあったが、劇場版ではそれを更に上回っていた。イタリアでのライブ会場を決め、沼津のライブでは衣装を制作。そして何よりも、姉・鹿角聖良の卒業により一人で新たな仲間を探すこととなったSaint Snow理亞を気遣う発言の数々には、他人を思いやる聖人の心を感じた。

 それにも関連するが、(2)は本当にやばい。ラブライブ予選敗退を悲しむ理亞の為に実現された『ラブライブ決勝・延長戦』だが、Saint Snowの『Believe again』のパフォーマンスは本当に格好良すぎて痺れた。楽曲はもちろん、鹿角姉妹が初めて3DCGでモデリングされたことで、2D作画だった1期8話の『SELF CONTROL!!』を遥かに上回るステージ演出も見応えがあった。問題はその弊害として、直後に披露されたAqoursの『Brightest Melody』が何の印象も残らなかったことである。2回視聴したにも関わらずだ。

 これが何を意味するのか。そもそもSaint Snowはラブライブの地区予選で理亞がコケてさえいなければ予選を通過し、決勝戦でAqoursのライバルと成り得ていたかもしれなかった。そのifルートが今回の劇場版での仮想対決だとすれば、Saint Snowの優勝は間違いなかったと思えるほど、劇場版での両者のパフォーマンスには雲泥の差があった。それでもAqoursがラブライブで優勝した事実は変わらないが。

 では今後はどうか。Aqoursは6人で再スタートを切った。一方Saint Snowは姉の卒業で活動終了したものの、理亞がメンバーを集め新たなユニットを結成することが本編で示唆されている。
 その両者が今後のラブライブでもし激突したらどうなるか……当方はそれを見てみたい。Aqoursの物語なのにSaint Snowに尺を割きすぎだと思った人は多いだろうが、今後の展開を期待させてくれるという意味では、その通過点としてこの劇場版は完璧なストーリーだと当方は思っている。

 あとは続編が制作されるかどうかだが、ED後のエピローグを観る限り、これで完結になってしまうのかもしれない。それはとても惜しいことなので制作陣には今一度ご検討いただきたい。

(#29:1199字)


◎Paravi版『中学聖日記』で悲報……最終話の重要なシーンが改変されてしまう

2019-01-08 21:04:00 | ほぼ週刊サンマイ新聞

※壮大なネタバレがあります。

(関連記事:◎小野と芋子(11)ドラマ『中学聖日記』5話まで(中学生編)の感想を今更語る

 主にTBSとテレビ東京の番組をネット配信する『Paravi』初月無料なので試しに加入し、連続ドラマ『中学聖日記』を今更ながら全話視聴した。

 誤解しないでいただきたいのは、当方はこの作品、間違いなく感動した。高校生編で多少の中だるみはあったものの、最終話まで観ればそれも無駄ではなかったと思っている。

 教師と生徒、それも未成年という禁断の恋を、地上波で全国放送、しかも22時という子供も観ている時間枠でPTAの魔の手からどう逃れるのか、その結末は興味深かった。そして迎えた最終話、末永聖先生は誓約書にサインをするというクレーム回避の決断を下した。

 誓約書というのは、黒岩昌の母・愛子の代理人の弁護士が聖に渡したもので、『聖が今後一切晶と連絡・接触しない』と誓う為の書面だった。日付と署名を記入すれば、愛子が警察や教育委員会への訴えを取り下げるという、聖の決断が迫られる重要なアイテムである。サインしたということは、昌とは二度と会えないことを意味する。理由は「黒岩君にとって大事なのは未来」だから。昌はその後の観覧車のシーンで「聖ちゃんに幸せになって欲しいからもう会わない」と応える。

 そこで終わりにしても良かったくらい感動したが、本当のラストシーンは5年後。
 バンコクで日本語学校の講師をしている聖のもとに、23歳になった昌が現れ、誓約書を聖に返し、夕陽をバックに笑顔で見つめ合う2人をラストカットに物語は幕を閉じる。
 このラストシーンだが、調べていくうちに本当の意味が隠されていることを知り、衝撃を受けた。

 

 

 お気づきだろうか。誓約書に印刷された「平成」と「年」の間に、聖は「2018」と書いた。西暦ではなく「平成」の2018年であれば、遥か遠い未来に効力を持つことになるので、2018年だろうが5年後の2023年だろうが、余裕で二人は会うことが出来たというギミックだったのだ。

 もちろん聖は天然で間違えた可能性が高いが、結果的にこの伏線が5年後に二人を再び結びつける重要なファクターになっていたことに鳥肌が立ち、カタルシスを得られた。

 しかし、問題はここからだ。再びParaviにアクセスし本編を観返すと、問題の誓約書のシーンに「平成」は印刷されておらず、ただの「2018年」になっていたのだ。どうやらネット配信版では修正されたようなのだ。元々当方は細かいことを気にしない性格ではあるが、ギミックそのものが改変されているのなら当然気付くはずもない。

 なぜ余計な改変をしたのか理解に苦しむ。ちなみに通常版もディレクターズカット版も同様の改変が見られた。それなら2パターンを配信する意味も無いではないか。せっかくParavi自体は魅力的なサービスなのだから、せめて重要なギミックだけは可能な限りTV放映版と同じにしていただきたい。多くの視聴者は本編を観た後にSNSで感想や考察を共有し合うまでがセットなのだから。

(#28:1195字)


◎東山奈央1stライブ感想……感謝を言葉のみならず行動で示せる人間になりたい

2018-02-05 11:18:52 | ほぼ週刊サンマイ新聞

 2018年2月3日。女性声優・東山奈央(とうやま なお)としては初の単独ライブが日本武道館で開催され、その一部始終を見届けた直後、当方は2つの感情を抱いた。一つは残雪がまだ消えやらぬ九段下で少し早い春の陽気を錯覚するかのような心の温もり。もう一つは自分の愚かさに嘆く負の感情である。

 バラードにおける芸術的な照明演出や、物販のサイリウム(ペンライト)遠隔操作で自動的に色が切り替わる最新鋭の技術など、書きたいことは山ほどあるのだが、断腸の思いで2点に絞り特筆する。

(1)キレのあるダンス
(2)『Rainbow』を歌う前のMCで語った言葉

 まず(1)だが、過去に声優でここまでキレのあるダンスを魅せた人は記憶に無い。一般的なソロ歌手・ソロ声優のライブは歌に集中せざるを得ないことに加えマイクで片手を塞がれる為、踊るほうにまで意識を回せないのが現状だが、東山は『StarLight』などのダンサンブルな3曲において、イントロや間奏など、歌わないパートではマイクを持ちながらも6人のバックダンサーと全く同じ動きで超難関のダンスをこなしていたのだ。デビュー当時からアニソンライブのDVDを繰り返し視聴して振り付けを完コピするほどダンスが大好きだったそうで、『君の笑顔に恋してる』ではサビで観客と一緒に踊りたいという東山たっての希望から、事前にYouTubeで自ら振付をレクチャーする動画を公開する程の気合の入れようだった。

 そして最も伝えたい(2)である。「自分は大したこと無い声優」「声優になりたての頃の先輩方は輝いて見えたのに、今の自分は当事の先輩のように輝けていない」などと自己嫌悪する東山は、そんな自分を8年間信じ、ここまで育ててくれた男性マネージャーに対する感謝の言葉を涙交じりで述べ、都会の喧騒で冷え切っていた当方の心を優しく暖めた。中でも「私を見つけてくれてありがとう」声優の歴史に残る名言だと思う。当然だが、歌とダンスが上手なだけでは声優として大成しない。故に彼女は苦労の連続で、時にはマネージャーに対して八つ当たりさえもしていたと本心を吐露していた。当方は能力の高さゆえに東山を高嶺の花のような存在だと思っていたが、内面はどこにでも居る普通の女の子だったことに驚きを隠せなかった。小さな芽でも、雨ニモマケズ8年間真っ当に生きていれば大輪の花を咲かせられる。それに比べて自分は10年間何をしてきたのだろうか。新宿のカプセルホテルの低い天井を見上げながら、その日はそんなことを考えていた。

 そろそろ気持ちを切り替えねばならない。東山は感謝を言葉のみならず、武道館での単独ライブを成功させるという“行動”で示した。当方も数多の人々に対する感謝を言葉のみならず行動で示したい。
 と、ここまで書いてきて、おそらく深く考えすぎなのだろうと気付く。まずは肩の力を抜いて、今の自分にも出来ることから、少しずつ。

(#27:1198字)


◎二郎系ラーメン屋に行ったら凄絶な恐怖を味わった(後編)

2017-10-17 10:31:51 | ほぼ週刊サンマイ新聞

 初心者でも安心して入れるという二郎系ラーメン店の風潮は、この店で脆くも崩れた。ここでは本家二郎のルールに従わないと店員に怒られる。そして当方は重大なことを思い出した。

店員「そこの君、好みは?」

男D「野菜多め、カラメで」

 そうだ、呪文みたいなコールを唱えなければならなかった。例えば「ニンニクマシマシヤサイマシアブラマシカラメ」というような、二郎では有名なアレである。「ニンニク」「ヤサイ」「アブラ」「カラメ」の4項目があり、それぞれの好みを選択し、繋げてコールする。ノーマルでも野菜と背脂が多いラーメンだが、これらをマシやマシマシにすることで更に増やすことが可能となる。カラメはラーメンスープのカエシのことだと後に知ったが、店内での当方は意味を理解していなかった。当然『野郎ラーメン』など、複雑なコールを必要としない店もあるのだが、この店は本家を踏襲してしまっていた。当方はただただ動揺するのみであったが、その時ある若い客が魔法の呪文を唱えた。

店員「そこの君」

男E「全部マシで」

 そうだ、「ゼンブマシ」。この5文字なら当方にも言える。ありがとう若造。もう迷いは無かった。

店員「ハイ、君」←どんどん言葉足らずになる

当方「全部マシで」

 コールも無事に終わり、程なくしてもやしが山のように盛られたラーメンは当方の元に到着した。行列に並び始めてから実に40分以上。やっとである。
 ある意味インスタ映えしそうな画だったが、とても写真を撮れるような空気でなかったのは言うまでもない。弾力のあるとても太い麺が背脂まみれのスープに良く絡まり、とても美味い。これで700円は安い。しかし、まだ20人以上の行列が出来ており、長居するわけにもいかないので箸を早めに進める。
 そして最後の難関は訪れた。

(食べきれないかもしれない)

 ボリュームの多さに加え、増量した背脂が体内の胃袋に影響を及ぼしていた。二郎系での食べ残しは処刑レベルに相当する。何があろうと食べきらねばならないが、その為には少なくとも水が必要だった。まだコップに水を入れていなかったが、他の客の行動を観察するうちにウォーターサーバーの場所を発見していたので、水を入れに行った。実は食事中に席を離れることは二郎ではタブーだと後に知ったが、奇跡的に店員に怒られることは無かった。
 満腹の中、水を飲みながら必死に食べ進め、なんとか完食。流石にスープまで飲み干す気力は残されていなかった。丼とコップを台に置き、おしぼりでカウンターを拭き、逃げるように店を出た。何故ここまでしなければならないのか。

 確かに美味かったのは事実だが、食べすぎと胃もたれで、帰路を歩くのも容易では無かった。こんな恐怖に満ちた店を多くの学生が平気で利用していることに驚きを隠せない。知らない二郎系の店に足を踏み入れるのは無謀であり、行くのは野郎ラーメンだけにしておいたほうが無難だと思い知らされるのだった。

(#26:1199字)


◎二郎系ラーメン屋に行ったら凄絶な恐怖を味わった(前編)

2017-10-17 10:24:39 | ほぼ週刊サンマイ新聞

 ラーメン業界の概念にとらわれず我が道を突き進む邪道のチェーン店『ラーメン二郎』。独自のルールに従わなければならず、初心者にはとても敷居の高い店となっている。そんな二郎の特徴的なラーメンをリスペクトする形で営業する『野郎ラーメン』や『らーめん影武者』などの店を『二郎系ラーメン』と呼ぶ。こちらは誰にでも入店しやすい配慮がなされており、普通のラーメン店と同じく食券を買って店員に渡し、好みを聞かれたら答えるだけで美味しいラーメンにありつける。

 先日当方は仕事で2時間近くも残業してしまい、疲労と空腹から思わずラーメン店に行ってしまった。朝からゼリー飲料しか胃に収めておらず、ガッツリいきたいけど予算は抑えたい。そうなると二郎系を選択するのは自明の理だった。早速スマホで調べ、小田急線沿線に位置する二郎系のとある店へと向かった。

 前述の通り、初心者でも安心して入れるのが二郎系の良さである……はずだった。19時45分に到着すると、既に20人以上の行列が出来ていた。これは本家二郎を彷彿とさせる光景。しかも、

男A「食券を買いに行って下さい」

男B「ハイ」

 普通のラーメン店では見かけない会話があった。男Aは当方の二人前、男Bは当方の前に並んでいる。並んでいる人から順番に食券を購入し、先に店員に渡しておくシステムだったのだ。男Bは行列を抜け、食券を買いに店内へ。そして店を出ると今度は当方に話しかける。

男B「食券を買いに行って下さい」

当方「??? ハイ」

 その時はシステムを良く理解していなかったが、当方も見よう見真似で行動した。ラーメンは極小、小、大から選べるが、当方は700円の小を購入。小でも一般的な特盛りレベルに相当することは有名な話で、コスパはとても良い。食券購入後も20分以上待ち続け、

店員「前の一人、店内のベンチに座って下さい」

 ようやく当方が呼ばれ、店内に潜入。意外にも学生風の若い男が多いが、二郎系特有のむさ苦しい空気に相違は無かった。そして事件は起きた。

店員「そこの人、蓮華取って!」

男C「ハ、ハイ!」

店員「お前、前にも注意したよな!」

 店員が客にキレるという、普通の飲食店では有り得ない事態が。どうやら二郎では客自らコップと蓮華を取ってから着席しなければならないルールがあるようなのだ。怒号を間近で聞いた当方は恐怖で身体を震わせた。そして察した。この店は二郎のラーメンのみならず、独特のルールや複雑なシステムまでもをリスペクトしてしまっていると。

店員「ベンチで待っている最初の一人は空いているカウンター席に座って下さい」

 いよいよ当方の番である。間違えたら怒られる。緊張がピークに達する中、まず蓮華とコップを取り、ウォーターサーバーを探す。しかし見つからない。もたもたしている時間も無く、コップに水を入れぬまま着席。他の客を真似して蓮華をコップの上に置いたが、二番目の関門は容赦なく訪れる。

(#25:1193字)


◎『おそ松さん』2期1話感想……1話を改めて作るということ

2017-10-08 11:22:05 | ほぼ週刊サンマイ新聞

 TVアニメの2期というものは鬼門である。1期が人気だったからこそ2期が決定するわけで、その1期で上げてしまったハードルを超えない限り2期の評価を高く得ることは容易ではない。1期1巻の円盤を10万枚以上も売り上げ社会現象レベルにまで達した『おそ松さん』の2期が決定した時も、ファンは内容に対する不安を抱いていたのかもしれない。

 

 そして2017年10月2日、満を持して『おそ松さん』2期の1話は放映された。全話視聴した1期を全体的にとても面白かったと思っている当方は、この1話のBパートは確かに面白いと思えた。しかし、個人的にAパートは完全にスベっていた。


(※追記:TV放映時の本編は途中にCMやアイキャッチを挟まない特殊な構成だった為、厳密にはAパート、Bパートという区切りではありませんでした。ニコニコ動画で視聴した為勘違いしていました)


六つ子が『一発当てた』ことで富と名声を得るという設定はリアルでの作品人気とリンクする部分もありメタネタとしては決して悪くなかったのだが、その結果が全員ただ太っているだけという、あまり大きな捻りを感じられなかった。歌手デビューを果たしたカラ松の持っているCDが何故か8cmという細かいネタの幾つかにクスリとはしたが、おそらく1期でハードルを上げ過ぎたのだろう。想像の斜め上の更に斜め上を行く笑いを持ってこない限り、キャラ萌えとは無縁の面白さという観点のみで1期を評価している当方のような人々を満足させることは難しいのかもしれない。Bパートにはそれがあったので今回は良かったが、問題は2話以降となるだろう。

 

 しかし、この2期1話に限って言えば、面白さ以上に『1話を改めて作った』ということに大きな意義があると当方は感じた。ちょうど2年前、忘れもしない1期1話のお蔵入り騒動。TV放映こそされたが、その後ネット配信の完全停止と円盤未収録という伝説を残した。1期1話の完成度はとても高く、あの1話が無ければここまで話題にはならなかっただろう。ただパロディネタを詰め込みすぎて問題視された(と思われる)だけのことである。『おそ松くん』が成長して『おそ松さん』になるまでの過程の物語としてはとても良い出来に仕上がっていただけに、お蔵入りはとても勿体無いことであった。その過程の物語を一から作り直したという意味において、2期1話はとても意義があったということである。今度はパロネタもほどほどにし(無くなったとは言っていない)、お蔵入りにしない為の配慮もなされた上でちゃんと笑いがあった。

 

 おそらく2話以降は普通の物語に戻る。前述の通り、恐ろしいほど高くなってしまったハードルを超えられるかは不明である。そもそも1期の人気も、今になって振り替えれば面白かったのはもちろんだが、それ以上に女性ファンによるキャラ萌えと声優人気のウエイトのほうが大きく占めていたようにも思う。Aパートは制作側がそれに甘え過ぎた結果なのだろうか。純粋な面白さのみを追求する男性ファンが果たしてどこまでついていけるかに注目したい。

 

(#24:1167字)


◎AKB総選挙5位・荻野由佳のスピーチが泣けるのは何故か

2017-06-19 10:12:42 | ほぼ週刊サンマイ新聞

 前回「アイドルのファンではない」と断言しておきながら、2017年6月17日に放送された『第9回AKB48選抜総選挙』を観て不覚にも泣いてしまった。そして今日録画を観直し、2回目でも泣いてしまった。僅か2回目の出馬にも関わらず7万票以上を集め5位という輝かしい成果を収めたNGT48荻野由佳のスピーチである。

 

 観ていない方はこちらの画像にてイメージしていただきたい。

 

(荻野スピーチ全文1/2)

 

(荻野スピーチ全文2/2)

 

 当方は余程のことが無い限り涙を流さないのに、このスピーチは本当に何度観ても心を揺さぶられる。それは何故なのかを自分なりに考えてみた。

 

(1)ありのままの本心を素直に話した

(2)名言を残した

(3)声が裏返っていた

 

 まず(1)は言うまでも無いことなのだが、AKB総選挙のスピーチは地上波やスカパーで生放送される都合上、おそらくほとんどのメンバーがあらかじめ文章を考えている。部屋の机で「この景色が見たかった」などの台詞を考え、それをそのまま発しているだけなのだ。それは場合によっては本心とは遠い言葉になりかねない(前述が本心なら部屋の窓から見える景色のことになってしまう)。荻野もおそらくは事前に考えていただろうし、文章の組み立ては完璧に近い。それでも本心を素直に話しているように聞こえたのは、スピーチのほとんどが「自身の過去の話」に特化していたからである。「この景色が見たかった」は壇上に立って初めて発生する気持ちだが、過去の話ならいつどこで考えても同じ文章になるわけで、しかも18歳とは思えないほど文章構成が完璧に近かったことで聞き手の共感を得ることに成功した。

 

 (2)はただただ凄いと思うばかりである。「『努力は必ず報われる』そんなもの嘘に決まってるじゃん」と、元メンバー高橋みなみの名言を一旦は否定し、聞き手を油断させておいてからの「私は、『努力は必ず報われる』を今、証明できていますか?」である。「証明できました」ではなく「できていますか?」と問いかけたのがポイントだろう。そして名言はこれだけではない。「私をアイドルにしてくれてありがとう」は、6年間苦労し続けた彼女だからこそ心に響くものがあった。

 

 そして(3)はOAを観ていないと分からないのだが、荻野の涙交じりの声は要所要所で裏返っており、聞き手の涙を誘う言い方になっていたのだ。滅多に泣かない当方がついに涙を流した決定打はそこではないかと思っている。

(※6/20追記:分かりづらくてすみません。声が裏返るほど泣きながら気持ちを込めて話していたことで、心からの熱い想いが伝わった、それが聞き手の涙を誘ったということです)

 

 そもそも荻野は速報で1位、しかもたった一日で5万5000票以上を集めており、不正投票や事務所による大量投票などの疑惑が浮上していたが、このスピーチを観れたことでそんなものはどうでも良くなった。裏でどのような力が働いていようが、彼女のたゆまぬ努力と成長は紛れも無い本物なのだから。

 

「梅雨最中Maxときで由佳5位へ」(徳光和夫)

 

(#23:1172字)